20代男性「神経近くまで進行した深い虫歯」神経を除菌治療で取らずに温存し、白いジルコニアを詰めた症例

2023.08.24

治療前

治療前治療前レントゲン

 

治療後

治療後

年齢と性別 20代・男性
ご相談内容 右上小臼歯(右上4番)に虫歯があるため治療を受けたいとお見えになられました。(治療前写真)
カウンセリング・診断結果 治療前の写真からは表面的には小さな虫歯に見えるでしょうが、20代と若いため内部で虫歯は大きく広がっていることが予想されました。レントゲンを撮影すると、歯の左側に黒く映っている虫歯が内部で大きく広がっており、中心部にある神経の近くまで到達していることがわかります。(治療前レントゲン写真)
さらに2本奥の右上第一大臼歯(右上6番)の後ろ側にも黒く映っている虫歯がありました。治療前の写真からは大臼歯(右上6番)は一見きれいな無垢の歯に見えます。食べ物が詰まったまま放置されたことが両方の歯の虫歯の原因だと判断しました。
行ったご提案・治療内容 手前の歯(右上4番)の虫歯は非常に深く、全ての虫歯を取れば容易に神経が露出することが予想されます。そうなれば神経を取り除かなくてはならず、歯の寿命は確実に短くなることが厚生労働省の統計から明らかです。そのため、神経を保存する除菌治療をご提案しました。
虫歯とはいっても元はご自分の歯質です。虫歯の中の細菌を死滅させることができればそれ以上虫歯を削らないで済み、引いては神経を温存できる治療です。しかし治療時点ですでに神経まで感染が進行している症例が混在するのです。そのため、治療後になって神経の痛みが出るリスクがあります。その時点では神経の感染の有無を確実に知る方法はないのです。そのリスクとメリットをお話ししたところ、除菌治療をご希望になられました。治療初日に除菌治療と仮の歯をお入れし、しばらく経過観察を続けました。後日奥の歯の虫歯治療を行いました。当院では虫歯の取り残しを避けるため、虫歯だけが染まる染色液を使用しています。奥の歯の青く染まっているのが虫歯の一部で、実際の虫歯はさらに大きく広がっていました。治療途中の写真には奥の歯の青く染まる虫歯と共に手前の歯は前の日に除菌療法を行った後プラスチックで詰め物に合わせた形に整形した状態が写っています。

虫歯治療後の詰め物の選択肢をご相談したところ、金属を避けたいことと強度と耐久性が必要であり、費用をできるだけ抑えたいご希望により簡便なタイプのジルコニアをご希望されました。
奥の歯の治療初日に麻酔後に虫歯を取り除きました。虫歯のある程度の深さと広がりがあったため、全てを詰め物(ジルコニア)にすれば歯の削る量が多くなるため、内部の広がった虫歯はプラスチックで保護し、その上からジルコニアを詰める2重構造にして歯を削る量を最小限にしました。初日は型取りと仮歯を入れて終わりました。(治療途中写真)
2週間後に出来上がってきたジルコニアを前の歯と奥の歯2本お入れして治療は終了しました。(治療後の写真)

治療期間 約1か月
治療回数 4回
費用目安 65,180円(仮歯とジルコニア)が2本+6,600円(除菌療法)
術後の経過・現在の様子 治療後は日常生活上の問題はみられません。ご本人が気づかない虫歯が他に3本もあったため、今後は6か月ごとの定期歯科検診とその間の3か月目にメンテナンスをご希望されています。
多少の手間と費用がかかっても虫歯を大きくしない、できれば虫歯そのものにならないメリットの方が大きいとおっしゃっておられました。
治療のリスクについて ・装着に際し、天然歯を削る必要があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・神経が感染していた場合には将来痛みが発生して神経を取る治療が必要になることが稀にあります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です
クリニックより 奥の方の歯は実際には中程度の虫歯でしたが、ご本人は頻繁に食べ物が詰まる記憶だけで、しみや痛みは全くありませんでした。これが定期歯科検診の必要性と日頃症状が出てからでは手遅れだと事あるごとにお話ししている理由です。

その他

治療中

治療中
奥の歯の青く染まっている部分が虫歯です。手前の歯は除菌治療後詰め物に合わせた形に整形した状態です。
仮歯
仮歯が入った状態です。

治療後

治療後

詳細は下記をご覧ください。
神経を取らない虫歯の除菌治療
ジルコニアを含めた詰め物・被せ物の種類