義歯の選び方

目次

義歯(入れ歯・ブリッジ・インプラント)の選び方

「どれも一長一短ありそうだし、一体何が自分に合っているのかわからない」「知人はブリッジで問題ないといっているから自分もそれでいいのではないか」などとお考えではないでしょうか。
知人とあなたでは嚙む力、嗜好品、歯の神経をなくした歯なのかどうか、失った歯の場所や本数、また食に対する感じ方や喜び度合いなど様々なものが違います。知人にはよくてもあなたは違うのかもしれないのです。こう言われればさらにわからなくなってしまうことでしょう。ですからそのために私たちがいるのです。ご本人のご希望を丁寧に伺い、お口の状態を鑑みて最適なものをご提案いたします。

歯を失くしてしまった時の治療として、入れ歯・ブリッジ・インプラントの選択肢があります。当院は特に、ブリッジとインプラントどちらがいいのかと相談をされることがよくあります。入れ歯に関しては、ブリッジもインプラントもやらない方が消去法で選択されているような実感があります。ただ、自費の入れ歯になりますが機能性が優れた入れ歯もございますので、入れ歯に関してもぜひ前向きにご検討頂ければと思います。

インプラントについては他の補綴物に比べて見た目や機能性がとても優れていますが、場合によってはインプラントよりブリッジの方が見栄え上は優れている場合もあります。ブリッジは使用した感覚も、異物感が少なく、入れ歯と違ってセメントで固定させるので、硬いものでもしっかりと噛むことができます。

患者様のお口の状態は千差万別ですし、その人によって重視することや好みがバラバラです。患者様だけでなく、治療する歯科医院側も十人十色です。治療の経験から得た知恵、判断力、感性が歯科医によって異なります。

それぞれの患者様に対してお口の状態の分析、治療計画、ケースごとに異なるメリットとデメリットをしっかり説明させて頂き、ご納得を得られるかどうかが重要だと考えております。勇気を出して、信頼できる歯医者さんで相談してみて下さい。
きっとあなたにとって最適なものと出会えると思います。

入れ歯・ブリッジ・インプラントの違い

3つの選択肢と
特徴
入れ歯
入れ歯
他の歯に針金を引っ掛け、取り外しできるもの
ブリッジ
ブリッジ
両隣の歯を削り、セメントで固定するもの
インプラント
インプラント
歯と同様に骨の中に植えて歯の代用をするもの
噛める能力 × 歯の60%未満 〇 歯の100%未満 ◎ 歯と同等
歯を削る必要性 〇 多少削る × かなり削る ◎ 全く削らない
歯に負担をかける × 負担をかける × 負担をかける 〇 全くかけない
異物感 × 大きい 〇 ほとんどなし 〇 ほとんどなし
見栄え × 針金が見える 〇 自然感あり 〇 自然感あり
ガタつき × ガタつく 〇 動かない 〇 動かない
特徴 掃除がしやすい 神経のない歯は要注意 残った歯の寿命に貢献
費用 保険
自費 ¥275,000~
症例により異なります
保険
自費 ¥140,000~¥450,000位
両隣を含めて3本
自費のみ
¥400,000~¥500,000位
他の歯を含まず1本

歯がなくなった場合の治療は何が良いのか、迷われる方が多いと思います。どのように選択すれば良いのかを記載してありますので、引き続きお読みいただければと思います。

歯がなくなった時の治療は何が良いのか

抜歯後の選択肢で、ブリッジにした方がいい場合

歯を失った後には噛むことや喋ることなどの機能的回復、見た目の審美的回復が必要になってきます。その手段としての治療法に入れ歯、ブリッジ、インプラントなどがありますが、現状で選択することができない治療法があるのか、治療後にはどのような使い勝手や生活になるのか、治療は大変なのか、費用をかける価値があるのだろうか、などなど色々なご不安や疑問がおありだと思います。

そもそも治療が受けられる状況なのかも含めてそれぞれの治療法には特徴や適応症があり、個人個人異なる現在のご不満点を改善するのに適した治療法が違ってきます。治療自体が目的の様に語られることが一般的ですが、それは治療後の生活の質を得るための手段に過ぎず、その場しのぎでなく快適な日々を送ることがゴールだと当院は考えているからです。 そのため実際にはお口を拝見し、ご希望やご不満点を伺った後でないと確かなことを申し上げられないものですが、よくご質問を頂くため抜歯後の選択肢でブリッジにした方がいい場合について一般的なお話しをしてみたいと思います。 選択肢自体のご説明は「歯を失ってしまった方へ」や「入れ歯」、「ブリッジ」、「インプラント」ページをご覧ください。

ブリッジが行える条件として、支える歯が比較的丈夫であるかどうかが挙げられます。さらに失った歯の本数が少なく、歯ぎしりや食いしばり、頻繁な硬い食べ物の摂取などがなく強い力が多くかからない症例が適応です。またこれは後で述べるブリッジを選択する際の必要最低条件であり、どの場合でもこの条件はクリアしている必要があります。

1)新たに歯を削らなくて済む場合

上記ブリッジの必要条件を満たしており、かつブリッジを支える両隣の歯を削って既に人工物が入っている場合が該当します。歯を削れば歯が弱くなるためできれば避けたいものですが、両隣の歯が虫歯等で既に削ってある場合はブリッジの欠点である新たに他の歯を削る必要がほとんどなくなるためです。

2)失った歯の本数が1~2本の場合

失った歯の本数が少数でかつブリッジの必要条件を満たしている場合です。
歯には噛む時、ものを待ち上げる時、精神的ストレスがかかった時など歯同志が強く接触する度に毎日毎日、継続的な力がかかり続けています。それを負担し耐えていた歯を失ったため、今度は他の歯が自分の負担に上乗せして失った歯の負担を肩代わりすることになります。この力の負担構造がブリッジの欠点の一つです。
失った歯の本数が少ない場合は、この無理やり肩代わりさせられる負担も比較的小規模であり、さらにその歯が丈夫な歯であれば余力の範囲内に収まるためブリッジ構造も可能になります。しかし失った歯の本数が多い場合はこの負担が許容範囲を超えてその歯の寿命を短くするため、入れ歯やインプラントの適応症になります。

3)コントロールされていない進行した歯周病がある場合

成人の歯を失う方の5人に4人が歯周病です。ほとんどの方が歯周病で歯を失っておられるため、歯周病は歯の最大のリスク要因なのです。歯の構造と似ているインプラントにも同じく最大のリスク要因であり、人工的なものであるため感染に弱くさらにリスクは高いとお考え下さい。その歯周病がコントロールされていない場合はリスク上インプラント治療をお勧めできません。
実は入れ歯やブリッジでも歯周病は問題なのですが、人工物でない天然の歯に起こる歯周病の方が身体の治癒力がある面では若干組みしやすい面はあります。ただし残った歯に加わる力の負担面からは不利な面もあり、欠点のないものは残念ながら失ったご自分の歯だけなのが現状です。
どんな治療選択肢をお選びになられても、患者さんの日々の丁寧な歯磨きと、医療側でのメンテナンスや検診で歯周病の十分なコントロール、予防、進行を止めていく継続的な努力が必要になってきます。

4)失った歯が植わっていた場所の骨の量が少ない場合

歯を失うと歯を支えていた骨は溶けてなくなり痩せていきますが、その痩せ方は歯を失った原因、失ってからの経過年数、入れ歯の装着、体質などにより千差万別です。
インプラントは歯と同じように骨で支えられているため、骨が痩せて支えが弱い状態では治療自体が受けられない、受けられても長期間の維持が望めないことになります。 この点で入れ歯とブリッジは骨と無縁の構造のためこうした症例でも治療を受けることができます。しかしあまりに大きく骨を失ってえぐれたような形になっている場合はブリッジでは外見と使用感が劣るため、入れ歯が優先になるでしょう。

5)金属アレルギーをお持ちの場合

入れ歯には金具などに金属が使われており、またインプラントは金属製であるため、残った選択肢のブリッジでセラミック製のものだけが金属と無縁になる方法です。 金属アレルギーを起こしやすい歯科で使う金属はニッケル、クロム、パラジウム、銅などですが、入れ歯やブリッジによく使われる金属です。インプラントで使うチタンには稀にしかアレルギー反応が起こりませんが、皆無ではありません。
しかし金属アレルギーは特定の金属類に反応するもので全ての金属に反応することは稀なため、原因金属を皮膚科でパッチテストを受けられて特定できれば、その金属を含まない合金を使った入れ歯やブリッジ、インプラントも可能になります。

6)外科治療を避けたい場合

インプラント治療には外科治療が必須であるため、心理的に外科治療を避けたい方や、血液をサラサラにするお薬や骨粗しょう症治療薬など薬の服用履歴から外科治療が受けられない方、一部の全身疾患により主治医から外科治療を避ける指示を受けていらっしゃる方などはインプラント治療が現状では受けられません。(主治医の判断の元一定期間の休薬などにより外科治療が可能になる場合もあります)
そのため可能な選択肢は入れ歯と症例によってはブリッジになります。

7)入れ歯とインプラント治療が嫌な場合

術後に「思っていたよりずっと楽だった」との感想を頂いておりますが、それでもインプラントに怖い・不安など心理的抵抗感が払しょくできない場合があります。また入れ歯の不快感や外見、使用感などが嫌で避けたい場合もあり、消去法でブリッジを選択される方がいらっしゃいます。
それぞれの利点や特徴をよくご理解の上で、今のそして将来のご自分の解消されたい不満や不安とこうした治療への抵抗感などを加味されてご決断頂けるようしっかりとご説明とご相談させていただくようにしています。どのような治療選択肢をお選びになられてもいいのであって、満足が得られることが大切であり、治療はその手段に過ぎないと私たちは考えています。

8)治療期間を短くしたい場合

インプラントは治療を始めてから被せ物が入るまで半年以上はかかります。そのため何らかのご事情で短期間に治療を終わらせたい場合には、入れ歯やブリッジを選択されるといいでしょう。歯の状態にもよりますが一か月程度で治療可能です。

9)長期に医療体制が整っていない海外へ出張もしくは移住される場合

全ての治療後にはメンテナンスや検診は必要ですが、特にインプラントは天然の歯に比べると感染に弱いこととネジの緩みなど適切な継続的な管理が重要です。また早期に問題を把握することと、トラブルが起こった際に修理や撤去が必要になる場合があります。
医療体制が整っていない地域であればこうしたトラブルに対処ができない可能性があるため、ブリッジや入れ歯で治療しておいたほうが無難で安心でしょう。

10)治療費用を少しでも抑えたい場合

治療費用を抑えるには保険治療の範囲内での治療をお受けになられるのが一番です。治療法や材質は限定されますが保険には入れ歯とブリッジが対象になっています。最も経済的なのは入れ歯ですが、使用感など全体的な特徴でどちらかをお選びになられるといいでしょう。