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骨が少なくてもインプラント治療を受ける方法はあるのか

インプラントだけが最適解とは限りません

天然の歯とインプラントはどちらも骨の中に植わって「噛める」を実現する点で似ています。裏を返せば歯周病で歯がぐらつき噛めないことと同様に、インプラントは周りの骨の状態に左右されることになります。このため骨の状態によって治療自体の可否や丈夫さが左右されることになります。骨が少なくてもインプラント治療を受ける方法はあるのか、日常臨床でご相談を受けることが多くなっています。

医療の進歩により以前では治療が受けられなかった骨の量が少ないケースでも治療を受けられるケースが多くなってきていますが、無理にインプラントを受けるより、他の選択肢がよい場合もあります。当院はインプラントありきの考え方を持っておりませんので、どんな食生活をお求めになっておられるのか、どんな日常を欲しておられるのかをお伺いし、その方にとって最適な方法をご提案するようにしております。

良いインプラント治療の条件

仮にインプラントがご希望を実現するのに最適だとした場合のお話しをいたします。 骨の幅や高さなどの骨の量、近くの神経や骨の中の空洞(上顎洞)の位置、近くの歯の位置や根の方向などが重要になってきます。前述したように歯と同じくインプラントを支えるのに十分な骨が必須です。入れることだけが目的ではなく、治療を安全にそして長期に渡りインプラントが機能し快適な食生活を送ることが目的だからです。

インプラントを骨の中に埋め込み、その上に被せ物を作る事で歯を失った所に人工の歯を新たに作り「噛める」を実現する治療法です。 そのため天然の歯と同様に骨の量や質により、丈夫さや寿命などが左右します。インプラントの丈夫さに左右する条件は以下の通りです。

骨の硬さ

骨の硬さが柔らかすぎると、インプラントを支える能力が低くなります。長く噛む力に耐えるためにはある程度の硬さが必要です。逆に硬すぎると血流が悪いため、これもよくありません。ちょうどいい硬さがベストですが、その方が持っていらっしゃる特有の物であり、人の手で変えられるものではありませんので特徴の一つとお考え下さい。

骨の幅や深さ(形)

骨の幅や深さは、インプラントの太さと長さ、植えられる向きに影響してきます。インプラントは太く長い物ほど多くの力を受け止められるため丈夫になります。 一方で幅や深さが少ない場合、入れられるインプラントも細く短くなるため受け止められる力が小さくなります。またインプラントは植えた方向に対して垂直にかかる力には強く、横向きにかかる力に弱い性質がありますので長いインプラントが有利です。そのため骨に十分な量がない場合には、インプラントを植えられる向きに制約が生じて、かみ合わせたときの力がインプラントの負担となったり、短いまたは細いインプラントしか選択できず丈夫さに劣ることがあります。

血の流れの良さ

インプラントは骨が治癒する過程で骨とくっつきます。血の流れが豊富であれば骨と付きやすく、逆に体質や骨粗しょう症の薬などで血の流れが悪くなれば治癒に時間がかかったり、付きが悪くなります。

骨が少ない場合の対処法

骨の量が丈夫さに関係しているのなら、骨の量が少ないとインプラントを諦めるしかないのでしょうか。

以前はそうでした。しかし現在は進歩しており、可能なケースが増えてきています。それを実現するために必要なものは、骨を失わせない治療、骨を再生する治療、CT(三次元のレントゲン)とシミュレーションソフト、豊富なインプラントのバリエーションです。

当医院ではインプラントをご希望される患者さんに、必ず事前にCT検査(三次元のレントゲン)を行い、安全にインプラントを行えるか、十分に長く機能出来るインプラント治療が行えるか、最適なインプラントの種類は何か、どの位置にどの角度で植えるのが最適かを調べます。 検査の結果、骨が少なく、インプラントの必要な太さや長さが確保できない場合の対処法やそもそも骨を痩せさせない方法をお話ししてみましょう。

インプラントを植える位置や向きを変える

理想的な位置にインプラントが出来なくても植える位置を数ミリ、角度を数度変えれば植えられるケースが多くあります。精密な作業が求められますが、CTやインプラントオペガイドなどを駆使すれば十分可能です。

インプラントの種類を変更する

その方の噛む力や癖、失くした歯の場所によってインプラントの必要な太さや長さが変わってきます。許容範囲内でインプラントを細くしたり短くして対応します。症例によっては複数のインプラントを入れることで全体として噛む力に耐えられる強度を獲得できる場合もあり、広い視野での治療設計が大切です。

足りない所に骨を作る

骨補填材と呼ばれる骨の元になる材料を入れる事で、骨を新たに作ったり、骨の治癒を助け骨の出来る骨の量を確保することが出来ます。これによりインプラントが可能になったり、サイズの大きなインプラントを選択できるようになりより丈夫なインプラントが入れられるようになります。

抜歯後に骨が痩せるのを防ぐ

天然の歯を抜歯すると骨の中に入っていた根の部分の穴が開きますが、身体は傷と認識してその穴を骨と上皮で埋めて治そうとします。しかし骨折が治るのに期間がかかるのと同じく骨の治るスピードはとても遅く数か月を要します。それに比べ歯茎などの上皮はそれよりもはるかに速いスピードで治るため、抜歯で出来た穴に入り込み傷を先に治してしまいます。これでは穴の大半を上皮が占めてしまい骨を作るスペースが小さくなって、最終的に骨になる量が少なくなります。 このように歯周病だけでなく抜歯した後に治癒する過程で骨は減っていくものなのです。

それを防ぐために、抜歯と同時に骨補填材と呼ばれる骨の成分に近いもので穴を満たしたり、骨の穴の上に特殊な膜を敷いて上皮の穴への侵入を防ぎ骨が再生するスペースを確保した上で骨の回復を待つ治療があります。ただしすでに歯を失っておられる場合には対応できないものですので、歯を抜く前から計画的な治療プランが必要になってきます。

歯だけでなく骨も管理の対象と考える

虫歯になったから歯を削る、歯周病になったから歯を抜く、歯を失ったから入れ歯を入れる、などその局所だけの視点でなくお口全体の問題として、さらに今は人生の一コマでありこれからも永続的に維持する視点で見ることが大切だと考えています。 そのため日々の生活や治療において歯だけでなく、骨の維持管理が重要です。人の身体は失くしたものは二度と手に入らないものが多く、失くさない意識が大切です。

歯だけではなく骨も守りましょう

骨は日々変化します。歯周病によって骨の減少が起こるため歯周病の治療と維持管理が大切です。また歯を失って痩せた骨は廃用委縮でさらに減っていきます。廃用委縮とは体が不要と認識した組織や使わなくなった組織が小さく少なくなる現象です。車いすをお使いの方の足が細くなるのと同じ現象です。 骨は元来歯を支えるために存在していましたが、歯がなくなるとその場所で噛む力が加わらなくなるため、体は骨を維持する必要がなくなったと捉えて痩せさせてしまいます。すなわち使わない組織は維持できないのです。 そして歯を失ってただでさえ痩せてしまった骨の上に入れ歯を入れると、噛む力が粘膜を介して骨に伝わるという非生理的な構造になるため、長期間入れ歯を入れていると次第に骨がさらに痩せてしまいます。これが入れ歯が長期間使い続けられない理由の一つです。合っていない入れ歯はさらに骨の痩せを加速させますのでご注意ください。

患者さんがインプラントを検討する時期は様々だと思います。しかし上述したように骨は日々変化します。天然の歯が歯周病や歯の根の感染、歯の破折などの病気になり、その病気が進行している間にも骨が無くなっていきます。できるだけ早く治療をされるか、最悪手遅れなのであればその歯をできるだけ早く抜歯されることをお勧めします。抜歯するのが遅れれば遅れるほど骨の喪失が大きくなり、また抜歯後の年月が長いほど前述した廃用萎縮により骨の喪失が大きくなります。 骨も歯と同様に患者さんの財産です。歯が病気に侵されている場合に、歯を守るのか骨を守るのか天秤にかけなければならない時もあります。安易に様子をみたり、決断が遅れればその分患者さんの大切な財産が損なわれるかもしれません。

インプラントに限らず、虫歯や歯周病など様々な病気の状態を精査し、今後起こりうる可能性を探り、患者さん一人ひとり、歯の一本一本が患者さんにとって一番適したタイミングと治療は何か考えて治療に当たっています。私たちと一緒に大切な財産を守り、豊かな食生活を送っていきましょう。

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