60代女性「アマルガム(水銀化合物)が入った奥歯にヒビが入った」白いジルコニアを詰めてヒビの拡大を防いだ症例

2023.10.05

治療前

 

治療前治療前2

治療中(仮の歯の装着)

 

Tek

治療後

治療後

 

 

年齢と性別 60代・女性
ご相談内容 痛みなどの自覚症状はありませんでしたが、定期歯科健診をお受けになられた際に左上一番奥の大臼歯(左上7番)の後ろ側にヒビが入っていることがわかりました。
カウンセリング・診断結果 硬いものでもかみ砕くことが役目である奥歯のためか、それとも何かの拍子なのかは不明ですが、歯の奥側のエナメル質表面にヒビ(縦に黒いスジ)が入っています。(治療前写真)
放置すればさらにヒビが拡大して歯が割れる可能性や、ヒビから歯内部が虫歯になる可能性があります。
行ったご提案・治療内容 同じようなヒビが入った症例でよくヒビの中に接着剤を入れてくっつけられないかと聞かれることがありますが、接着剤の強度では噛む力に耐えきれず早晩ヒビは拡大して最悪のケースでは歯が割れる危険性があるため、ヒビを含んだ歯質を削りヒビ自体を失くした状態で詰め物を入れることをお勧めしています。

治療前歯に詰まっていたアマルガムは水銀を含んだ化合物で、人体への障害が懸念されるため欧米では随分前から歯科使用が禁止されています。日本でもまだ保険適用であった相当昔の時代のなごりでした。せっかくこの歯の治療をするのであれば、古く人体への懸念があるアマルガムを取り除き、他の詰め物に入れ替えるメリットはあります。

そこで詰め物の選択肢として5つご説明いたしました。
第一は保険のプラスチックです。色合いが歯に近似しており1回の治療で終われる反面、材質的な強度と耐久性が不足しており長期間の使用は困難です。
第二は保険の銀歯です。金属であるため丈夫で耐久性はありますが、硬すぎる金属のため他の歯への悪影響や治療精度が劣るため虫歯になりやすい傾向にあります。
第三は金合金です。歯とほぼ同じ硬さのため他の歯との調和を乱すことがなく、また強度と耐久性が高くさらに治療精度が非常に高いため虫歯に対しても有利です。反面色合いが歯と異なる点と費用がかかります。
第四はジルコニアです。強度と耐久性は問題がなく、また比較的硬い材質のため虫歯がそう大きくない時には歯を削る量が少なくできる利点と歯とは色調は異なりますが白い色調です。しかし比較的費用を抑えた簡易的なものと費用がかかる一般的なものの2種類がありますが、どちらも費用がかかります。
第五はセラミックです。強度と耐久性は十分であり、また歯と似た色調であるため非常にきれいで長持ちする利点があります。一方でジルコニアや金属に比べて若干歯を削る量が増えることと、費用がかかります。

ご説明後患者様は歯を削る量を最小限にできることと、奥歯であるためそう色合いは気にならない点、耐久性と強度が十分ある点、費用を抑えたいご希望から、簡易的なジルコニアを選択されました。
治療初日にヒビ周囲の歯と詰まっているアマルガムを削り取り、歯型をお取りした後仮の歯をおいれしました。(治療中写真)
次回のご予約で嚙み合わせ調整後ジルコニアを歯に接着して治療は終わりました。(治療後の写真)

治療期間
治療回数 2回
費用目安 47,040円(仮歯を含めて)
術後の経過・現在の様子 ヒビが拡大して歯が割れたり、虫歯になる不安がなくなり思いっきり噛める状態になり、毎日の食事や日常生活上の問題はなく正常に機能しています。
治療後も今まで同様早期に問題点を発見するため定期歯科健診をお受けになられています。
治療のリスクについて ・治療中に痛みを伴う場合があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
・治療後は神経が過敏になっているため、痛みが生じる場合があります
クリニックより 治療後の健診でもヒビは見られず、症状もなく毎日の食生活の問題もありません。
治療後の写真では歯と色調は若干異なりますが、上の最も奥の歯ですので色調は問題ならないと思います。
それより有害な水銀を含んでいるアマルガムが口の中からなくなったことが大きいでしょう。

ジルコニアなど詰め物・被せ物の種類や特徴はこちらをご参照ください。