60代女性「奥歯が段々少なくなってきて心配」歯周病治療とインプラントで奥歯を補強した症例

2024.02.12

治療前

左下5番と7番の奥歯2本を失ったため左下4番~6番のブリッジが入っていました。

レントゲン写真から左下一番奥の歯(左下6番)の手前側に虫歯があることがわかりました。

赤い〇が出血が見られる(炎症状態)場所で、また数字は歯周ポケットの深さですが1-2が健康な状態、4以上が進んだ歯周病です。右上下と左下奥歯に進行した歯周病がみられます。お口全体に歯周病が見られ、レントゲンと歯周病検査から左下ブリッジを支えている左下6番に負担がかかっていることが読み取れます。

治療中

歯周病初期治療が終わった時点の歯周病検査結果です。まだ右上7番と左下6番の4mmの歯周ポケットが残っていますが、全ての歯から出血がなくなり炎症状態は消退しています。この状態なら左下5番にインプラントを入れて左下6番の負担を軽減することができます。

左下4~6番のブリッジを外し、歯がなかった左下5番にインプラントを入れた時のレントゲン写真です。

左下5番にインプラントを埋入して前後の歯の被せものを入れ替えた状態です。初回の治療はこの時点で終わりました。

治療後

初回の治療から8年が経過した写真です。左下6番と5番の間に隙間が出てきました。左下6番が歯周病と噛む力の負担で手前側の骨が斜めになくなってきており、そのため後方に動いていることがわかります。上の歯は1本も失っておらず、左下が1本(左下7番)少ないため負荷を担いきれないことも一因だと思われました。

初回の治療から9年後に歯周病が進行した左下6番を抜歯した跡と、すでに失っていた左下7番部分にインプラントを2本追加することで負担を分散することを考えました。

左下6番と7番にインプラントを追加しその上に被せものを装着した状態です。初回の治療から9年後の2回目の治療が終わりました。

その他

現在の状態です。最初のインプラントは20年、追加したインプラントは11年が経過していますが問題なく機能し続けています。

レントゲンでも異常は認められず、一度骨が斜めになくなっていた左下6番(右から2本目)の骨は安定しています。インプラントの本数を増やしたことで噛む力を分散できた結果です。

現在の歯周病検査では出血箇所や4mm以上の深い歯周ポケットは見られません。いい状態で維持できています。

年代と性別 60代女性
はじめのご相談内容 年々奥歯が少なくなってきてこれから先が不安で、入れ歯は避けたいので今のうちに何らかの手を打っておきたいとお見えになられました。
診断結果 拝見すると左上7番と左下5番の歯2本をすでに失っておられ、右上6・7番、右下6番の被せ物の下に虫歯があり、お口全体特に奥歯を中心に進行した歯周病がありました。(治療前の歯周病検査)これから先のかむ能力を維持していくためには虫歯と歯周病治療を行い残った歯の延命を図りながら失った歯の代用歯を追加して奥歯で噛む力を分散することが理想だと考えました。
行った治療内容 まず最初に徹底した歯周病の治療と並行して今までのお口の中の清掃について見直しが必要であること、虫歯治療を行い歯の延命を図る必要があることをご説明いたしました。
そして虫歯と歯周病のコントロールができた段階で失った歯の分まで噛む力を負担している残った歯の負担軽減のために左側にインプラントを埋め込むことをご提案しました。
左上下の奥歯で失っておられたのは左上7番、左下5番と左下7番の3本でしたが、費用を抑えるご希望があったためご相談の上、左下5番のみインプラントを入れることをご提案しました。咀嚼効率面では6番まであれば通常一般的な咀嚼には大きな問題がないからです。
現状のご理解と治療方針への同意が得られましたので、虫歯治療と歯周病治療を並行して治療を進めました。2か月ほどで歯周病がかなり改善してきましたため、すでに歯を失っておられブリッジが入っていた左下5番にインプラントを埋め込む手術を行い、5か月後に土台と仮の歯が入りました。その間に隣の左下4・6番の虫歯治療を行い仮の歯をお入れしました。左下奥歯が全て仮の歯に置き換わり、咀嚼や日常生活での問題がないか確認後、歯型をお取りして左下4・5・6番に表面がセラミックで内部が金属の被せ物(メタルボンドCr)をお入れしまして左下奥歯の治療が終了しました。左下6番の手前側の骨が一部痩せておりますが、ご相談の上可能な限り歯周病コントロールを行い歯を残す方針でした。(治療後中2写真)
それから8年後に左下6番の歯茎が腫れてお痛みがあるとお見えになられました。(治療後1レントゲン写真)それまでも手前側の骨が一部吸収しており歯周病治療でよくなっては再発を繰り返す状態でしたがCT撮影で歯を支える骨が感染によりなくなっており、残念ながらこれ以上保存することが困難だと判断しました。それまでは手前の5番と接触していた6番が炎症により後方へ移動し隙間ができていました。現状をご理解され抜歯をご希望されました。抜歯後は入れ歯ではなくインプラントをご希望され、痩せてしまって薄くなった骨であったため、補強の意味合いで6・7番2本のインプラントを入れてお互いを助け合わせる計画をご提案しました。治療計画に同意が得られましたので、左下6番を抜歯し骨がこれ以上痩せるのを可能な限り少なくするために造骨治療(骨造り)を行いました。
骨の回復を待ち8か月後にインプラントを埋め込み(治療2後のレントゲン写真)、その後土台と仮歯による日常生活の問題がないことを確認後歯型をお取りしてセラミック(セルコン)を仮付けして治療が終了しました。(治療後3の写真)
現在は歯周病はほぼ抑えることができコントロールできています。
このケースのおおよその治療期間 1回目の治療約7か月、2回目の治療約12か月
おおよその費用 1回目の治療:788,800円(インプラント1本、仮歯を含む3本)
2回目の治療:1,175,440円(骨造り、インプラント2本、仮歯を含む2本)
現在の様子 以前と打って変わって歯周病はかなり改善がみられます。定期健診時に時々弱い部分に歯周病が見られますがその都度治療を行い概ねコントロールができています。このある程度いい状態が維持できていることが現状につながっています。
初回の治療後8年でインプラント2本を追加することになりましたが、手前の2本(左下4・5番)は初回から20年間、追加した左下6・7番は11年間、左側の歯とインプラントは維持できています。治療後も咀嚼や日常の問題はみられず、快適な食生活をお送りになられていらっしゃいます。
治療のリスク ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
クリニックより できるだけご自身の歯を長持ちさせることが一番大切であることに議論の余地はありません。しかし一方で先々のことも同時に考えなくてはなりません。必要以上に歯にこだわり続けた結果骨が痩せてしまい歯を失った後に入れ歯しか選択肢が残っていないケースも目にします。
インプラントによるよくかめる食生活、残った他の歯への負担軽減、異物感のない口の中などを捨ててしまうのはもったいない気がするのです。その方のお考え方によると存じますが、後の人生も含めてご相談されることをお勧めいたします。

その他の歯周病症例
歯周病治療症例1
歯周病治療症例2

インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク