70代女性「奥歯の歯茎が腫れて噛むと違和感がある」抜歯後、インプラントを入れた症例
2024.10.07
治療前
右下奥歯(右下6番)の歯茎が時々腫れて噛むと違和感があるとお見えになられました。(奥から2本目)
レントゲンを撮影すると右下6番(奥から2本目)の手前側の根の周囲に黒く写る骨が破壊された部分がありました。
骨の詳細な状態を確認するためCT撮影を行うと通常のレントゲン以上に骨が破壊されていることがわかりました。頬側(左と右上画像の向かって左側)の骨の一部はこの時点ですでに溶けてなくなっていました。
治療中
右下6番を抜歯すると同時に造骨治療(抜歯で骨が痩せるのを可能な限り少なくする治療)を行いました。
右下6番の場所にインプラントが可能か否か、またどのようなインプラントが適しているか、どの場所にインプラントを入れるのが最適かなどの検査を事前に行いました。
インプラント手術後のレントゲン写真です。術前に予定した通りに入っています。この状態でインプラントと骨がくっつくのを2~4か月待ちますが、隣の歯が傾いてこないように針金を歯に接着して移動防止を行いました。
治療後
右下6番にインプラントが入り、その上にセラミックをネジ止めした状態です。噛み合わせ部分のネジ止めのための丸い穴は樹脂で封鎖してあります。
治療後のレントゲンです。骨は安定しており異常所見は見られません。
その他
インプラント治療1年後の状態です。特段の変化はみられません。
インプラント治療1年後のレントゲン写真です。インプラント部分は骨も安定しており異常はみられませんが、奥の右下7番に今までなかった歯周病が突如発生して周囲の骨が減少しており現在対処中です。
年代と性別 | 70代・女性 |
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はじめのご相談内容 | 右下奥歯(右下6番)の歯茎が時々腫れて噛むと違和感があるとお見えになられました。 |
診断結果 | 拝見した時は歯茎の腫れは治まっていましたがレントゲンを撮影(治療前画像2)すると手前側の根の周囲に黒く写る骨が破壊された部分がありました。骨の詳細な状態を確認するためCT撮影(治療前画像3)を行うと通常のレントゲン以上に骨が破壊されていることがわかりました。頬側の骨の一部はこの時点ですでに溶けてなくなっていました。CT画像から根の内部の治療(根管治療)の問題である可能性は低く、また骨の破壊された程度から残念ながら抜歯をしてこれ以上の感染拡大と骨の破壊を止める必要があると判断しました。 |
行った治療内容 | 抜歯が必要であることと、抜歯後の治療選択肢として入れ歯、ブリッジ、インプラントをご紹介し、それぞれの特徴やメリット・デメリットをお話ししました。ただしインプラントは骨がある程度回復することが前提条件であることもご説明いたしました。 入れ歯を避けたいことと両隣の歯を削りたくないご希望があり、過去に他の部位でインプラントをご経験されておられたことから可能であればインプラントをしたいとのお考えでした。 しかし抜歯をすれば骨が痩せます。そのため抜歯と同時に骨の成分に近い人工材料を抜いた穴の中に入れる造骨治療をお勧めしました。天然の歯と同様にインプラントを支える骨の量が多いほど有利だからです。 現状のご理解と治療方針への同意が得られましたので抜歯と造骨治療を行いました。(治療中画像1レントゲン写真)骨の回復に8か月待つ間に奥の歯が手前に傾いて噛み合わせが狂わないように前後の歯に針金を接着しました。 その後CTを撮影し手術のシミュレーションを行い、手術手順や最適なインプラントの選択などを決め、実際の手術に臨みました。(治療中画像2)術直後にもCT撮影を行い計画通り所定の位置にインプラントが入っているかも確認しました。(治療中画像3のレントゲン写真) インプラント手術から3か月後に歯茎の下に潜っているインプラントに土台をネジ止めするための2次手術を行い、傷の治癒を待って仮の歯を装着しました。仮の歯で日常生活を送っていただき、食べることや異和感など問題がないか確認しましたが、問題がありませんでしたので、歯型を取ってセラミック(カタナ)をインプラントにネジ止めして治療が終わりました。(治療後画像1と2の写真とレントゲン写真) |
このケースのおおよその治療期間 | 約15か月 |
おおよその費用 | 545,660円(骨造りと仮歯を含む) |
現在の様子 | 抜歯により当初のお困りはなくなりました。 その後歯が1本ない状態が長く続きましたが、治療後は食生活や日常の問題はみられず快適にお食事をされておられます。 ご希望通り歯を削らず、異物感がなく何でも噛める日常を取り戻されていらっしゃいます。 治療からまだ1年しか経過していませんがインプラントには異常がみられません。 しかしその奥の右下7番に今までなかった歯周病が突如発生して現在対処中です。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。 ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。 |
クリニックより | 抜歯後に骨の回復に8か月、インプラントと骨がくっつくのを通常より長く待って3か月の期間を要したため治療期間が長くなってしまいました。治療期間を短くすることより骨の成熟を優先した結果です。 インプラントの詳細は下記をご覧ください。 ・インプラントとは ・インプラントの種類 ・インプラント治療を受けられない人 ・骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか ・インプラントと天然歯の違い ・骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク |