50代女性「左上奥歯に違和感がある」根の中の治療(根管治療後)で症状を改善し、セラミックで治療した症例

2024.10.28

治療前

「左上奥歯に違和感がある」と来院された時の画像です。この後の検査で画面下から3本目の左上5番(左上第二小臼歯)の神経が死んでおり、根管治療が必要なことがわかりました。

お見えになられた時の通常のレントゲン写真です。画像右から3本目の歯(左上5番)の根の先に小さい黒い影が写っています。白く写っている詰め物がすでに入っており、その下から感染が神経にまで及んだ可能性がありました。

以前に神経の治療を行っていない歯のため、慎重を期してCTを撮影すると根の先に黒く写る骨の破壊像があり、右側の画像からは頬側の骨が感染により溶けてなくなっていることがわかりました。

治療中

歯の内部に侵入した細菌を除去するために感染して死んでしまった神経を取り除き、消毒を繰り返して細菌を死滅させました。その後再感染を防ぐ目的で元神経が入っていた根の中の管を白く写っているゴム質の充填物で封鎖しました。

治療後

治療から1年が経過した時点の画像です。セラミックの被せ物で歯を守り日常の食生活を維持し、見た目の良さから銀歯ではなくセラミックをご希望されました。

同じく治療1年後のレントゲンです。治療前に根の先にあった黒い影はほぼなくなっており、細菌感染の拡大が防止できたこと、その結果骨が回復してきたことがわかります。

年代と性別 50代・女性
はじめのご相談内容 左上奥歯に違和感があるとお見えになられました。
診断結果 レントゲン撮影で左上5番の根の先に黒く写っている骨の破壊された跡が確認できました。電気的な神経検査では神経が死んでいることが判明しました。
念のためCTをお撮りすると根の先の骨だけでなく頬側の骨はすでに溶けてなくなっており、治療は緊急を要する状態でした。(治療前CT)
お口を拝見すると詰め物が入っており、虫歯は確認できませんが何らかの事情で神経が死んで感染が根の先に及んだため違和感がでていることがわかりました。
これ以上の感染と骨の破壊を止めるため根の中の治療(根管治療)が必要で、治療後は被り物を被せて日々の食生活に支障がでないようにする必要があると判断しました。
行った治療内容 歯の内部(根の中)の治療(根管治療)と被せ物の治療のご提案をしました。
治療方針への同意が得られましたので根の中を消毒して細菌を除去する根管治療を1ヶ月半行い、感染が治った時点で再感染を防止するために根の中をゴム質の材料で封鎖しました。(治療中のレントゲン)
その後歯の補強目的で歯の内部にグラスファイバー製の土台(芯棒)をお入れして被り物に適した形に歯を整形し仮の歯をお付けしました。
仮の歯で日常生活への支障がないことを確認後、歯型をお取りしてセラミック(セルコン)を歯に接着して治療が終了しました。(治療後の写真)
このケースのおおよその治療期間 約3か月半
おおよその費用 150,380円(グラスファイバー製土台と仮歯を含む)
現在の様子 根管治療中に左上奥歯の異和感は消え、その後は現在(治療後1年)に至るまで症状の再発はなく食生活や日常の問題はみられません。
治療後1年のレントゲン写真では治療前にあった根の先の黒い影(病巣)は消えて骨の回復が見られます。
これは骨の中の細菌感染が治ってきたことを意味しますが、今後も検診の際に経過観察を続けたいと考えています。
治療のリスク ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 今回は残念ながら感染の拡大を阻止するために歯の内部の神経を取る治療を行わざるを得ませんでした。
神経をなくした歯は乾燥してもろく弱くなるため、ヒビが入ったり割れやすくなります。
さらに根の中には治療できる太い(1mm以下)神経だけでなく、もっと細く微細な神経が網の目のように分布していることがあり、その部分は直接治療ができないため、薬剤による細菌の死滅を図ります。
しかしまれにその部分に生きた細菌が残り再発することが起こります。
これが根の中の治療(根管治療)の再発率が一定数ある原因です。
これは現在の医学では避けようがなく、成功率は100%ではありません。

これを避ける唯一の方法は、根の中(神経)に感染を起こさないこと、すなわち虫歯が深くない時に完全な虫歯治療をお受けになられることです。
虫歯が深くなり神経に近くまで進行してしまうと神経感染のリスクが高まるからです。
しかし虫歯が深くない時期は痛みやシミなどの症状がなく、気づくのが遅れる傾向にあります。
これを防ぐには何の症状もない時でも6か月ごとの定期的な歯科検診をお受けになられるといいでしょう。
フロスが引っかかるなど普段と違うことが起こった時は、受診をされることをお勧めいたします。