30代男性「歯がぐらつく」抜歯後歯を削らずに人工歯根(インプラント)でかむ機能回復をした症例

2024.11.18

治療前

画面右上の被せ物が入っている左上5番(左上第二小臼歯)の歯がぐらつくとお見えになられました。下の前歯だけでなく全体的に歯石がついており、最近歯科医院にいかれていないことがわかります。

画面右上の左上5番(左上第二小臼歯)には被せ物が入っていますが、見た目には異常がありません。

レントゲンからはほとんどご自分の歯が残っておらず、内部で外れたか折れたことが想像されます。残った歯の量と歯周病検査で5mmのポケットがあったため、長期的視点では抜歯も一つの方法だとご説明しました。

治療中

抜歯後にインプラントを有利にするための骨造り(白い顆粒が入っている)を行い、骨の回復期間中に両隣の歯が傾いてこないように針金を歯に接着して防止しました。

CTによるインプラント治療の可否、インプラントをどの位置にどの角度で入れるのがベストかをシミュレーションし適したインプラントを選択、治療計画のご説明をいたしました。

インプラント手術が終わり骨とくっつくのを待ちました。その後歯茎の下に潜っているインプラントに土台を装着した状態です。

治療後

治療後の状態です。画面右上の左上5番を失ったようには見えない状態に回復できました。歯の大切さをご理解いただけたため、日々の歯磨きも見違えるほどよくなっています。

被せ物をインプラントにネジ止めしているため、ネジ穴部分を埋めた材料が丸く写っていますが、外見には大きな問題とはならないと考えます。噛むことなどの機能面でも異常は見られません。

治療後のレントゲンでは、インプラントと周囲の歯を支える骨の異常はなく、いい状態です。

その他

治療から2年後の状態です。治療後の状態を維持できています。

治療から2年が経過していますが問題はなく、治療後は定期検診とメンテナンスにお通いのため、治療前のような歯石が多量についていることはなくなり、お口全体の健康度もアップしています。

骨の異常も認められません。

年代と性別 30代・男性
はじめのご相談内容 左上奥歯(左上5番・左上第二小臼歯)がぐらつくとお見えになられました。
診断結果 拝見すると左上5番にはセラミックの被り物が入っていましたが、ぐらつきがあり歯周病検査では5mmと深いポケットが形成されていました。
レントゲンからは歯の根の部分しか残っておらず歯の上部は大半が人工物であることがわかります。
根の部分しか残っていないため噛む力に耐えきれず接着が破綻しているかわずかに残っているご自身の歯質が割れるかヒビが入っている状態だと判断しました。
歯を補強する役割の土台の長さが短いこともありましたが、残った歯質が骨の高さとほぼ同じため、長期間の咀嚼に耐え長持ちさせることは困難な状態です。
無理をして残して歯周病や虫歯が進行すると今残っている骨まで失うことになります。
残念ではありますが、思い切って抜歯をして骨の減少を防止する方が長い目で見て得策だと思えますとご説明しました。
行った治療内容 現状をご理解いただけ抜歯をご希望されました。
歯を失ったまま放置すれば歯並びと噛み合わせが狂ってしまい他の歯の寿命を縮めてしまうため、他の歯の位置移動を防止し失う歯の代用を何らかの方法で考える必要があります。
その方法には取り外しができる入れ歯、両隣の歯を削って3本つながった人工歯を歯に接着するブリッジ、歯を削らないインプラントが選択できること、
またそれぞれの特徴やメリット・デメリットをご説明いたしました。

他の歯には深い虫歯や歯周病はない方ですので歯を削ることで歯を弱くされたくないご希望と、入れ歯は煩わしいとのお考えがあり、ご相談の上インプラントに決まりました。
抜歯をすれば骨が痩せいてきます。インプラントは天然の歯と同様に支える骨がどれだけあるかで将来が決まってきます。
そのため抜歯後の骨の痩せを最小限にするため、骨の成分に近い人工骨を抜歯と同時に抜いた穴の中に入れる造骨治療を行いました。(治療中のレントゲン写真)
約6か月間骨の回復を待つ間歯に針金を接着して両隣の歯が移動しないようにしました。

その後インプラントを埋入し4か月間インプラントが骨にくっつくのを待ちました。
歯茎の下にもぐった状態であるインプラントに土台をつけるための2次手術を行い、専用の検査機器で骨とインプラントがくっついたことを確認しました。(治療中のレントゲン写真)
その後土台をインプラントにネジ止めしてその上に仮の歯を装着し、歯型をお取りしセラミック(カタナ)を土台にネジで固定して治療が終了しました。(治療後の写真)
このケースのおおよその治療期間 約12か月
おおよその費用 516,070円(造骨治療と仮歯を含む
現在の様子 ご事情もあって長期間の治療になりましたが、1本歯を失ったことを忘れる普通の生活を送っておられます。
治療後も食生活や日常の問題はみられません。
現在は定期検診とメンテナンスにお通いで、ご一緒に維持していくつもりです。
治療のリスク ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
クリニックより 歯周病や虫歯が活発ではなく他の歯はほとんど治療をお受けになられたことがない方です。
何らかのご事情でこの歯だけ悪くされ、最後には失うことになってしましました。

ブリッジによる治療であればもっと治療期間は短く、ご負担も少なくすみました。
しかしその犠牲を払ってでも歯を削らずに済んだことは非常に価値のあったことだと私は考えています。
ブリッジは歯を削るだけでなく、3本分を2本の歯で負担する構造であるため支える2本にとって今後歳をとっていく歯には長期間の観点からは負担となります。
またブリッジの材質を金属を避けてジルコニアを選択したとしても、歯と同じ色調にはならず見た目にも削らない方が有利です。
すでに両隣の歯に人工物が入っている神経がある歯の場合を除いて、一般的にはこうしたケースではインプラントが将来的にも有利だと思っています。