40代男性「右上奥歯でかむと痛い」抜歯後に人工歯根(インプラント)でかむことを維持した症例
2024.12.02
治療前
画像では確認できませんが、画面右側(舌側)の歯と歯茎の境目付近の歯質(根)が縦に割れています。割れから細菌が中に入り感染を起こして噛むと痛い症状が出ています。残念ながらこの位置で割れた歯は助けることができません。
抜歯前のレントゲンです。一見まだ現役でいけそうな歯に見えますが、歯の根の一部が割れており保存は不可能でした。しかし幸いにもまだ歯を支えている骨は溶けておらず、インプラントができる可能性が高いと判断しました。
治療中
抜歯すれば歯を支えていた骨は溶けて痩せていきます。インプラントは天然の歯と同じように骨に支えられる必要があるため、それを最小限に抑える目的で造骨治療(画像で白い顆粒)を行いました。
治療前にどの位置に、どの角度で、どんなインプラントを入れるのが最適かを考えるシミュレーションをCT画面上で行い、治療計画をご説明しました。
インプラント手術が終わり、骨とインプラントがくっつくのを待っている状態です。周囲の骨でインプラントが包まれてきていることがわかります。
治療後
失った歯の根の代わりにインプラントが骨の中に入り、その上の人工歯(被せ物)で咀嚼など日常生活を維持することができます。
周囲の骨でしっかりとインプラントを支えている状態がわかります。日々の十分なケアがあれば今後も維持できていくと考えています。
その他
治療から4年が経過した状態です。治療後と変化は見られず、いい状態を維持されています。
同じく治療後4年のレントゲンです。治療直後と比較しても骨も痩せることなくいい状態がキープできています。
年代と性別 | 40代・男性 |
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はじめのご相談内容 | 右上奥歯(右上6番)でかむと痛いとお見えになられました。 |
診断結果 | 拝見すると右上6番には銀歯の詰め物が入っており、舌側の歯質が根の方向に割れていました。 レントゲンを撮影すると神経がない歯であることがわかりました。 歯が割れたのは銀歯が歯より硬いため噛む力が強くかかりやすいことと、神経がない歯は乾燥して強度が落ちるため弱くなることが原因だと判断しました。 歯の頭部分が割れた場合は治療により助けることができますが、歯の付け根から下の根の部分が割れてしまうと残念ながら助けることができないことをご説明しました。 |
行った治療内容 | 抜歯の後かむことを回復するだけでなく他の歯が移動して噛み合わせが狂うのを防止しなくてはなりません。 そのため入れ歯、ブリッジ、インプラントの選択肢があり、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご説明いたしました。 前後の隣の歯が特段の治療を受けたことがないきれいな歯であることから、ブリッジを入れるために歯を削るのは避けたいことと、入れ歯は使い勝手の悪そうだとのお考えから、インプラントをご希望されました。 歯を抜けば骨に大きな穴が開き、歯を支えていた骨が痩せていきます。ご希望されているインプラントは歯と同じく骨で支えられているものですので、骨が痩せることはマイナスです。 そのため骨の痩せを最小限に留めるための骨造り(造骨治療)をご提案しました。 造骨治療は歯の抜いて開いた大きな穴の中に骨の成分と近い人工的な材料を詰めて骨の回復を後押しする治療です。 治療計画を立ててご説明しました。現状のご理解と計画への同意がいただけましたので、抜歯と同時に造骨治療を行いました。 また抜いてなくなった歯の場所に前後の歯が寄ってこないように前後の歯に針金を接着して予防しました。(治療中のレントゲン) 骨の回復を約4か月待ち、インプラント治療の可否や可能な場合には手術の計画を立てるためCT撮影しパソコン上でシミュレーションを行いました。(CT画像) 手術術式や最適なインプラントの種類、かみ合う歯も考慮してインプラントを入れる最適な位置や角度などを決め、実際の手術に反映させるためにマウスピースのような装置を作製し手術を行いました。 その後インプラントと骨がくっつくのを4か月待ち、インプラントに人工の歯を装着するための土台をインプラントに取り付けるための2次手術を行いました。 歯茎の傷が治るのを待って土台の上に仮の歯を装着して日常生活を送っていただき、咀嚼や異和感などの問題がないかを確認したところ異常がありませんでしたので、歯型をお取りしてセラミック(セルコン)を歯に取り付けて治療が終了しました。(治療後の写真とレントゲン写真) |
このケースのおおよその治療期間 | 約12か月 |
おおよその費用 | 450,580円(造骨治療と仮歯を含む) |
現在の様子 | 割れた歯を抜歯したため噛むと痛い症状はなくなりましたが、1本歯がなくなったため右側での咀嚼がやりづらい期間が発生しました。 それを乗り越えてインプラントが入り、仮の歯を装着後から以前と変わらぬ食生活が可能になりました。 たった1本の歯でもなくなるとどれだけ不便だということ、すなわち1本の歯であっても果たしていた役割がご理解いただけたと思っています。 歯を抜いて骨の回復を待つ間やインプラントが骨とくっつくのを待つ間があり、またご都合もあって期間はかかりましたが、インプラントで昔の食生活や日常生活に戻ることができました。 治療後4年が経過していますがいい状態を維持されており、現在定期検診とメンテナンスで拝見しております。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります |
クリニックより | 昔に歯を抜いた場所にインプラントを入れる場合は、骨の回復期間がなくインプラントと骨がくっつくのを待つ期間の約2ヶ月ほどであるため、全体の治療期間は3-4か月が一般的です。 しかし今回のケースのように抜歯から行うと骨の回復期間が必要になるため期間がかかってしまします。 この期間を短くして不便な期間を短くすることもできますが、骨の回復が不十分になるリスクがあり、今後長く使うであろうインプラントのことを考えると当院では十分な期間を置くことをお勧めしております。 |