40代男性「左上奥歯が時々腫れてかむと痛みがある」重度の歯周病に侵された歯を抜歯し、人工歯根(インプラント)でかめる日常を取り戻した症例
2025.01.13
治療前
画面一番下の左上奥歯(左上第二大臼歯・左上7番)が時々腫れてかむと痛みがあるとお見えになられました。
レントゲン写真からは根の先にまで深く広がる骨の破壊像が見られました。歯周病検査では正常値が2mm程度ですが複数個所で5mmあり歯周病による骨の破壊があることがわかります。
精査のためCT撮影を行うと3本ある根の付け根間の骨が感染によりなくなっていたため、かなり進行した重度の歯周病だと判断しました。
治療中
かなり進行してしまった重度の歯周病であるため、治療による回復は不可能だとご説明し、同意をいただき抜歯をしました。
歯を失った後の咀嚼回復方法としては、入れ歯、インプラントがありそれぞれの特徴やメリット・デメリットをご説明したところインプラントをご希望されたため、骨の回復を後押しするために造骨治療を抜歯と同時に行いました。白く写っている顆粒が造骨材です。
骨の回復を待ち、どの位置にどの角度でどのようなインプラントを入れるのが最適かをCT上でシミュレーションを行い治療計画を立てます。
治療後
インプラント手術後しばらく骨の回復とインプラントと骨がくっつくのを待ち、2次手術後にジルコニアの被せ物をインプラントにネジ止めして治療が終了しました。
治療終了時のレントゲンではインプラントの周囲にしっかりと骨が回復しており異常はみられません。
その他
治療から4年が経過してますが大きな変化もなく日常の食生活を十分に維持できています。
同じく治療4年後のレントゲンでも治療直後と変わりない状態が確認できます。
年代と性別 | 40代・男性 |
---|---|
はじめのご相談内容 | 左上奥歯(左上第二大臼歯・左上7番)が時々腫れてかむと痛みがあるとお見えになられました。 |
診断結果 | 拝見すると左上7番に虫歯はありませんでしたが、歯茎が上がって歯の根がかなり露出していました。 歯周病検査では正常値が2mm程度ですが複数個所で5mmあり、レントゲン写真からは根の先にまで深く広がる骨の破壊像が見られました。(治療前のレントゲン写真) 精査のためCT撮影を行うと3本ある根の付け根間の骨が感染によりなくなっていたため、かなり進行した重度の歯周病だと判断しました。(治療前CT) 根と根の間という日常の歯磨きでは管理できない場所に感染があるため、残念ながらこのまま保存するとさらに骨がなくなり将来かむ機能を回復するためには入れ歯しか選択できなくなる懸念があるとご説明しました。 今抜歯をしてもどこまで骨が回復するか正確な予知は不可能ですが、回復すればあまり人気のない入れ歯ではなくインプラントで天然の歯と同等にかむ機能を回復することができます。 |
行った治療内容 | 患者様は入れ歯を避けたいお考えから早期に抜歯をしてこれ以上の骨の減少を食い止め、可能であればインプラントを入れたいご希望でした。 歯を抜くと骨の中に穴ができますが、その穴を体は内側から修復しながら外側から骨が痩せる相反する方向の治癒が起こります。丈夫なインプラントにするには骨が痩せるのを最小限に抑えなくてはなりません。 そのため抜歯と同時に抜いて空いた骨の穴の中に骨の成分に近い人工材料を入れて外側が痩せてくる前に内側からの修復を後押しする造骨治療をご提案しました。 抜歯と同時に造骨治療を行い、翌日と3日後の消毒、1週間後に縫い合わせた糸を取り除きました。(治療中のレントゲン写真) 骨の回復を5ヶ月待ち、CT画像からインプラント治療の可否、適したインプラントの種類、術式、インプラントを入れる最適な位置や角度などを隣の歯やかみ合う相手の歯との調和を見ながら決定しました。 その治療計画を手術に反映させるためのマウシピースを作製し治療途中にもCT撮影して予定通り進行しているか確認するなど慎重に治療を行いました。 骨の回復を5ヶ月待ち、歯茎の下に潜っているインプラントと噛むための人工の歯をつなぐための土台をインプラントにネジ止めするための2次手術をおこないました。 その後仮の歯を装着し、日常生活で実際に使っていただきました。(治療途中のレントゲン) かむことや異和感などの問題がありませんでしたので歯型を取って被せ物(ジルコニア)を土台にネジ止めして治療が終了しました。(治療後の写真とレントゲン写真) |
このケースのおおよその治療期間 | 約12か月 |
おおよその費用 | 439,890円(造骨治療と仮歯を含む) |
現在の様子 | 治療前のかむと痛みがある、抜歯後の左側でかめなくはないが噛みづらい、こうした状況はなくなり、治療後は食生活や日常の問題はなくなりました。 治療後は6か月ごとの定期歯科検診と3か月ごとのメンテナンスにお通い頂き維持管理に努めました。 治療後4年が経過していますが見た目だけでなく、レントゲンなど検査上の問題はなく日々の食生活を支えてくれています。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります |
クリニックより | お忙しいため途中に中断期間を挟んだため少し期間がかかりました。 入れ歯の異物感や見た目、使用感などが嫌われることがよくありますが、インプラントの有用性はもっと大きなことだと考えています。 天然の歯と同様に噛む力を骨で支えるインプラントにより何でも噛めることだけでなく、失った歯の仕事を他の歯に肩代わりさせることなくインプラントが代用できることが他の歯の負担を減らし寿命を短くしないことにつながるからです。 またインプラント治療後の感想で歯を失ったことを忘れているとのコメントをいただくことが時折ありますが、この心の安泰も大切だと思っています。 |