40代女性「奥歯の被せ物がとれた」抜歯後インプラントを入れて噛む機能と見た目を回復した症例
2025.08.11
治療前
今回取れた左上第二小臼歯(左上5番)の被り物が入っていた以前の状態です。
今回取れた左上第二小臼歯(左上5番)のレントゲン写真から、ほとんど歯が残っておらず、また歯の根の長さが短く、将来性が期待できる状態ではありませんでした。
治療中
抜歯から2か月後のCTです。通常のレントゲンでは正確に把握できませんが、CTからはインプラントを入れるには骨の厚みが足りないことがわかります。骨を増やす必要があり、同時にどの位置にどのようなインプラントを入れるのが最適なのかをCTでシミュレーションを行い治療計画を立てます。
骨の厚みが薄いため上顎洞粘膜を持ち上げてその中に骨補填材(白く顆粒状に写っている部分)をいれる造骨治療を行ってインプラントを入れたため、ご自身の骨の厚みより長いインプラントを入れることができました。
治療後
治療後の状態です。人目に付く頬側はきれいなセラミック、噛むために力がかかる噛み合わせ部分にはジルコニア(頬側より白い)設計にしました。インプラントの上にセラミックの被せ物(カタナ)をネジ止めするための丸い穴を樹脂で埋めてあります。将来的にネジが緩んだ場合に簡単に取り外しができて再度ネジを締め直すことを想定したものです。
インプラントと骨の状態も問題なくしっかり機能しています。
その他
治療から5年が経過していますが外見だけでなく機能面でも変化は見られません。
年代と性別 | 40代・女性 |
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はじめのご相談内容 | 左上奥歯がとれたとお見えになられました。 |
診断結果 | 拝見すると左上第二小臼歯(左上5番)に入っていた被り物が歯の補強のため残っている歯の中に埋め込んであった土台ごと外れていました。(治療前レントゲン) 根の長さが短く、残っている歯質の量から再治療をしてもそう長く持たない状態であることをご説明しました。 たとえ短期間であっても延命されるか、この際歯を抜いて何らかの方法(入れ歯・ブリッジ・インプラント)で失った歯の代用を考えるかの二者択一になり、どちらが将来に今回の選択に納得ができるかでご判断されることをご提案しました。 |
行った治療内容 | 治療方針のご相談の上、抜歯をしてインプラントを入れることに決まりました。 奥の左上6番はすでに歯を削って被せ物が入っていますが、手前の左上4番はあまり歯を削ってはおらずブリッジで歯を削るのを避けたい、また入れ歯の使用感が嫌とのお考えでした。ブリッジや入れ歯は前後の歯に噛む負担がかかるのに対してインプラントはその負担をかけない点も選択された理由の一つでした。 計画説明を行い同意が得られましたので、抜歯を行い2か月間傷の治りを待ち、その期間に歯が移動するのを防止する装置を歯に装着しました。 その後CTを撮影し、手術術式や器具、インプラントの種類などを事前に治療計画をたてて実際の手術に臨みました。骨とインプラントがくっつく期間は通常は2か月程度ですが、抜歯からそう期間が経過しておらず骨の回復に時間がかかったことと、上顎洞と呼ばれる鼻腔とつながっている骨の上の空間にインプラントを突出させるためその部分に新たに骨を誘導する手術(造骨治療)が必要であったため、骨の回復に通常より長い期間を設け4か月待ちました。 次に2次手術という歯茎の下に潜っているインプラントに噛むための被せ物を支える土台をネジ止めする簡単な手術を挟み、傷の治りを待って仮の歯を装着し咀嚼だけでなく日常生活に問題がないことを確認しました。 その後歯型を取って最終的なセラミックの被せ物(カタナ)をインプラントにネジ止めして治療が終了しました。(治療後の画像) |
このケースのおおよその治療期間 | 約12か月 |
おおよその費用 | 506,080円(造骨治療、仮歯を含む) |
現在の様子 | 抜歯後の骨の回復と上顎洞に新たに作った骨の成熟を待つ期間があり通常より長い治療期間となりました。 待つ期間は月に1~2回のご来院でした。 手術直後も特段のお困りもなく順調に傷と骨の回復が得られ、治療後も食生活や日常の問題はみられません。 治療から5年が経過していますが問題なく、現在は定期検診とメンテナンスで維持されています。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります |
クリニックより | 昔はこのような上顎洞までの骨の厚みが少ないケースではインプラントができませんでした。 しかし現在は上顎洞の一部に骨になる人工的な材料を入れて骨の厚みを増やすことでインプラントが症例により可能になっています。 この造骨治療をしてまでインプラントを入れる理由は、他の選択肢の入れ歯やブリッジの他の歯に負担をかけることによるその歯の将来性の問題点を避けることができるためです。 |