40代女性「銀歯がとれた」根の中の治療(根管治療)後に金合金の被せ物を入れた症例

2025.09.08

治療前

左上6番の銀歯が取れたとお見えになられました。歯茎の上にほんの少ししか歯が残っておらず、治療をしたとしても硬いものを噛む奥歯の仕事を長期に渡ってこなし続けられるか不安が残ります。

歯がほとんど残っておらず、とれやすい形をしています。この歯にとって今回が最後の治療になる可能性が高いことをご説明しました。また根の中の治療が不十分であるため、現時点でできるだけの治療を受けたいご希望から根の治療もやり直すことに決まりました。

治療後

根管治療(根の中の治療)後グラスファイバーの土台を入れてその上から金合金の被せ物をお入れしました。セラミックではなく金合金の被せ物を選ばれた理由は歯がほとんど残っていないため、審美面より取れにくさや歯を削る量を最小限に抑えることができるためです。

左上6番根管治療(根の中の治療)と被せ物が入った治療後のレントゲンです。手前の左上5番の被せ物が取れました。根の長さが短く歯もほとんど残っていないため将来性に不安がある歯でしたが、目立つ場所であるため白い歯に入れ替えたいとのご希望でした。

その他

治療2年後も異常は見られません。手前の左上5番の歯は白い被せ物に入れ替わっています。

治療から14年が経過していますが問題なく機能し続けています。この間に手前の左上5番は当初懸念していた通り歯が割れて抜歯になり、その後インプラントとセラミックの被せ物に変っています。

年代と性別 40代・女性
はじめのご相談内容 左上第一大臼歯(左上6番)の銀歯が取れたとお見えになられました。(治療前の画像)
診断結果 拝見すると銀歯がとれた後の歯質の量が非常に少なく、歯茎から上に若干歯が残っている状態でした。
奥歯は硬いものでも何でも噛み砕く仕事をする歯ですが、その強大な力に耐えるには健全な歯質が十分に残っていることが前提条件です。
このように歯質がほとんど残っていないケースは治療が終わっても歯の強度不足と被せ物の取れやすさがあり、一生涯存続さることは厳しいのが現状です。
今回の治療がこの歯にとって最後の治療になる可能性があることをご説明しました。
またレントゲンから根の中の治療(根管治療)は不十分であることがわかります。
行った治療内容 この歯にとって最後の治療となる可能性がある場合に患者様の2つのお考えに遭遇します。
・今できるだけのことを治療することをお望みの方
・長期間持たない可能性があるのであれば治療期間や費用をできるだけ少なくすることをご希望される方
歯科医としては前者をお勧めしたい立場ではありますが、そこは飲み込んでここはその方のお考えを伺うことにしました。

現状のご説明、将来のリスクなどをご説明したところ前者をご希望されましたので、最初に根の中の治療(根管治療)を行いました。(治療中レントゲン)

歯の強度を向上させ被せ物が取れにくくするための土台(歯の中に入れる芯棒)と、その上に被せる被せ物の種類や特徴をお話ししご相談したところ、
丈夫で適度の硬さがあり歯にピッタリ合うため虫歯や歯周病にかかりにくい金合金の被せ物をご希望されました。

グラスファイバー製土台を入れた後に被せ物に適した形に整形し、仮の歯をお入れしました。
仮の歯で日常生活を送っていただき支障がありませんでしたので、歯型を取って金合金の被せ物を歯に接着して治療が終わりました。(治療後の画像)
このケースのおおよその治療期間 約3か月
おおよその費用 136,620円(グラスファイバー製土台と仮歯を含む)
現在の様子 治療後から14年が経過した現在までも食生活や日常の問題はみられません。
14年間に手前の左上5番を失ってインプラントに、また奥の左上7番の銀歯が取れてプラスチックに置き換わっています。
長い年月の間に前後の歯が変化する中、残った歯質が少なくて将来を危惧していたこの歯は当時の状態を維持できています。
これからも、そして今後も定期検診とメンテナンスで見守っていきたいと考えています。
治療のリスク ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
クリニックより このケースのような銀歯が取れた後の治療を日常的に治療している立場から申すと、最初の治療でやるべきことをやっておくことの必要性をひしひしと感じます。
手前の銀歯が入っていた左上5番もこの後歯が割れて抜歯になり、その後インプラントに代わっています。
奥の左上7番も虫歯になり銀歯が取れてプラスチックに入れ替わっています。
最初の治療がもっとこうであったら、と考えてしまいます。
プラスチックは一時的なもので将来再治療をお勧めしております。
耐久性がなく噛み合わせが維持できないため、本来その歯で負担すべき噛む力を他の歯が負担せざるを得ないことが理由です。