40代女性「他院で抜歯といわれた」抜歯後インプラントで咀嚼機能を回復した症例
2024.12.16
治療前
他院で左下第二大臼歯(左下7番)を抜いたほうがいいと言われたが、妥当な判断なのでしょうかとご相談を受けました。2本ある根の1本に被せてあった銀歯が取れた状態でした。
歯がほとんど残っていない上に噛みしめる癖をお持ちのため、強い力を継続して支え続ける能力がないと判断しました。
治療後
今回は手前の左下6番の治療は見送るご希望があり、左下7番の抜歯後にインプラントと被せ物をお入れして1回目の治療が終了しました。
治療から3年後にインプラントの上の被せ物の頬側のセラミックが欠けました。食いしばりによる強い力に抵抗するため噛み合わせ部分を金属にしましたが、頬側まで力がかかることに驚きました。
治療から8年が経過した時点でインプラントの被せ物が噛みしめによる力に負けて取れました。手前の左下6番はこの間に根の治療後にジルコニアの入れ替わっています。
その他
治療から11年が経過しています。この時点になってやっとトラブルがなくなり落ち着いてきました。
治療から13年後です。手前の2本もジルコニアに入れ替わり、明るくきれいな口元になっています。
年代と性別 | 40代・女性 |
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はじめのご相談内容 | 他院で左下第二大臼歯(左下7番)を抜いたほうがいいと言われたが、妥当な判断なのでしょうかとご相談を受けました。 |
診断結果 | 拝見すると2本根がある歯の半分に銀歯が被っており、奥の根に被っていたであろう銀歯は取れている状態でした。 どういう経緯でこうした治療になったかは不明ですが、一番奥の力が最もかかるこの歯に根しか残っていない状態でさらに虫歯もあるとなると噛めて長持ちする歯に戻すことはできないとご説明しました。 40代とまだ若く将来のことや、噛みしめや食いしばり癖があり一般的な人より強い力を慢性的に歯に加わることからこの弱った歯では将来性が見込めず、またこの歯の負担を他の歯が負担するためお口全体として無理をしてまで残すメリットは少ないと判断しました。 |
行った治療内容 | こうした全体と先々を考慮すると抜歯もやむを得ない状況であることをご説明いたしました。 他院で受けた説明と同じ結果でしたが、状況をご理解頂ました。 当院での治療方針をお尋ねになられたため、失う1本の歯の役割を代わりに担える能力があるインプラントをご提案しました。 入れ歯では咀嚼はできても強い噛む力を十分に負担することはできず、その力を手前の神経がなく弱い歯に無理を強いる形になるからです。 残った他の歯のことも考慮する必要があります。 当院での治療をご希望されたため、治療計画をご説明したところ了承いただけましたので、左下7番を抜歯し傷と骨の治りを待ってインプラント手術を行いました。なお根の治療が不完全な手前の左下6番の治療はご相談の上今回は見送ることになりました。 インプラントが骨とくっつく期間を待ち、2次手術を経て歯型を取り最終的な被り物(メタルボンドクラウン)をつけて治療が終了しました。 通常は頬側だけでなく噛む部分もセラミックにするのが通例ですが、非常に強い力で噛みしめる癖をお持ちのためと上の歯とのスペースが非常に少ないため頬側以外を金属にする設計をしました。 治療終了から3年後に左下7番頬側のセラミックが噛みしめる力により欠けるトラブルが起こりました。(治療後3年画像) 予想を超える力を慢性的に歯にかけておられることが判明したため、左下7番だけでなく左下奥歯全体の将来を考えなくてはなりません。 そのため硬すぎる銀歯が被っている上に神経がなく脆弱な歯質になっている1本手前の左下6番を守る目的でご相談の上治療をすることになりました。 前回の治療では見送った根の治療をやり直し、歯が割れにくくするためグラスファイバー製土台を入れ、当時発売されたばかりの第一世代ジルコニアの被せ物(アプリコットクラウン)を入れて2度目の治療が終了しました。 同時にセラミックがかけた左下7番も金属色を嫌われて同じジルコニアの被せ物に入れ替える治療を行いました。 |
このケースのおおよその治療期間 | 1回目約1年(骨の回復期間と他の歯の治療を含む) 2回目約4か月 |
おおよその費用 | 1回目417,510円(仮歯を含む) 2回目243,880円(グラスファイバー製土台と仮歯2本を含む) |
現在の様子 | 1回目の治療から13年、2回目の治療から9年が経過しています。(その他の画像2) 食生活や日常の問題はみられませんが、左下7番のインプラントの上に被せて仮付けしてあった被せ物がその間何度か外れてくることがあったため、現在は正式のセメントでつけています。インプラントは部品をネジ止めする構造になっているため、ネジが緩んだ際に外せるように当時は仮付けするのが一般的でした。 幸いにも欠けることはなく取れることで済んでいますが、強大な噛みしめる力はなくなっていませんので安心はできません。 これからも定期検診とメンテナンスでご一緒に維持していく予定です。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります ・装着に際し、天然歯を削る必要があります |
クリニックより | 強すぎる噛みしめや食いしばりによりご自身の天然の歯や人工物の一部が欠ける・割れる、また歯自体が割れるなどのトラブルをよく目にします。 この方にもそうした癖がありますが、マウスピース(ナイトガード)を夜間使用しながら日中は上下の歯を極力接触させないことに注意を払っておられます。 その効果もあって現在のところ大きなトラブルには至っていません。 |