30代男性「上の前歯の歯茎が腫れた」根の治療(根管治療)後にセラミックを被せた症例

2025.09.22

治療前

左上前歯の間(左上1番と2番)の唇側の歯茎が腫れたとお見えになられました。歯茎に丸いできものがありますが、歯の内部の感染部からの膿の出口です。

膿の出口からレントゲンで白く写る細い棒を差し込むと左上2番の根の方角に入っています。この歯に原因がある可能性を示唆しています。

しかし何か釈然としない部分があったため、電気を歯に通す検査では左上1番に原因がある結果となり矛盾しています。そのためCTを撮影したところ左上1番に原因があることがわかりました。一つの検査だけで治療を安易に行うと違った歯の治療をすることになるところでした。

治療中

根の中の治療(根管治療)後のレントゲンです。感染を起こした神経を取り除き内部を消毒した後に白く写る材料で根の中を閉鎖し再感染を防止します。

根の治療後に歯の補強のため歯の内部にグラスファイバー土台を入れて被せ物に適した形に整形しました。この時点では歯茎にある膿の出口はふさがって歯茎は治っています。

土台と歯を整形した後に上から仮の歯を仮付けしました。この状態で日常生活上の支障がないか、形態や大きさ長さなどを確認します。

治療後

ご希望によりセラミック(カタナ)を歯に接着して治療が終了しました。歯茎は正常に治っており、症状もありません。通常の日常に完全に戻れています。

年代と性別 30代・男性
はじめのご相談内容 上の前歯の歯茎が腫れたとお見えになられました。
診断結果 拝見すると左上前歯の間(左上1番と2番)の唇側の歯茎が腫れていました。
歯茎の腫れの中央に膿の出口があり、いずれかの歯の細菌感染が原因だと判断しました。(治療前画像)
どちらの歯にもぶつっけたり外傷のご記憶がなく、また虫歯もない状態です。
原因の歯を特定するため、膿の出口の穴から細い材料を入れてレントゲンを撮ると、左上2番の根の付近に材料が入っていました。
これは左上2番に膿が発生していることを指し、今回の原因は左上2番だということを示唆しています。(治療前レントゲン)

しかし何か釈然としない部分があり電気を通電して神経のダメージを測定すると、左上1番が神経がほぼ死んでいる数値が出ました。二つの検査で原因の歯が異なる状況です。
通常のレントゲンでは原因の歯が特定できないため、CTを撮影すると左上1番の頬側の骨が一部溶けてなくなっており、今回の原因は左上1番だと判断しました。

行った治療内容 このまま放置すると感染が拡大しあごの骨や隣の歯に感染が広がっていきます。
左上1番の根の治療(根管治療)を行い、歯の内部の感染を止める必要があるとご説明しました。

現状と治療方針に同意をいただけたので根管治療を開始しました。
根管治療だけで6回を要し、根の中の細菌が死滅した時点で再感染防止のため根の中をゴム質の材料で封鎖して根管治療が終わりました。(治療中レントゲン)
歯の神経を失うと歯はもろくなりかけたりヒビが入る、割れるなどのリスクが高くなります。
さらに今回は一番前の目立つ位置の前歯です。神経を失うと歯が茶系に変色することがあるため、審美的にもマイナスです。
それを承知の上でご自身の歯の表側を残す方法と、歯全体を細く削って被せ物を入れる方法があることをご紹介しました。

ご相談の結果被せ物をご希望になられたので、歯の補強ために歯の内部にグラスファイバー製土台を入れ、被せ物に適した形に歯を整形しました。(治療途中の画像)
土台を入れた同じ日に仮歯を作りしばらく日常生活を送っていただき外見や歯の大きさや形、発音や咀嚼などの問題がないかを確認しました。
ただし仮歯には色調の選択肢があまりないため他の歯との色調の違いはあります。
裏側の出っ張りが気になるとのお話しがあったため、一度仮歯の調整を行いました。
問題がなくなった時点で歯型を取り、次のご予約でセラミック(カタナ)を歯に接着して治療が終了しました。(治療後の画像)
このケースのおおよその治療期間 約4か月
おおよその費用 163,520円(グラスファイバー製土台と仮歯を含む)
現在の様子 根管治療中に歯茎の腫れや膿の出口はなくなり、その間のお痛みなどの症状もなく順調に治癒に向かいました。
ただし最近の感染が歯の中だけにとどまらず、歯茎を腫らしたことからあごの骨にまで及んでいたため、慎重を期して根管治療の回数が増えました。
治療後も食生活や日常の問題はみられません。
現在は定期検診とメンテナンスで維持されていらっしゃいます。
治療のリスク ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 医療や検査方法や機材が進化したといっても、まだまだ不確実な部分もあります。
今回も一つの検査に頼るのではなく、何かおかしいと感じる感性が他の検査を行う動機となりました。
その結果当初疑っていた歯とは違う歯に原因があることが判明しました。

すべての方にありとあらゆる検査をすることにも問題があるでしょう。
歯や人体への負担だけでなく経済的にも必要最低限に抑えられればいいと考えています。
どんなに医療が進化しても検査や機器だけにとよるのではなく人が関わるべきだと改めて感じました。