40代女性「奥歯の詰め物取れて歯がほとんど残っていない」根管治療(根の治療)で歯を残した症例

2025.10.06

治療前

20日程前に左下奥歯(左下6番)詰め物が取れ大きな穴が開いており、歯がほとんど残っていない。抜歯を覚悟しているとお見えになられました。歯の内部に黒く写っている虫歯があり一見歯の形が残っているようですが、虫歯を取り除くと噛む力には耐えきれないほどの薄い歯質しかのこらないことが容易に想像できます。ご本人がおっしゃるように歯の存続の危機です。

レントゲンからも虫歯が深く進攻しており虫歯を取ると歯がほとんど残らないことがわかります。

精査のためCTを撮りました。歯を支える骨の一部も溶けてなくなっておりかなり重症であることがわかります。

治療中

丈夫な歯に戻れる訳ではありませんが、最後のご奉公をさせてみられてはいかがでしょうかとお話ししたところ、延命治療をご希望されたため根の中の治療(根管治療)を行いました。根の上の白い部分は治療中のセメントであり、歯がほとんど根しか残っていません。

治療後

根管治療後グラスファイバーの土台を入れて歯を整形し、ご相談の上ジルコニアを被せて治療が終わりました。左を気にして食事をされてこられましたが、それから解放されどこで何を噛んでもいい状態に戻りました。

年代と性別 40代・女性
はじめのご相談内容 20日程前に左下奥歯の詰め物が取れ大きな穴が開いており、歯がほとんど残っていない。
抜歯を覚悟しているとお見えになられました。
診断結果 拝見すると詰め物がとれた左下6番(左下第一大臼歯)には大きな穴が開いており、内部に虫歯も見られました。
ただでさえ歯質が薄くしか残っていない状態に、さらに虫歯除去により歯質が少なくなることが確実です。
わずかしか残っていない歯で奥歯の本来の役目である硬いものでもガリガリ噛み砕く力に耐えきれるか微妙な状況でした。(治療前画像とレントゲン)

将来性に明るくないためご本人がおっしゃるように抜歯も一つの選択肢ではあります。
しかし丈夫な歯に戻るわけではありませんが、最後の一働きに賭けてみるのも一つの方法です。
この歯が少しでもお口の中にとどまってくれていれば、入れ歯やブリッジで他の歯に負担をかけない、インプラント手術が不要になる、そうしたメリットが生まれます。一生は持たないとしても、こうした決断を先送りできるとご説明しました。
行った治療内容 あきらめかけていた歯に若干ではあっても希望が持てることを評価され、歯の内部にまで感染が及んでいる状態を根管治療により解消し、再度人工の歯を被せて使える所まで噛むことをご希望されました。

根管治療に7回を要しましたが、無事歯の内部の感染がなくなりました。(治療中レントゲン)
その後被せ物で歯を保護しながら噛める環境を作る必要があるため、銀歯、ジルコニア、金合金、セラミックの選択肢をご紹介しました。
しかし虫歯ではない健全な歯質が非常に少ないため、セラミックはお勧めしませんでした。
セラミックは材質的に厚みが必要なため、その分わずかに残っている歯を削る量が多くなるからです。

銀歯の金属色を避けて白い歯にされたいことと、この歯には最後のチャンスだからできるだけの治療を受けたいご希望により、土台にグラスファイバー、被せ物はジルコニアにご相談の上決まりました。
土台を入れて歯の整形後、歯型を取って次回のご予約でジルコニアの被せ物が入って治療が終了しました。(治療後の画像)
このケースのおおよその治療期間 約4か月
おおよその費用 142,070円(グラスファイバー土台と仮歯を含む)
現在の様子 治療前から左側で噛むことを避けておられましたが、治療後には左側でもしっかり噛めるようになりました。
食生活や日常の問題はみられません。
今後は定期検診とメンテナンスで維持していく予定です。
治療のリスク ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 歯も人体の一部として寿命があるものだと考えています。
歯を失った場合はその歯の果たしてきた機能が落ちるたけでなく、その歯の機能を他の歯が担わなくてはなりません。
その余分な負担は残った歯には継続的な負荷となり歯の寿命を短くしてしまします。
歯に最も近い治療法であるインプラントでも天然の歯を超えることはありません。
ですから一生は持たなくても、できるだけ長く一本の歯を存続させてあげることが大切だと考えています。