セカンドオピニオンで来院。抜歯と診断された歯を、CTを用いた根管治療で保存した症例
2025.02.03
治療前
治療前のレントゲンです。通常は2本から4本根の中の管がある歯ですが、画面上2本の管が写っています。また根の先の骨に若干黒く写っている病巣が見て取れます。
歯を前後方向で輪切りにしたCT画像から黒く写る根の中の管の位置や大きさ、本数が事前に知ることができます。実際に治療をする際に事前にどの付近に何があるかわかることは的確な治療に非常に有効です。
歯を上方向から輪切りにしたCT画像です。これにより丸く黒い管が2本この位置にあることがわかりました。根の中の1mmにも満たない細い管を探す見当がつきました。
治療中
根の中の治療(根管治療)が終了した時点のレントゲンです。根の中の管が白く写る材質で均一に満たされており、根の周囲や骨にも異常が認めれれません。
治療後
治療から2年が経過した状態です。左下7番の症状もなく、レントゲン上でも異常はみられません。
治療4年後の状態です。左下7番には変化はみられませんが、残念ながらこの間に手前の左下5番が虫歯により神経を失っています。
年代と性別 | 50代・女性 |
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はじめのご相談内容 | 「他医院で保存ができないため抜歯と診断された。抜歯後はインプラントか入れ歯しかないと言われ、保存する方法が無いかセカンドオピニオンを受けたい」と来院されました。 根の先に病気があるが治癒の見込みがないという診断だったそうです。 |
診断結果 | レントゲンを拝見したところ左下7番(左下第二大臼歯)に根の病気があり、根の管が2本確認できます。 根の治療途中でまだ古い材料が残っている状態でした。 また歯の根と根の開き具合が小さく、樋状根など根管治療が難しい形態をしていると予想されます。 根の病気がある以上、全ての根管を綺麗にしなければ保存が不可能な状態です。 すでに手前の左下6番を失っておられるため、この歯まで失うとご自分の歯で左側で咀嚼することが不可能になります。 難しい歯ではありますが、ダメ元であっても治療に挑む価値はあると考えました。 |
行った治療内容 | 樋状根(根の中の神経などが通っている管同士がくっついて複雑な形をしている一種の奇形)などであれば、根管の見逃しやパーフォレーションのリスクがある上に、根管の形が複雑で治療の確実性が下がるためCTを撮影し、三次元的に歯の形状を確認しながら治療を行うことをご提案しました。 古い根の治療の材料をある程度除去した後、CTを撮影し根管の数と位置を確認しながら治療を進めました。 この歯は一般的に根管の数が4本から2本とバリエーションがある歯ですが、CTで確認したところ2本であったのでその2本の根管治療を行いました。 手前の根管が封鎖していたため、パーフォレーション(穿孔)を起こさないように慎重に治療を進めました。 その後、土台と仮歯を装着し、症状などが無いか確認した後、問題がなかったため手前の歯と繋げて保険適用の銀歯のブリッジとしました。 |
このケースのおおよその治療期間 | 治療期間:3か月半 治療回数:9回 |
おおよその費用 | 約25,000円(仮歯、CT撮影を含む) |
現在の様子 | 治療から4年経過していますが症状も特になく、食生活の支障もなく正常にお使いいただけています。 抜歯と診断された歯を保存することが出来ました。 途中手前の歯の神経に問題があって治療した以外は、経過は良好です。 |
治療のリスク | ・歯の根管の形態が複雑であったり、根管が完全に閉塞している場合、パーフォレーションを起こして保存不可能になるリスクがあります。 ・根管に側枝などがあると、完全に根管内を清掃することが難しいため、再発リスクが高まります。 |
クリニックより | 今回治療した歯は、再治療を何度か繰り返しているであろう状態だったため、歯自体が弱っていることが予想されます。いずれどこかで限界がきて折れたりなどして抜歯になる可能性もあるでしょう。 ただ、今回は丁寧に治療することで治る歯であったため、抜歯に至らず幸いでした。 現在4年経過し食生活や日常生活上の問題はなく、今後もできる限り長く使っていただけるように経過を追っていきたいと考えています。 メンテナンスと検診を欠かさず受けていただいているため虫歯や歯周病でこの歯が再治療するリスクはかなり低く抑えられており、今現在非常にいい状態です。 |