40代女性「セラミックが入っている前歯の歯茎が痛い」歯を抜歯しインプラントで外見と食生活を維持した症例

2023.08.22

治療前

 

治療前正面治療前レントゲン

治療中(インプラント埋入)

 

インプラント埋入レントゲン

治療後

 

治療後正面

治療6年後

 

6年後正面6年後レントゲン

 

年齢と性別 40代・女性
ご相談内容 以前にセラミックを入れた上の前歯(左上1番)の歯茎に痛みがありお見えになられました。痛みと歯を失うのではないかとの不安、そして食生活への支障を訴えておられました。(治療前写真)
カウンセリング・診断結果 拝見するときれいなセラミック人工歯が入っていましたが、それを支える歯の根に問題があるようです。(治療前写真)レントゲン写真では前歯2本は通常より根が極端に短く、左側の前歯の根の先に黒く写る病巣があります。隣の歯の根の長さと比較しても相当長さが短い上に大きな病巣によりほとんど骨に支えられていない状態であることがわかります。残念ながら根の治療では回復不可能と判断して抜歯をお勧めしました。このまま放置しておくと、隣の歯を支える骨までなくなる懸念があるからです。(治療前レントゲン)
行ったご提案・治療内容 この状態では歯を残す治療は困難なため抜歯はやむを得ないとしても、その後どういう方法で前歯を取り戻すかが課題です。入れ歯、ブリッジ、インプラントがその候補ですが、入れ歯は隣の前歯に針金で引っかけるため審美的によくないことと異物感があり万一人と話していて取れることがあっては困るとのご希望により最初に候補から外れました。
ブリッジは両隣の歯とつながった人工歯を入れるものです。審美面の問題や異物感や発音の問題はないのですが、失った歯にかかる力を両隣の歯が肩代わりする構造であるため、右側の根が短い歯には長期的にはかなりの負担になることが想像されます。そのためブリッジも選択外となり、残ったインプラントをご希望になられました。しかしインプラントの懸念点もあります。歯を抜くと同時に病巣も取り除きますが、大きな穴が骨の中にできます。その部分の骨がどこまで回復するかが未知数であることです。また歯を失うと骨の痩せが起こり、骨の減少に伴って歯茎も上に上がってしまい、隣の歯の歯と歯茎ラインより上に人工歯が入る、すなわちインプラントの人工歯だけ隣の歯より長くなり隣との審美的調和がとれなくなってしまう懸念があります。これらの懸念点を可能な限り払しょくするためには、抜歯による骨の痩せを最小限に抑える必要があります。そのため抜歯前にソケットプリザベイションと呼ばれる造骨治療を抜歯と同時にお受けになられることをお勧めしました。
また歯をお抜きした後、骨が治癒する期間(通常2-4か月)とインプラントを入れて骨とくっつくのを待つ期間(通常2-3か月)に前歯がないことは外見の問題と生活上の不便が発生します。それを避けるために、一時的に入れ歯を入れるか、両隣の歯の人工歯を外して一時的なブリッジタイプの仮歯を入れる方法があります。入れ歯には異物感などの問題がある反面、両隣の歯の人工歯はそのままにできるメリットがあります。ブリッジの仮歯には入れ歯の問題はありませんが、両隣の歯も含めて新たに3本の人工歯を作る必要があるため、費用がかさみます。ご相談の結果、仮の状態が長ければ6か月以上と長期間になるためブリッジの仮歯をご希望になられました。抜歯後は時々レントゲンを撮り、骨の回復状態をチェックし、インプラントを入れるタイミングを計りました。抜歯後6か月してインプラントをお入れしました。(治療中レントゲン写真)骨を大きく失っておられたため骨の回復を十分待ち、通常よりは抜歯後の期間が長くなりました。骨とインプラントがくっついたことを専用の測定器を用いて確認した後に仮歯をお入れして、発音、審美、咀嚼などの問題がないかをお互いに確認しました。その後問題がなかったため、最終的な人工歯をお入れしました。(治療後の写真とレントゲン)
治療期間 約1年
治療回数
費用目安 457,850円(インプラント、骨造り、仮歯等を含む)
術後の経過・現在の様子 抜歯後お困りであった痛みはなくなりました。傷と骨の治癒を待つ間も仮歯による外見の維持ができ、インプラント手術後の痛みや腫れなどの症状もなく軽微で日常生活への支障はありませんでした。インプラントとセラミック(カタナ)により歯を失ったことがわからないほどの食生活と以前と変わらない審美を維持できています。
治療のリスクについて ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
クリニックより すでに歯がない状態からのスタートであればここまで治療期間がかからなかったのですが、今回は抜歯後の骨の回復に期間がかかりました。抜歯や歯周病治療を含めてインプラントまでの期間が6か月、インプラントと骨がくっつくのに6か月、歯型を取って最終的な人工歯をお入れするまでに2週間、トータルで1年ほどの期間がかかりました。

抜歯後7年、インプラントから6年ほど経過しています。セラミックの美しさが維持できていると思いますが、歯と歯の間の歯茎が人工歯間を埋めて審美が向上していることがお判りでしょうか。また当初に懸念していた隣の歯と歯茎の境目ラインが自然になっているのもご理解いただけると思います。歯を抜く前から骨の痩せと歯茎の上りをコントロールした結果です。

セラミック(カタナ)など詰め物・被せ物の種類や特徴はこちらをご参照ください。
インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク