20代男性「奥歯で硬いものを噛むと痛みがある」歯の根の治療(根管治療)とセラミックで治療した症例
2024.02.12
治療前
噛むと痛いとおっしゃる左下第一大臼歯(左下6番、画面右から2本目)にはプラスチックが詰まっていました。
レントゲンでは根の先に小さな黒い影が写っています。また白く写っているプラスチックは神経近くまで深く詰まっておりその周囲に黒く映る隙間があるためその部分からの神経の感染が疑われました。
治療中
死んでしまっていた神経を取り除き、本来神経が入っていた歯の中の管を薬剤で詰めて再感染を防止する根管治療を行った後のレントゲン写真です。
治療後
根管治療後に歯に開いた穴にセラミック(e-max)を詰め、この歯の治療が終わった状態です。
その他
治療終了から3年後の状態です。治療後のいい状態が維持できています。
年代と性別 | 20代・男性 |
---|---|
はじめのご相談内容 | 頬側の歯茎に小さなできものができて、左下奥歯で硬い食物を噛むと痛いとお見えになられました。 |
診断結果 | 左下奥歯(左下6番)に保険のプラスチックが詰めてありましたが、見た目に虫歯は確認できませんでした。(治療前画像1) レントゲン撮影で根の先にわずかな黒く写っている骨が感染により破壊されている状態が判明しました。(治療前画像2) 歯の神経が生きているかどうかを電気的な検査を行うと、ほぼ神経が死んでいる数値を示したため、プラスチック周辺から入り込んだ細菌が神経まで進行したと推測し、噛むと痛いことや歯茎のできものを発生させているのは、歯の内部と根の先まで拡大した細菌感染が原因だと診断しました。 |
行った治療内容 | まだお若く歯の神経を取り除くと歯の寿命が短くなってしまいますが、すでに神経は死んでしまっている上に感染があごの骨の中まで拡大することを止めなくてはなりません。そのため根の中の治療(感染根管治療)をご提案し、根の中の除菌が終了後にはかなりの歯質の量が残ることが予想されたため詰め物を入れて咀嚼を維持していくこともご提案しました。 今までとは同じプラスチックでは同じことが起こる懸念があるため、根管治療後の詰め物には保険の銀歯、自己負担の金合金やセラミックが選択できることをご説明しました。歯とあごの骨の感染を治療するため根の中の治療(根管治療)をご希望され、また根管治療後は20代と若く、審美面の維持をご希望されたため銀歯ではなくセラミックの中でも自然感がありきれいなガラスセラミック(e-max)をご希望になられました。 根の中の治療を行うためにはどうしても噛み合わせ部分に穴を開けなくてはなりません。今回は大きな虫歯が感染の原因でないため、根管治療に必要な最小限の歯の穴にしました。それにより歯質が多く残るため、被せものではなく詰め物での咀嚼が可能になります。少ない歯質では噛む力に耐えきれず割れたり欠けることがあるためです。 根の中の消毒を何度か繰り返して症状がなくなった時点で根の中をゴム質の材料で封鎖し再感染を防止しました。レントゲンで根の中に白く写っている部分です。(治療中画像1) その後経過がよかったため、歯型をお取りし、最終的なガラスセラミックを接着して治療は終了になりました。(治療後画像1) |
このケースのおおよその治療期間 | 約2か月 |
おおよその費用 | 132,360円(グラスファイバー製土台と仮歯を含めて) |
現在の様子 | 噛むと痛い症状は根の治療中にはなくなり、治療が終了した現在も症状は再発していません。 また咀嚼や外見、異物感など使用上の問題はなく、見た目にも歯と同様の色調のため治療前の見た目を維持することができました。 治療後は定期的歯科検診とメンテナンスにお通いになられており、治療から3年後の現在でも異常は認められず、このいい状態を維持されていらっしゃいます。(その他画像1) |
治療のリスク | ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります ・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります |
クリニックより | 1本奥の歯にも虫歯がありました。通常は噛み合わせ部分から虫歯を削るのですが、今回は手前の歯の治療で歯を削ったため横から虫歯にアクセスすることができました。そのため噛み合わせ部分を削る必要がなくなったため強度的に弱い保険のプラスチックでも十分でした。奥の歯を削る量が少なくなったことは不幸中の幸いでした。 根の中は非常に複雑な構造になっており、細菌が潜む場所がたくさんあります。現在の歯科治療ではそのすべての場所を治療することは不可能なため、そうしても再発する症例が少数発生します。そのため当院では根の治療期間を一般より長く設定したり、複数の薬剤を用いて消毒するなどの方法で可能な限り再発を防ぐ努力をしています。 治療の詳細は下記をご覧ください。 ・根の治療(根管治療) ・e-maxなど詰め物・被せ物の種類や特徴 |