30代男性「1か月前から左下奥歯が痛い」除菌治療で神経を取らずに白いジルコニアを詰めた症例

2023.09.20

治療前

治療前

 

治療前レントゲン(右端の歯の黒い部分が虫歯)

治療前レントゲン

 

治療後

治療後

 

年齢と性別 30代・男性
ご相談内容 左下の奥歯(左下7番)が痛いとお見えになられました。(治療前写真)
カウンセリング・診断結果 拝見すると左下7番に虫歯による穴が開いていました。レントゲンでは神経近くにまで進行した虫歯が認められます。すべての虫歯を取り除くとその際に神経が露出してしまい、神経を取り除く治療が必要になる可能性が高いと判断しました。
行ったご提案・治療内容 虫歯除去と共に神経を取り除く治療(根管治療)を行うと歯に水分と栄養が届かなくなり歯が乾燥して歯質がもろくなります。また根管治療時に歯に開ける穴によっても歯の強度が落ちてしまします。神経を失った歯の寿命はそうでない歯に比べて統計上10年程短いことがわかっていますのでできれば神経を取らない方がいいのです。
そのため、抗生物質を使った除菌治療で虫歯の中の細菌を死滅させて神経を残す治療をご提案しました。ただしこの治療にもリスクがあります。現時点ですでに神経が細菌感染している可能性があるからです。細菌感染の有無を現時点で知る方法がないため、除菌治療を行ってもごく一部のケースで後になって歯の痛みが出てその時点で神経を取らざるを得なくなる可能性があるからです。ここまで進行してしまった以上、神経を助けることができる唯一の治療に賭けてみたいとのご希望があったため、除菌治療を行った後仮の歯をお入れしてしばらく経過を観察しました。詰め物は見た目が悪い金属や強度不足のため耐久性がないプラスチックはご希望にならず、セラミックよりご負担が少ないジルコニアを選択されました。奥歯のためセラミックに比べて多少色調が劣るジルコニアでも許容範囲内だとのお考えでした。痛みなどの症状もなく経過が良好であったため、仮の歯を外して歯型をお取りし、次のご予約時にジルコニアを歯に接着して治療は終了しました。(治療後の写真)
治療期間 約1か月半(経過観察期間を含む)
治療回数
費用目安 53,640円(除菌治療と仮歯を含む)
術後の経過・現在の様子 これからの経過を見る必要がありますが、現時点では神経を取らずに済んでいます。神経が残れば歯の寿命が飛躍的に長くなりますので、この状態が続くことを願っています。治療後も痛みはなく、咀嚼や食生活・日常の問題はみられません。
治療のリスクについて ・装着に際し、天然歯を削る必要があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・神経が感染していた場合には将来痛みが発生して神経を取る治療が必要になることが稀にあります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です
クリニックより 抗生物質で神経を取らずに温存する治療にはリスクがあり、将来お痛み等の症状が出る可能性はゼロではありません。今後も経過を拝見していきたいと考えています。

お口の状態から噛みしめ癖がおありだと考えられます。そのため手前の歯にもすり減りがあり、治療前の写真にあるように歯の噛み合わせ部分に所々茶系の変色した部分が見受けられます。この部分はすり減りにより表面のエナメル質が摩耗したため、下部の歯質である象牙質が露出して色が変わって見えています。象牙質は虫歯になりやすいため、この歯も同様の現象から今回の虫歯を作ったと考えています。
噛みしめや食いしばりは自覚がないためコントロールが難しいものですが、大切な財産である歯の寿命を縮めてしまうことがあります。こうしたご説明と夜間歯を守るためにマウスピースをお勧めしました。