60代男性「奥歯で噛むと痛い」抜歯とインプラント後21年の経過症例

2023.12.25

治療前

治療前画像
左下で噛むことに最も働く2本の大臼歯の内1本(左下第二大臼歯)をすでに失っており、唯一残っている左下第一大臼歯(左下6番)で噛むと痛いとお見えになられました。(金属の被せ物が入っている歯)この歯まで失うと左側で噛むことが困難になってしまいます。

治療前レントゲン

治療後画像
レントゲンからは炎症により根の周囲が黒く写っています。骨が破壊されていることがわかります。根の先に病巣が見られないことから根にヒビが入ったか割れている可能性が考えられました。神経がない歯によく起こります。

治療後

治療後画像
残念ながら左下6番は残すことができなかったため、抜歯後にすでに失っていた左下7番と一緒にインプラントを入れて噛める日常を取り戻しました。

治療後1年レントゲン

治療後画像
インプラント治療から1年後のレントゲンでは骨の痩せもなくしっかりと機能しています。

治療後10年

治療後画像
この写真でも骨の幅が普通の方より広く大きいことがわかります。噛む力が人一倍強いため、歯が欠けたり根が割れたりすることが何度かありました。インプラントのセラミックの被せ物も表面が一部剥離しています。一般の方には稀にしか目にしません。

治療後10年レントゲン

治療後画像
レントゲンからはそのような強大な力にもインプラントは屈しておらず、大きな骨の痩せも起こっていないことがわかります。いい状態が維持できています。左下6番のインプラントの首付近に若干骨が減りつつある様子が見られるため、清掃や洗浄で維持管理を行いました。

治療後21年

治療後画像
以前は金属フレームの上にセラミックを焼き付ける被り物でした。金属とセラミックという異種の材料の結合力が弱く壊れるケースが散見されていました。近年金属の代わりにジルコニアを用いその上にセラミックを焼き付ける方法に進化しています。この方も表面のセラミックが欠けたため、治療後11年で新しい治療法で入れ替えました。その時点から10年が経過していますが異常は見られずきれいな状態が維持できています。

治療後21年レントゲン

治療後画像
レントゲンではこの21年間に大きな変化はみられません。11年前の左下6番のインプラントの首付近の骨の減少も止まっている様子です。今後も維持管理に努めて参りたいと考えています。

 

 

年齢と性別 60代・男性
ご相談内容 22年前に左下奥歯(左下6番)で噛むと痛いとお見えになられました。
カウンセリング・診断結果 拝見すると1本奥の左下7番はすでになくされており、左下6番には銀歯が被っていました。レントゲンを撮ると神経がない歯であることと、根の周囲に骨が破壊された像が写っていることがわかりました。
すでになくされている左下7番も歯が割れて以前に抜歯になったと伺っています。左下6番は神経がない歯であるため強度が低下していたことに加え、歯より硬い銀歯が被っていたため強い力が歯にかかり歯が耐えきれなくなった結果、歯の根が割れたと推察しました。歯周病検査でもそれを裏付ける結果でした。
骨格や筋肉もたくましく、硬いものがお好きで何でもバリバリ噛んでいらっしゃるご様子で、日常的に相当強い力を歯にかけておられることが想像できました。ソフトボールとゴルフのスポーツがお好きで、奥歯を噛みしめておられることも原因の一つだと考えました。
状況証拠はあっても銀歯が被っているため直接歯を見ることができません。そのため銀歯を外してみてヒビや割れが確認できなければ根の内部の治療を行い、しかし割れてしまった場合は歯は保存することが不可能であるため抜歯せざるを得ないと判断しました。
行ったご提案・治療内容 仮に歯を助けられない場合には抜歯後の噛むことの回復が必要です。入れ歯とインプラントのご紹介をいたしました。入れ歯の簡便さや異物感があること、咀嚼効率が落ちることなどとともに、インプラントの特徴やメリット・デメリットなどをご説明しました。スポーツ好きのこの方は力が入ることが第一優先にお考えでしたのでインプラントをご希望されました。治療計画をご説明しご了解が得られましたので、抜歯を行いました。

22年前の当時は今のようにCT機器はなく、また骨造りの技術もまだなかった時代です。抜歯後数か月後に通常のレントゲンと模型から歯茎の厚みを計測して差し引く形で骨の外形を把握してどこにインプラントを入れるかを検討しました。
その後インプラント手術を行い、インプラントと骨がくっつくのを待った後に歯型をお取りして被り物(メタルボンドクラウン)を歯に仮付けして治療が終了しました。
仮付けする理由は、噛むことなどのインプラントに加わる振動でインプラントのネジが緩んだ場合に被りものを壊さずに取り外して再度ネジを締め直すことができるためです。
インプラントの上の被り物は当時メタルボンドと呼ばれていた金属フレームの上にセラミックを焼き付けた人工歯です。金属とセラミックの異種の材料の結合であるため、症例の中にはセラミックが欠けることに時に出会うことがありました。現在は金属フレームの代わりにジルコニアフレームを用いる治療法に変わっています。そのおかげでセラミックが欠ける頻度がかなり少なくなってきています。

治療期間 約4か月
治療回数
費用目安 878,400円(仮歯を含む2本)
術後の経過・現在の様子 治療後は左側で噛むことができるようになりました。
治療から4年後に左下7番のセラミックに一部が欠けてこられて再製作を行っています。さらにそれから11年後に再度セラミックが欠けたため、金属フレームをやめてジルコニアフレームに交換したカタナに入れ替えました。
骨格と筋肉がたくましく噛む力が強い上に噛みしめ癖やスポーツによる噛みしめなどによる過度の力によるものですが、それも含めてこの方ですのでインプラント自体に問題が見られないことが救いだと考えています。食生活や日常の問題はみられません。
治療のリスクについて ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
クリニックより 被り物は10年後の写真のメタルボンドクラウンから21年後の写真ではカタナに変わっています。レントゲン上では骨の痩せもなくまた骨とインプラントの結合検査でも異常はなく正常に機能し続けています。
この間の期間中にも強い力によって右側など他の歯が欠けたり摩耗が著しく再治療が必要になりました。1本手前の左下5番の金合金の詰め物も被り物に変わっています。強すぎる噛む力とどう折り合いをつけるか今後の課題でもありますが、これからも経過をご一緒に追い続けて参りたいと考えています。

インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク