60代女性「八重歯が下唇に当たって気になる」矯正ではなくラミネートベニアで緩和した症例

2024.04.01

治療前

上顎の左右糸切り歯が八重歯になっていることを改善したいとお見えになられた当時60代女性の方です。

両方の犬歯(上顎左右3番)が唇側に出っ張っています。しかし虫歯はありません。通常は矯正治療による審美的改善を行う症例です。

治療中

矯正治療ではなく歯を削って八重歯の出っ張りを改善したいとのご希望により、ラミネートベニアを装着することになりました。ラミネートベニアは歯の唇側表面を少量削りその面に薄いセラミックを貼り付ける治療です。女性の付け詰めに似ています。

治療後

ラミネートベニアを装着した状態です。糸切り歯がハの字に開いていたものをできるだけ垂直に近づけることで、歯の生えている位置が変わらない状態でも出っ張り感を減少させる努力をしました。ご本人にとっては短期間に出っ張りが少なからず改善できたことをお喜びいただけました。

出っ張り程度が減少したため、ご本人からは唇への接触感がなくなったと伺っています。

その他

治療から19年が経過した状態です。年齢による歯茎の後退が若干みられるものの、セラミックの美しさは変化しておらず治療時をほぼ維持できています。

定期的歯科検診とメンテナンスに継続してお通いのこともあり、他の歯も含めて当時の状態を維持されていらっしゃいます。

年代と性別 60代・女性
はじめのご相談内容 以前から八重歯が嫌だったが、最近八重歯が下唇に当たって異和感を感じるとご相談を受けました。
診断結果 拝見すると上の左右糸切歯が前に出っ張っている典型的な八重歯でした。
八重歯は永久歯が生える際に最後に近い段階で生えてくるため、乳歯時代に虫歯ができて歯の位置がずれる、歯とあごの骨の大きさのアンバランスなどが原因で起こります。
そのためご年齢から長年この状態であったと思われますが、奥歯の喪失や歯周病などによる奥歯のサポート不足などによって八重歯が顕著になってこられたと判断しました。上唇を動かすたびに八重歯が唇を圧迫していました。(治療前画像1と2)
行った治療内容 前歯の変化は主に歯周病によって歯を支える力の減少やそれに伴う奥歯のサポート不足などで起こるため、お口全体の歯周病治療など基礎的な治療が必要であることをご説明しました。ご理解いただけたので歯周病治療と並行して今後の八重歯の治療方針についてご相談をしました。

八重歯ではあっても虫歯や歯周病には無縁の状態ですのでできればこの歯に治療は避けたいと考えました。そのため矯正治療をご提案しました。しかし矯正治療期間が長期になることから八重歯を削って引っ込めて欲しいとのご希望でした。

神経がある歯であることから削れる量に限界がありご希望に合うか否かが不明であること、仮に神経を取って差し歯にした場合はご希望にある程度沿うことができても歯の寿命は短くなること、また仮に差し歯にしても歯の生えている位置は変わらないため綺麗に並んだ歯並びにはならないことをご説明いたしました。
それでも少しでも八重歯を引っ込めたいとのご本人の意思は固く、まずは歯の出っ張り部分を削ってみてどの程度の出っ張りまで許容できるかを調べるご提案をしました。ご納得が得られる出っ張り状態が、神経を守れる状態なら削った歯質面を保護するためにセラミックのラミネートベニアを歯に貼り付ける方法、歯の神経まで削らざるを得ない場合は神経を取って差し歯になることをご説明いたしました。

ご本人に確認していただきながら少しずつ出っ張り部分を削っていきました。歯の出っ張り感は糸切り歯がハの字に生えていることで強調され、また出っ張った部分が邪魔に感じていると考え、歯の方向をできるだけ垂直に近づけることにしてみました。こうして外見や出っ張り部分の異物感がご本人の許容範囲内に収まった状態は幸いにもなんとか歯の神経を守れる状態でした。
当日に削った面にプラスチックを仮付けして歯質を保護し、その状態で日常生活上の問題と出っ張り具合の確認をしていただきました。
その結果問題がありませんでしたので後日歯型をお取りし、セラミックのラミネートベニアを歯に接着して治療が終了しました。(治療後画像1と2)
このケースのおおよその治療期間 約1か月
おおよその費用 315,000円(2本)
現在の様子 飛び出していたため見た目の悪さと唇を動かすたびに邪魔に感じていたため、長年その存在自体が気になっていた八重歯がすっきりとしたと伺っています。
喋る時など唇が動かしやすくなったとお喜びいただけました。治療後も食生活や日常の問題はみられません。
治療から19年が経過していますが、(その他画像1と2)年齢による歯茎の後退が見られるものの剥がれたり変色するなどの問題はなく自然な美しさは変化していません。
治療のリスク ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 当初虫歯などの病気がない歯を削ることに抵抗がありましたが、ご本人が満足されてお喜びになられているお姿を拝見すると、これもご本人のお役に立てる一つの手段であったと考えています。

セラミックなど詰め物・被せ物の種類や特徴はこちらをご参照ください。