50代男性「右下の銀歯を被せてある奥歯の歯茎が腫れた」抜歯後人工歯根(インプラント)で噛める日常を維持した症例
2025.01.20
治療前
右下の銀歯を被せてある奥歯の歯茎が腫れたとお見えになられました。銀歯の左側の歯茎に腫れがあることがわかります。腫れは色々な原因で起こりますが、いずれにしても歯の内部に問題があります。
初診当時のレントゲンです。根の先に黒く写る病巣があります。
銀歯を外してみると銀歯と歯の境目から内部で虫歯になっており、虫歯で薄くなった歯質が一部割れていました。さらに根の中に穴が開いており、状況と残った歯質の量から残念ながら助けることができませんでした。
治療中
抜歯後インプラントをご希望になられたため、CT撮影して治療の可否と最適な位置や角度、使用するインプラントの種類をシミュレーションし、ご説明しました。
インプラント手術当日のCTで、計画通り治療ができているのか確認します。
インプラントの2次手術が終わり、インプラントに仮の歯を装着しました。続いて1本奥の歯の銀歯を外したところ、同じように銀歯と歯の境目から虫歯(歯茎の境目の黒い部分)が見つかりました。
治療後
手前のインプラントの上にセラミック(カタナ)をネジ止めし、1本奥の右下7番にジルコニアの被せ物を装着した状態です。
治療終了時のレントゲンです。インプラントと骨の接合にも問題はなく日常生活の支障もなくしっかりと機能しています。
年代と性別 | 50代・男性 |
---|---|
はじめのご相談内容 | 右下奥から2番目(右下第一大臼歯・右下6番)の銀歯を被せてある奥歯の頬側の歯茎が腫れたとお見えになられました。(治療前の写真) |
診断結果 | 症状とレントゲン写真から根の感染か歯のヒビ割れを疑いました。 原因を探るため銀歯を注意深く外したところ、歯の一部が割れていました。(写真の赤く出血がある場所) さらに根の一部に穴が開いており、残念ながら助けることができない状態でした。 抜歯を避ける事ができない以上、抜歯後は入れ歯か人工歯根(インプラント)により咀嚼能力を回復し食生活を維持する必要があります。 微細な動きが異なるため手前に入っているインプラントと奥のご自身の歯同士ではブリッジが作ることはできません。 どのような治療法がお望みなのかをご相談したところ、インプラントをご希望になられました。 手前の歯に既にインプラントが入っており、インプラントの噛めることや異物感のないことを体験されているためでした。 |
行った治療内容 | 通常は歯を抜くとあごの骨は痩せて傷として治ります。 しかしそれでは後で入れるインプラントを支える骨の量が減って長期間の維持が不利になります。 そのため抜歯と同時に歯が植わっていた骨の穴に科学的に作られた疑似骨(造骨材)を入れることをご提案し、ご希望がありましたので造骨治療を行い治癒を数か月間待ちました。(治療中のレントゲン写真) その後CT撮影して、インプラントを入れるのに十分な骨の量があることを確認し、理想的な位置と方向をコンピューター上でシミュレーションし手術に臨みました。(治療前CTと治療後CT) 術後2か月程度インプラントと骨の結合を待ち、骨と歯茎の下に植わっているインプラントとに人工歯をつけるための柱部品(土台)を歯茎を切開してつける2次手術を行いました。 傷が治った時点で柱に仮の歯を装着して、噛むことや発音、頬と舌の異物感などの使用感を患者さんと歯科医双方で確認した後、最終的なセラミック人工歯(カタナ)を土台にネジ止めして治療を終えました。 それと並行して銀歯と歯の不適合が確認されていた1本奥の右下7番の銀歯を外し(治療中の写真)、中の虫歯を取り除いた後右下6番と同時に歯型を取って歯にジルコニアの被せ物を接着して治療が終わりました。(治療後の写真) |
このケースのおおよその治療期間 | 約10か月 |
おおよその費用 | 618,880円(造骨治療・インプラント1本+仮歯2本) |
現在の様子 | 抜歯後には歯茎の腫れと痛みは消失しましたが、歯を抜いた後の骨の回復に5ヶ月を要しました。 仮の歯が入り元通りに噛めるようになるまでその間の奥歯が1本ない不便な時期を乗り越えていただき、治療後は異物感もなく昔と変わらぬ食生活と日常を送っておられます。 現在は定期検診とメンテナンスで維持をされています。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります |
クリニックより | 歯を抜くと同時にインプラントを入れるケースもあります。 しかしこの症例のように感染が原因で歯を抜いた場合には残っている細菌によるインプラントの感染を防止するため、また骨の回復状態を確認して最適なインプラントを入れるために抜歯後骨の回復をある程度待つ場合もあります。 前者の治療法は手術が1回で終われまた治療期間が短縮されるメリットがあり、後者は予想ができない骨の回復を確認して治療ができるメリットがあります。 |