20代女性「虫歯になったみたいで噛むと痛い」除菌治療で神経を取らずセラミックを詰めた症例

2025.01.27

治療前

右下奥歯が1か月ほど前から噛んだ時痛みがあり、以前に治療したところがまた虫歯になったみたいだとお見えになられました。プラスチックの詰め物の周囲に黒く見える虫歯があることがわかります。実際の虫歯の大きさは見た目の数倍はあると思われます。

治療前のレントゲンからプラスチックの周囲や下に黒く写っている虫歯が神経近くまで拡大していることがわかります。虫歯をすべて取り除けば神経にまで到達し神経を取る治療が必要になる可能性が高い状態です。

治療後

治療後の状態です。虫歯が内部で大きく広がっており神経近くまで進行していました。除菌治療で神経を取らずに経過を見ていましたが、問題がなかったのでセラミックの詰め物を入れて治療が終了しました。

その他

治療13年後の状態です。写真撮影時に影が写って暗く見えますが、歯の色調とマッチしており機能的にも見た目でも問題なく維持できています。

年代と性別 20代・女性
はじめのご相談内容 右下奥歯が1か月ほど前から噛んだ時痛みがあり、以前に治療したところがまた虫歯になったみたいだとお見えになられました。
診断結果 拝見すると右下7番にプラスチックの詰め物が入っていましたが、その周辺に黒く見える虫歯がありました。レントゲンでは詰め物の下に広がっている虫歯が確認できました。
外見より虫歯は深く神経近くまで進行しており、通常の虫歯治療を行えば神経が露出して神経を取らざるを得なくなる可能性が高いと判断しました。
噛むと痛みがある原因はかむ力で詰め物を押し込む形になって神経を刺激していると考えました。
何もしていない時は痛みやシミはないため、かろうじて神経の感染が免れている可能性もある状態です。
行った治療内容 神経を取り除けば歯の寿命は確実に短くなります。30代と若い年齢で神経をなくせばこれから先の長い人生でいつか歯を失う可能性が高くなるため、リスクはありますが神経を残すために除菌治療をご提案しました。
大半の虫歯は取り除きますが、神経に近い部分の虫歯を取らず、その虫歯の中の細菌を抗生物質等で除菌して神経を温存する治療です。
治療が間に合えば神経を助けることができますが、すでに神経が感染を起こしていれば将来的に歯の痛みが出てその時点で神経を取らなくてはならなくなるリスクがありあます。
確実性は劣りますが、歯の寿命との引き換えならやってみる価値があると考えました。

患者様はご自分の現状をご理解され、リスクがあっても歯の寿命を長くされたいご希望でした。
また虫歯を取り除いた後の穴の詰め物は白い材料で、さらに現在のプラスチックで現状を招いたことから耐久性がある詰め物をご希望されました。
ご希望に沿って除菌治療とセラミックの詰め物に決まりました。
初日に虫歯治療と除菌治療後に仮の歯をお入れしました。
他の治療を挟んで3か月ほど経過を観察しましたが、異常がなかったため歯型をお取りしてセラミックを歯に接着して治療が終了しました。(治療後の写真)
このケースのおおよその治療期間 約3か月
おおよその費用 116,150円(除菌治療と仮歯を含む)
現在の様子 虫歯治療後仮歯の状態で当初のかむ時の痛みは消え、その後も症状の再発は見られていません。
治療後13年が経過していますが、痛みがなく食べる楽しみを満喫され、セラミックの特徴で色合いの変化もなくきれいな状態が保てています。

治療のリスク ・神経の細菌感染は肉眼で判定できないため、治療時に神経に細菌感染が起こっている場合には、治療後に痛みが出て神経を取る治療が必要になる場合があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 神経近くまで進行してしまった虫歯は、細菌感染が神経にまで及んでいるか否かでその後の治療だけでなく歯の寿命に関わってきます。
神経を取る処置(根管治療)を行うと歯が乾燥して弱くなるためです。再発リスクも増加します。
これを回避するのが除菌治療により神経を取らずに保存する方法ですが、必ずしも治療が間に合うとは限らないリスクがあります。

その時点ですでに神経が感染してしまっている可能性があるからです。
この感染を治療時に判断できれば理想ですが、現在の医学ではそれを確実に判断することができないため、除菌治療後に神経が痛んで神経を取らざるを得ない症例がわずかであっても存在します。
この点をご理解いただきたいと存じます。

このようなリスクを回避するには虫歯が進行する前に治療をお受けになる、すなわち症状がない時点で定期的な歯科検診で初期の虫歯を発見することが非常に大切になってきます。
症状がない今だからこそできることがあるのです。