40代女性「左下奥歯がしみる。ものが当たると痛い」根の中の治療(根管治療)後にセラミックを被せて噛める日常を取り戻した症例

2025.03.10

治療前

時折左下奥歯に温かいものがしみ、最近ものが当たると痛いとお見えになられました。結果的には原因は画面右端の左下7番の神経が傷んでいたのですが、この時点では特定できませんでした。

レントゲンでも左下7番に特段の異常は見られず、手前2本は神経のないインプラントであるため、しみるなどの症状は一番奥の左下7番の問題であることが濃厚ですが、決定的証拠がなく疑いだけでは安易に治療すべきではないと考えました。

治療中

しばらく経過観察をしていましたが、歯に微弱の電気を通電させて歯の神経の傷み具合を検査(EPT検査)で異常値が出たため神経を取って根の中の治療(根管治療)に踏み切りました。

治療後

根管治療後には仮歯で日常生活や症状の推移をみましたが問題がなかったため、ご相談の上ジルコニアの被せ物を被せて治療が終わりました。

年代と性別 40代・女性
はじめのご相談内容 時折左下奥歯に温かいものがしみ、最近ものが当たると痛いとお見えになられました。(治療前の写真)
診断結果 拝見すると左下第二大臼歯(左下7番)にジルコニアの詰め物が入っており、噛み合わせの検査や歯周病検査、レントゲン検査(治療前のレントゲン写真)では特別な異常は見られませんでした。
歯に微弱の電気を通電させて歯の神経の傷み具合を検査(EPT検査)しましたが正常の範囲内でした。
しかし手前の2本はインプラントが入っておりしみを感じることがないため、原因の歯は左下7番であることが濃厚です。

原因が特定できない以上安易に歯の治療をすべきではないと考え、他に考えられる原因として食いしばりや噛みしめによる一時的な症状である可能性を疑いました。
そのため昼間の上下の歯を極力接触させないように気を付けることと、お使いであったナイトガード(マウスピース)を調整し経過観察を行うことをご提案しました。
経過観察後も症状が緩和されなかったため、再度EPT検査を行うと歯の神経が傷んでいる数値がでました。歯の神経が何らかの原因で感染したと判断しました。
行った治療内容 左下7番の神経を取り除き内部の感染を治療する根管治療をご提案し了承が得られました。
左下7番の詰め物を取り除き、歯の中の神経が傷んでいることを確認し、根の中の治療(根管治療)を行い、治療途中に症状は消失しました。
歯の内部の感染がなくなった時点で根の中をゴム質の材料で封鎖し根管治療を終えました。(治療中のレントゲン写真)

神経を失くした歯は強度が劣り欠けたり割れるリスクが高くなるため、被せ物で歯の表面を覆う必要があります。
被せ物には保険の銀歯、自己負担のジルコニア、セラミック、金合金があることとそれぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介したところ、ジルコニアの被せ物をご希望されました。
歯の内部にグラスファイバー製土台を入れて補強し、形を整えた後歯型を取ってジルコニアの被せ物を歯に接着して治療が終了しました。(治療後の写真)
このケースのおおよその治療期間 約6か月(経過観察期間を含む)
おおよその費用 142,070円(グラスファイバー製土台と仮歯を含む)
現在の様子 経過観察期間を設けたことと根の中の構造が複雑であったため治療期間が長くなりました。
治療後まだ数か月ではありますが、治療後も食生活や日常の問題はみられません。
今後は検診とメンテナンスで経過を追い続けて参りたいと考えております。
治療のリスク ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 通常は症状を引き起こしている原因が特定できることが大多数です。
長く診療しているとこの症例のように検査上からは原因が特定できないケースに稀に出会います。
原因が特定できない以上軽々に治療をすべきではないと考えており、何らかの検査で異常が発見できるまで経過観察するように心がけております。
歯科治療は一度手を付ければ後戻りができない治療だからです。
結果論からすれば、症状が出た時点で神経を取れば早く症状がなくなり治療も早く終われたケースですが、過剰な治療になる可能性を考えてこのような経過になりました。