どんな人工歯が最適か

日頃診療していて患者さんからどんな人工の歯(差し歯など)がいいのかとのお尋ねをいただきます。人工の歯には保険の銀歯やプラスチック、自己負担になる金合金やセラミックなど症例によりますが多くの選択肢があります。そしてそれぞれの治療法や材料によりメリットとデメリットがあり、またその方にとってのメリットとデメリットも変わってきます。セラミックだからいいとは限らないのでご注意ください。

残念ながら歯にとって最高のものは天然の歯以外には存在しません。そのためどの治療法や材質が最も歯に近いのか、必要な機能や耐久性を果たす物性を持っているか、などを症例によって考えることが大切です。
お口の中の歯はどの歯も同じように見えるかもしれませんが、前歯と奥歯などの生えている位置や、噛む・話すなど機能的な問題、そして見栄えなど審美的問題、虫歯などで受けたダメージの大きさ、歯のどの部分がダメージを受けたのか、などを総合して治療法を考える必要があります。
またどの治療法や材質が歯を削る必要が最小限で済むのか、またどうすれば外れず、壊れず、しっかり噛めて長期間快適な食生活を維持できるのか、治療に要する来院回数や時間、経済的な問題も同時に考慮しなくてはなりません。

こうした項目は症例によって多岐にわたるため、紙面上でどうとお伝えすることはできません。実際にはご希望を伺いながらお口を拝見して状況に応じてご提案させていただきます。そのため、ここでは大まかな特徴についてお話ししたいと思います。

先ほど歯に最も近いものがいいとお話ししました。歯に近いとはいっても、色合いなど見た目が近いのか、歯の硬さが近く他の歯と調和するのか、一回の食事で数百回以上、一年で何万回も噛む力に耐える歯に近い強度と耐久性があるのか、歯と人工歯の境目が少なく虫歯や歯周病に罹りにくい高い精度があって本来は継ぎ目(境目)がない歯に近いのか、など何をもって歯に近いと考えるのかで判断は変わってきます。
そして個人個人歯に求める要素のバランスが異なります。見た目を重視する場合や耐久性を重視する場合など重要とお考えになる要素が違ってくるのです。

例えば歯ぎしりや食いしばり癖があり、強度と耐久性を最も重視したのであれば奥歯では歯に近い適度の柔らかさを持ち壊れにくい金合金が最適でしょう。
しかし金合金の金属色が目立って嫌な場合は強度のあるジルコニアセラミックが第二選択肢となります。こうした癖がなく喋る度に見える場所で天然の歯に近似している色合いや見た目を重視したいのであればガラスセラミックが有望です。
また歯のダメージがごく小さく、噛み合わせに大きく関係していない場所や大きさであれば保険のプラスチックが歯を削る量を最小限に出来るため適しています。
歯の強度は、ご自身の歯の残っている量に依存しています。そのため歯を削る量を最小限にしたい場合は、他の材料に比べて薄く作れる金属材料やジルコニアセラミックが適しています。

このように何がいいのかではなく、その歯にとって何が最適なのか、ご自身の希望や優先したいものが何なのかによって自ずとお勧めする選択肢は決まってきます。歯の治療の方法で悩まれている方は一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。きっとあなたに合った治療があると思います。

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