根管治療(根っこ・歯の神経の治療)

虫歯の進行

虫歯の進行
虫歯は歯の表面から内部へと進行していきます。
虫歯は歯を虫歯から守る鎧の働きのあるエナメル質を最初に破壊します。
この状態をC1(虫歯の第1段階)と呼びます。
さらに虫歯が進行するとC2(画像左から3番目)と呼ぶエナメル質の下の歯質である象牙質を破壊します。
ここまでであれば虫歯治療で進行を阻止できます。
しかしもっと進行すると象牙質を通り過ぎてC3(画像左から4番目)と呼ばれる歯の内部の歯髄(神経)にまで到達します。
さらに進行すれば細菌感染は歯を通り過ぎて、あごの骨にまで達しあごの骨が溶けてきます。(画像左から5番目)
治療により進行を止めない限りC4(画像右端)と呼ぶ根だけの姿になり、最後は歯がなくなるまで進行は続きます。

根管治療とは

根管治療は世間一般的に「根っこの治療」や「歯の神経の治療」と呼ばれています。
根管治療には抜髄(ばつずい)と感染根管治療の2種類があります。
抜髄、感染根管治療の違いは感染が歯髄(歯の神経)に留まっているか否かです。
神経が死んでしまった、感染が根の先からあごの骨にまで及んでいる場合は感染根管治療になります。虫歯と細菌
どちらも歯の内部の感染が主ですので、両者を合わせて根管治療と呼んでいます。
いずれの治療も痛みなどの症状を取り除き、歯を残すために重要な治療です。

根管治療が必要な時の症状

痛い2
歯がしみる、歯が痛い、噛むと痛い、歯がぐらつく、歯茎が腫れる、歯茎が熱っぽいなどの症状が虫歯の進行段階によって出現します。
虫歯の進行途中で一時的に症状が治まる時があり、治ったと早合点される方がいらっしゃいますが、そこは台風の目のようなものでもっとひどい症状が出る前触れとお考え下さい。
受診のいいチャンスを捉えていただきたいと思います。

抜髄(ばつずい)と感染根管治療

抜髄(ばつずい)

根管治療前
抜髄は先にお話ししたC3段階でこれ以上の歯の破壊を止める治療です。
細菌に感染した歯髄(しずい・歯の内部の神経)を取り除き、感染の拡大を阻止することが目的で、歯髄炎と呼ばれる歯髄が炎症状態にある場合に行います。画像の歯の横に開いた穴は虫歯によるもので、虫歯が歯の内部の神経にまで到達しているのがお分かりいただけるでしょうか。こうした場合に抜髄(根管治療)を行います。

健康な歯の内部には神経と呼ばれている歯髄(しずい)という組織があり、体から血液の供給を得て歯の栄養や水分補給をしています。歯は大地から栄養と水分を補給する生きた木のようなものです。
ところが虫歯が進行し虫歯菌が歯の神経にまで侵入すると、痛みなどの症状が出てきます。
神経は弱い組織であるため、一度感染を起こしてしまうと治療でも元には戻せません。もちろん自然には治りません。
そのため、感染を起こした神経(歯髄)もろとも細菌を体外に取り除くことが必要になり、また歯の内部に侵入した細菌を死滅させ、感染の拡大を阻止する治療を根管治療(根の中の治療)と呼んでいます。
歯髄炎の症状はしみる、痛む、食べ物が詰まると痛い、噛むと痛いなどです。病状の進行状態によって症状は変わってきます。

感染根管治療

根充
感染根管治療とは上記歯髄炎がさらに進行して歯髄(歯の神経)が死んでしまった、または以前に根管治療を行った歯の感染の再発の際に根の中に入り込んだ細菌や汚染物質を取り除く治療です。
感染が根の先を通り過ぎてあごの骨の中まで進行している場合(根尖性歯周炎)など歯髄炎より感染の範囲が広いことが多く、細菌の死滅に歯髄炎より期間がかかります。画像の根の先に黒く写る部分が感染によりあごの骨が破壊された跡です。感染が治っていれば数課月から1年ほどで骨は回復してきます。
症状は痛み、噛むと痛い、歯茎が腫れるなどです。

根管治療をしないで放置すれば

抜歯後レントゲン
歯の内部にまで進行した細菌を根管治療をしないで放置すれば、感染の拡大が起こり先ほどお話ししたC4に進み、最後には歯を失うことになります。その間に細菌感染が隣の歯やあごの骨に及ぶとそれらも破壊され、損傷や喪失まで起こります。
また細菌が血流によって全身に運ばれれば全身的な重篤な感染症を引き起こすこともあります。
こうなってしまえばもう歯科では対応できず医科の範疇に入ります。
細菌の入り口が小さな歯1本であっても決して侮ることはできないのです。

根管治療のメリット・デメリット

根管治療のメリットは細菌感染の拡大を阻止し、
治療により歯を失うことなく再度噛めるなどの歯本来の機能を取り戻すことです。

デメリットは神経(歯髄)の存在により生きた歯であったものを取り除いて死んだ歯になることです。
神経を失うと歯は血流を失い乾燥してもろくなり、ヒビが入ったり割れたりするリスクが増加します。
そのため統計上神経を失うと歯の寿命は5~10年短くなってしまいます。
こうしたデメリットがあっても、これ以上感染を拡大するのを阻止し歯を残すための苦渋の治療です。
感染が拡大すればその歯を失うだけでなく周囲の歯や骨に取り返しがつかないダメージを与えてしまうからです。

根管治療時の痛みや症状

治療前の痛みなどの症状は治療が進むにつれて軽減してきます。
感染の広がり度合いや重篤な感染症を起こしているか否か、全身的な免疫力や体力などによってもその軽減スピードが変ります。
治療中の痛みは治療前の症状や病状にも左右されますが、投薬や治療により概ねコントロールが可能です。
治療中左上
ただし病状によりフレアーアップと呼ばれる治療後に痛みがでることが稀にあります。
治療が順調に進行していくと痛みなどの症状は消えますが、まだ歯の内部には感染が残っているため治療の中断は禁物です。
細菌感染がなくなるまで治療を継続することを強くお勧めします。
今以上の痛みや腫れ、発熱などが起こる可能性があり、歯を失う、隣の歯やあごの骨が破壊されるなどが起こり得るからです。

根管治療の流れ

根管治療シェーマ2a
抜髄など治療中に痛みがある根管治療は麻酔を行い無痛状態で行います。
根管治療シェーマ2b
治療中に虫歯の進行や根の中が汚染されないために虫歯や汚染された物質を取り除きます。
同時に根の中に器具を入れるための通路を歯を削って作ります。
根管治療シェーマ2c
根の中の感染物質(感染した神経や汚染物質)を細い針のようなもので取り除き、根の中を消毒します。
一度の消毒では細菌は死滅しないため何度か繰り返す必要があります。
この時点で痛みなどはほぼなくなりますが、まだ根の中には細菌が残っています。
そのためここで中断してしまうと歯の内部の感染が拡大しさらに重篤な状態になりますのでご注意ください。
根管治療シェーマ2d
根の中の細菌が死滅した時点で再度細菌が内部に入らないように根の中(元々神経が入っていた歯の中の管)をゴム質の材料で詰めて封鎖します。
これで根管治療は終了となり、以降は次の「根管治療後の治療」に移行します。

根管治療後の治療

被せる治療1
神経を失った歯は血流がなくなるため乾燥して強度が落ちて弱くなりヒビや割れが起こりやすくなっています。
その強度が落ちた歯の補強のための土台(コア)を入れるために歯の形を整えます。
被せる治療2
土台(コア)を歯に接着します。
コアには金属製、金属ネジとプラスチック、グラスファイバーなどの種類があります。
コアが入り補強ができたら被せ物に適した形に歯を整形します。
この状態で仮の歯を入れて、かみ合わせ、歯の形、大きさなどを日常生活上の不便や問題がないかしばらく経過を観察します。
被せる治療3
仮の歯で問題があればその時点で修正し、問題がなくなれば最終的な被せ物の歯型を取ります。
被せる治療4
出来上がった被せ物を歯に接着してすべての治療が終了します。
これで歯を失わず、また歯を気にすることなく日々の食生活を送ることができます。

関連記事

根管治療
神経まで感染が進行した虫歯とその治療
根管治療(歯の根の治療)後の治療法の選択で歯の寿命が変わる!
銀歯が痛い原因と対処法
60代男性「右上の歯がしみて痛い」痛みのない食生活を取り戻した19年間の症例
30代男性「左下奥歯がしみて歯が痛い」親知らずを抜歯し、手前の歯の根の治療(根管治療)後にジルコニアを被せた症例
40代女性「右下奥歯の歯茎が腫れた」根の中の治療後セラミックを被せた症例
50代男性「上顎前歯に痛みがある」根の治療後にセラミックで治療した症例