60代男性「右上の歯がしみて痛い」痛みのない食生活を取り戻した19年間の症例

2023.12.11

治療前

虫歯治療前
右上奥歯がしみて痛いとお見えになられました。奥歯には銀歯が3本入っています。歯の付け根のえぐれもありますがしみることはあっても痛みまで出るとは考えにくいため、銀歯の周囲の虫歯が考えられます。

治療前レントゲン写真

治療前レントゲン
レントゲン撮影から画面左端の右上6番に詰まっている銀歯の下が黒く写っている虫歯があることが判明しました。虫歯が大きいため神経を刺激してしみや痛みの症状が出ていると考えられます。

治療中(根管治療後)

根治後
残念ながら虫歯の進行から神経を助けることができず、神経を取る治療(根管治療)を行いました。レントゲンで白く写っている細長い部分が元神経が入っていた管を感染除去と消毒後に薬剤で詰めたものです。

2回目の治療前(治療13年後)

治療後12年
当時発売されたばかりの新しい材料であるハイブリッドセラミックを被せて治療を終了しました。手前の2本の銀歯も同じ材料で詰めなおしました。
この画像はその治療から13年後です。
食いしばりと噛みしめ癖をお持ちの方でしたのでハイブリッドセラミックとご自身の歯に摩耗が見られます。噛み合わせを維持するためには過剰な摩耗を止めなくてはなりません。もうすでに一番奥にあった第二大臼歯(右上7番)を失っているためこの歯は最後の砦です。

2回目の治療後

2回目治療後
右上6番だけを金合金に入れ替えた状態です。金合金は色合いはよくありませんが、ご自身の歯の摩耗に調和する適度な硬さがあり、耐久性が高く、歯との適合がよいため虫歯になりづらい特徴があります。

3回目の治療後

3回目の治療後
2回目の治療の翌年(最初の治療から14年後)に右上4番の歯と詰め物に摩耗が見られたため、同じく金合金の詰め物に入れ替えました。

3回目の治療4年後(1回目の治療から19年後)

現在
最初の治療から19年後の状態です。嚙みしめ癖等により日常的に強すぎる力を歯にかけておられますが、金合金はそれに傷だらけになりながらも踏ん張っています。

 

年齢と性別 60代・男性
ご相談内容 右上の歯(右上6番)がしみて痛いとお見えになられました。
カウンセリング・診断結果 拝見すると右上6番に銀歯が詰まっており、その下に虫歯が確認できました。レントゲンでは銀歯の下に黒く写る虫歯がありました。しみや痛みの症状があることから歯の内部の神経にまで細菌感染し歯髄炎を起こされていると判断しました。放置すればさらなる痛みや進行して骨の中にまで感染が及び、長期的な進行により歯の存続が危うくなる恐れがあります。歯を長持ちさせるために現時点で細菌感染の治療と進行を止める必要があると考えました。(治療前レントゲン)
行ったご提案・治療内容 銀歯を外し虫歯除去と共に歯の内部の治療(根管治療)を行い、歯の内部が無菌化できた時点で被せものを入れて再度この歯で噛むことができる所までの治療をお勧めしました。また今回6番の銀歯の下に虫歯ができた経緯から、隣の4・5番の銀歯も入れ替え治療は3本とも白い詰め物や被せものにされたいとのご希望がありました。今から19年前は現在のようなセラミックはまだ発売されておらず、当時は白い治療となると保険のプラスチック、古いタイプのセラミックしか選択できませんでした。
プラスチックは摩耗しやすく耐久性がないため他の歯のすり減り状況から食いしばり等の過度な力がかかっている可能性が高いため積極的にはお勧めできません。また古いタイプのセラミックは耐久性は高いのですが硬すぎることと過度の強い力や衝撃で欠けたり割れるリスクがあります。そこにハイブリッドセラミック(プラスチックの欠点をカバーするためにプラスチックにセラミックを混ぜたもの)が発売され臨床応用され始めました。使用経験がなく未知の部分はありますが、プラスチックより耐久性が期待できるためご紹介したところ、ご希望されました。治療方針へのご理解と同意が得られましたので治療に着手しました。最初に根管治療を1ヶ月ほど行い仮の歯をお入れしました。次いで手前2本も銀歯を外して仮歯に入れ替えました。仮歯でしばらく様子を見ていましたが問題がなかったため、歯型をお取りしてハイブリッドセラミック(エステニア)を歯に接着して治療が終了しました。治療終了から13年後に右上6番のハイブリッドセラミックに摩耗が見られ、噛み合わせを維持することが困難になってきました。食いしばりや噛みしめ癖がおありであり通常より強い力を慢性的にかけられていることと、ハイブリッドセラミックは発売当初の謳い文句とは違って期待したほど摩耗に強くないことが臨床結果から判明したことが原因でした。
こうした摩耗に抵抗しつつ、他の歯と協調して摩耗するという一見相反することを実現できるのは金合金しかありません。丈夫なため歯を削る量も最小限に抑えることもできます。本来は白い歯をご希望でしたが、ご相談の結果耐久性と対摩耗性から金合金をご希望されました。ハイブリッドセラミックを外し、歯型をお取りして金合金を歯に接着して2回目の治療が終了しました。1回目の治療から14年後、2回目の治療から1年後に右上4番のハイブリッドセラミックと共に歯のすり減り(摩耗)が認められ、歯の内部の歯質(象牙質)が露出してきました。歯を守る働きのある硬いエナメル質が摩耗でなくなり軟かい象牙質が露出することは摩耗が加速し噛み合わせが狂いやすく、虫歯にもなりやすいことをご説明しました。
こうしたご説明をご理解いただき同意されたので、4番だけを歯型をお取りして金合金に入れ替えました。(治療後の写真)
治療期間 1回目の治療約2か月
2回目の治療約半月
3回目の治療約半月
治療回数
費用目安 1回目の治療243,000円(仮歯を含む3本)
2回目の治療113,920円(仮歯を含む1本)
3回目の治療102,960円(仮歯を含む1本)
術後の経過・現在の様子 治療後も食生活や日常の問題はみられません。前後の金合金に守られているのか、右上5番は今でも19年間維持できています。
最初の治療時から19年が経過していますが、当時60代のこの方は現在80代になられています。他の部分も含めて入れ歯を必要としない食生活を維持され、毎日おいしく食べることができているとお喜びいただいています。これからもご一緒に維持して参りたいと思っております。
治療のリスクについて ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 噛みしめや食いしばり癖がおありで、かつ右上7番を失っている上に神経がないもろい歯という3重苦にも関わらず、右上6番の表面に無数の傷を負いながらも歯や根が割れることなく機能し続けているのは金合金を選択されたおかげだと考えています。銀歯は硬く摩耗し辛いためこの3重苦で加わった力を吸収しきれず、余った力が歯や根にかかり割れるケースをよく目にします。

治療の詳細は下記をご覧ください。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖について
歯同志の接触で痛みなどの症状がでる、またその対処法とは
金合金(PGA)など詰め物・被せ物の種類や特徴