歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖

歯ぎしりは異常な歯の接触の総称であるブラキシズムの一種です。ブラキシズムは睡眠時や起きている時を問わず、歯を接触させた状態で歯を力強く動かす、歯同士をこすり合せる、噛み締めるなどをする行為です。食事以外で歯を強く接触させる悪い習慣です。歯同士の当たり方から後で述べるグライディング、クレンチング、タッピングに分類され咬合神経症とも呼ばれています。

目次

ブラキシズムの弊害

ギリギリ、キリキリと音を立てるには、相当強い力で歯同士をこすりつけなければ出せないことをご存知でしょうか。起きている時に試してみてください。小さな音を出すのが精一杯です。なぜなら、そんなに強い力を出せば歯や体が壊れると脳が無意識にブレーキをかけるからです。夜中は脳も寝ているのでブレーキが利かないために音が出せるほどの力が入れられるのです。その結果、歯がかけたり極端な摩耗、歯を支える骨の異常、ひどい場合には歯が割れたり、ポッキリ折れる場合もあります。
また睡眠の問題やこの異常な歯の摩耗が虫歯発生の一因に、強い力によって詰め物や被せ物が取れたり、歯を支える歯肉やあごの骨への障害(歯周病)、咀嚼筋の異常な緊張によって顎の関節の異常(顎関節症)などを起こすことがあります。
自分はギリギリ、キリキリと音を出していないから無関係、と安心できないことをご存知でしょうか?歯ぎしりには音を出さないものがあるので要注意です。

ブラキシズムの症状

歯と歯茎の境目あたりの歯の付け根がえぐれるくさび状欠損という状態になったり、虫歯でもないのに冷たいものがしみる知覚過敏や歯の痛み、口の中の歯を支える部分のあごが昔より出っ張ってくる骨隆起ができたり、朝起きるとあごの周囲の筋肉や関節に異和感や疲労感がある、肩こり、偏頭痛、アゴの疲れなどの顎関節症の症状があれば要注意です。

ブラキシズムの種類

グライディング

歯ぎしり=グラインディングで睡眠時に多くみられる上下の歯同志を力強くこすり合わせる運動のことです。歯ぎしりの力は食べ物を噛む力より強い上に長時間続くため、歯と周囲の組織に強烈で異常な力がかかります。
最初にすり合わせる歯は、犬歯(糸切り歯)か、第一小臼歯(犬歯の隣りの歯)がほとんどですが、歯のすり減りが進むと他の歯にも影響が出てきます。この異常なすり減りが歯と噛み合わせトラブルの原因になります。
歯ぎしりを放置すると、噛むために使う筋肉が異常に緊張して顎関節症を引き起こす場合があります。
歯同志がこすれ合う音が出るほど歯に異常な強い力が働くため、歯が欠ける、歯が異常に摩耗する、歯が真っ二つに割れる、歯の周辺組織の破壊の結果として歯周病の発病などの現象が起きます。

硬いものを思いっきり噛んでも歯ぎしりをした時の様なギリギリと音はなりません。音が鳴るということはそれをはるかに上回る強大な力がかかっている状態です。日中起きている時は、脳は覚醒していますので、歯が壊れるようなこんな強い力を出すことにブレーキをかけますが、就寝時は脳が休んでブレーキが利かなくなっているためです。

その原因は、噛み合わせに関係のある筋肉の緊張やけいれん、自律神経の失調、歯並びの悪さ、ストレスなどが考えられていますが、まだ歯ぎしりの原因はよくわかっていません。就寝時に無意識で行う以上脳が関わっている、歯並びやかみ合わせの不調和があるなどが最有力です。事実ストレスを感じると歯ぎしりの増加や発生が見られるので精神的な関連もあると思われます。

歯ぎしり予防に最も効果的なのは熟睡です。脳と精神を休ませ回復させることです。
またストレスの低減も効果的です。ストレスの原因が分かっていれば、対策は取りやすいですが、環境の変化、気候などによっても人間はストレスを感じるため、原因が目に見えない事もあります。
この他には歯並びの矯正治療や、かみ合わせの修正、対症療法ではナイトガードと呼ばれるマウスピースを就寝時にお口にはめて寝ることで歯同志が直接接触するのを防止し、歯の損傷を軽くする方法があります。

クレンチング

歯ぎしり(グラインディング)とは異なり、上下の歯同志の動きは小さくとも強い力で噛み合わせる運動のことです。食事以外の時間に歯と歯を接触させている状態であり、歯を食いしばっている状態のため「食いしばり」とも呼ばれます。
歯ぎしり同様、歯の負担になり歯の寿命を短くする原因になります。
歯ぎしりと違って夜間はもちろん、日中も多くの人が無意識に食いしばっています。歯の寿命を確実に短くするものであっても歯ぎしりのような音が出ないため本人も周囲の人も気が付かない場合がほとんどです。
歯や歯茎、あごの関節などに症状がでて初めて歯科医院を訪れるケースが多いのが実情です。

原因や発生メカニズムはよくわかっていませんが、グラインディングと同様に考えられています。対処法も同じです。ただし就寝時のグライディングと違ってクレンチングは日中行うため、無意識の行動とはいえそれに気づけさえすれば被害の減少が可能になります。

タッピング

食事以外で上下の歯同志をカチカチと噛み合わせる動作です。
頻度や力の強さにもよりますが、一般的にはグラインディングやクレンチングより障害は小さいと考えらえています。日常臨床でも殆ど見かけません。稀なケースと言えます。

上下の歯を接触させる癖は歯を壊す

歯にトラブルが起きるのは強い力がかかった時だけではありません。上下の歯を接触させる癖のように弱い慢性的継続的力でも起こります。軽く歯を接触させているだけでもその時間が長ければ歯や歯茎、あごの関節部の痛みにつながることがあります。
この癖は貧乏ゆすりと同じく本人の自覚がないことが解決を難しくしています。
また歯ぎしりの様に歯の痕跡やレントゲン写真での異常が見られないことが多いため、他院で歯と歯茎には問題がないと診断されて来院されることが時折あります。
詳細は「歯と歯茎に問題がないのに出る痛み」をご覧ください。

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