50代女性「以前の歯の治療後から奥歯のかみ合わせが悪くなった」歯周病治療とインプラントを併用したかみ合わせ治療後にセラミックに入れ替えた症例

2023.11.16

治療前

治療前上顎治療前下顎
以前の歯の治療後から奥歯のかみ合わせが悪くなったとお見えになられました。
拝見すると奥歯には銀歯が多数入っており、また全体的なかみ合わせのバランスが悪い状態です。

治療前のレントゲンと歯周病検査結果

治療前レントゲン治療前歯周病検査結果
検査からはお口全体に重度の歯周病があり、複数の歯に歯を支える骨の吸収(骨がなくなっている)ことが判明しました。歯周病検査表の赤丸は出血箇所、数字の4以上が進行した歯周病の箇所です。ほとんどの歯が歯周病に侵されており、それも重症であることがわかります。かみ合わせと歯周病、卵が先か鶏が先かのお話しと同じですが、このまま放置すれば早晩大きな入れ歯を入れることになるのは明らかです。

治療後

治療後上顎治療後下顎
お会いするのが遅すぎました。右下7番、左下7番、右下6番の3本の歯は助けることができず抜歯になりました。それと並行して徹底的な歯周病治療を行い、抜歯をした左下6番と右下6番にインプラントを入れて噛む力が一部の歯に集中することを避けました。
そして銀歯をすべて外して仮の歯でお口全体のかみ合わせのバランスを取り、最終的にはセラミックを入れて治療は終了しました。

治療後のレントゲンと歯周病検査結果

治療後レントゲン治療後歯周病検査結果
上顎の一番奥の歯はないままです。最低限のインプラントの本数により日常の「噛める」を実現しました。
最初にあれだけ赤丸や4以上の歯周ポケットがあったものが、治療後には全く問題がないレベルで維持できています。これは治療だけでなく、当初に歯周病の原因と結果をお話しし、患者様がご自分の身体を愛おしく、そして大切にしていこうと思われた結果です。

治療18年後

治療18年後上顎治療18年後下顎
治療から18年が経過していますが、治療当時の状態を維持されています。

治療18年後のレントゲンと歯周病検査結果

治療18年後レントゲン治療18年後歯周病検査結果
レントゲンと歯周病検査でも異常はなく、いい状態をキープできています。
治療後は定期歯科健診とメンテナンスに継続してお通いで、今後もご一緒に維持に努めて参りたいと考えています。

年齢と性別 50代・女性
ご相談内容 以前の歯の治療後から奥歯のかみ合わせが悪くなったとお見えになられました。
カウンセリング・診断結果 歯周病検査の結果お口全体的に歯周病があり、また全体的なかみ合わせのバランスが悪い状態でした。レントゲン写真からは右上7番、左下7番、右下6番の根を支えている骨に黒い影が写っており、歯周病で骨が破壊されていることがわかりました。
歯周病検査値は歯周ポケットが1から3mmで出血や膿が出ないことが正常範囲ですが、お見えになられた当時の検査では黄色く塗られている4mm以上の箇所や赤い〇が書かれている歯茎からの出血、青い〇が書かれている歯茎から膿が出ている箇所があり、相当重症であることが検査値からわかります。
この状態であればかみ合わせに加えて歯周病からもかむことへの問題が出ることに納得ができます。
お口全体の歯周病治療と重症化している3本の歯を抜歯して感染の拡大を防ぐ必要があると判断しました。(治療前の歯周病検査表)
行ったご提案・治療内容 最初に歯周病治療を行いながらご自宅でのケア方法の見直しが必要なことをご説明し、また奥歯の銀歯のかみ合わせを全体的にバランスよくかめるように修正することもご提案しました。またその治療と並行して骨が破壊されて保存不可能な右上7番、左下7番、右下6番の3本の歯を抜歯することでこれ以上被害が拡大することを防ぐ必要があることをご説明いたしました。歯だけでなくインプラントも含めたすべてに歯周病は関わりがあります。治療の選択肢だけでなく治療結果が長続きするかどうか、歯の寿命がどう変わるのかが歯周病をどうコントロールできるかに依存しているからです。

抜歯後のかむ機能回復には、入れ歯、ブリッジ、インプラントが選択できることをご紹介し、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご説明いたしました。ただし現状の歯周病が進行した状態ではインプラントは感染面においてお勧めはできないこと、しかし歯周病が十分にコントロールできる状態になれば可能になる旨をお話ししました。
ご本人はできるだけ歯を残したいため、他の歯に負担をかけずよくかめる食生活をお望みでしたので、ご相談の上歯周病の状況が許せばインプラントを入れることになりました。ただし右上7番は下の歯とのかみ合わせから今回は見送ることになりました。

治療方針への同意が得られましたので、治療計画を立ててご説明したところご希望されました。
歯周病治療と並行しながら3本の歯を抜歯し、その頃には歯周病治療が終わり右下7番以外の歯は正常値に戻りました。当初歯周病が進行して黄色く塗られていた箇所や赤い〇がついていた歯茎からの出血箇所が激減しています。(治療前と治療中の歯周病検査表の比較)
次いで抜歯をした左下6番と右下6番にインプラントをお入れしました。インプラント手術時に骨が不足している部分に骨の成分と近い人工材料を入れる造骨治療を行いました。インプラントと骨がくっつくのを待つ間に左下5番、左上6番、右下7番の根の中の治療(根管治療)を行いました。
すべの治療予定の歯を仮の歯に置き換えて日常の食生活を含めた日常生活に支障がないか、当初お困りであったかみ合わせの問題がないかを確認しました。その結果問題がありませんでしたので、順次歯型をお取りし最終的な詰め物や被せ物を歯に接着して治療が終了しました。
当時は今のようなセラミックがまだ開発されていない時代でしたが、今ならセラミックを検討したであろう症例です。
具体的には右上5・6番と左上6番、右下7番はハイブリッドセラミックの詰め物(エステニア)、左下5・6番と右下5・6番は金属の上にハイブリッドセラミックを乗せた被り物(エステニア前装冠)の合計8本でした。(治療後の写真と歯周病検査表)

治療から半年後に右下7番の歯茎が腫れたと来院されました。以前に歯周病の懸念があった歯でしたが、歯の内部まで感染が及んでいたため、詰め物の上から穴を開けて神経をお取りし内部の消毒を行う根管治療を行い症状がなくなったのを確認後詰め物に開けた穴をプラスチックで埋めて現在に至っています。

治療期間 約1年半
治療回数
費用目安 1,720,120円(インプラントと造骨治療2本、仮歯を含む8本)
術後の経過・現在の様子 当初のお困りであったかみ合わせの問題はなくなり、治療後も食生活や日常の問題はみられません。6か月ごとの定期健診と3か月ごとのメンテナンス(クリーニング)を欠かさずお受けになられており、歯周病もコントロールできていていい状態を保てています。(現在の歯周病検査表)
8年後の写真、18年後の写真を見ても多少の時間の経過を感じますが、最初の治療以来歯を失くすことなく正常に機能し続けています。
以前は度々歯に問題ができて治療に通っていましたが、今は歯を守り綺麗になるために通ってらっしゃいます。
治療のリスクについて ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
クリニックより 当時50代であったこの方も今は70代となられ、食べることの喜びの大きさが増しておられることだと存じます。食べることの基本はかめることです。19年前に歯周病が原因で歯を失われましたが、歯周病もコントロールができていて歯の本数が当時から減っていません。歯の状態から左上6番と右下7番に不安を抱えていますが、患者様と一緒に使える所まで行きましょうとお話ししております。今後もケアを続けて参りたいと思っています。

 

歯周病初期治療後の歯周病検査結果

歯周病治療後
かなり改善してきましたがまだ右下7番に膿が出ており、左の上下に赤〇の出血部位が残っています。

インプラント治療前後のレントゲン

インプラント前のレントゲンインプラント後のレントゲン

治療8年後の写真とレントゲン

治療8年後上顎治療8年後下顎治療8年後レントゲン