神経まで感染が進行した虫歯とその治療

虫歯の分類

虫歯にも色々と進行程度があるため、全ての虫歯が治療の対象となる訳ではありません。
虫歯の進行程度により大きく分類して3つの段階があります。
・初期の虫歯
・神経まで感染が進行していない虫歯
・神経まで感染が進行した虫歯

初期の虫歯を除き進行してしまった虫歯は放置すると進行の一途をたどるため治療で進行を止めて歯を守る必要があります。
今回は「神経まで感染が進行した虫歯」の治療に関してご説明いたします。
「初期の虫歯」、「神経まで感染が進行していない虫歯」に関しては文末をご覧ください。

神経まで感染が進行した虫歯とその治療


この状態は虫歯が歯の表面だけに限局していた初期のC1を過ぎ、歯の内部の歯質(象牙質)まで進行したC2、さらにそれが進行して歯の内部の中枢である神経にまで感染が進行した状態でC3と呼ばれています。仮に見かけ上歯の外形が保たれていたとしても、歯の内部や根に中に、場合により根の先の骨の中まで細菌感染が進行しています。
歯にとっては存続の危機です。
何とか延命するために虫歯の治療と歯の内部や根の中のが必要ですが、治療しても元々の歯の強度に回復することはできず、残念ながら歯の寿命はかなり短くなることが統計上わかっています。
上の図をご覧いただくと根の中には枝分かれした神経がありますが、実際にはもっと複雑になっているため治療を行っても歯科の中でも再発率が高いものになっています。
根管形態
実物の神経を染色した(黒い部分が太い神経とその枝)画像はご覧の通りです。
太い神経は治療できても、枝には器具が入らず薬剤による消毒を行うことしかできませんので、細菌が残る可能性があることが再発率が高い原因です。
また神経を失った歯は血流がないため、乾燥して歯質がもろくなり、割れたりヒビが入りやすくなるリスクがあります。
治療後には被せ物が入って食生活を維持できることを治療の目的となりますが、このリスクなどによりまれに再治療や被せ物が外れる、最悪の場合歯を失うこともあります。

見た目の状態


歯に深く大きな穴が開いており、食べ物がよくつまります。

症状

インプラント痛い
痛みで眠れないと駆け込んでこられる方がいらっしゃる一方で無症状の方もおられます。
これは病状の進行レベルによるもので、冷たいものや熱いものに敏感になったり、ものがつまると痛い、噛むと痛い、四六時中痛みがあるなど様々な症状が進行レベルによって起こります。
そのため一時的に痛みなどの症状が治まったから治ったと勘違いされる方がいらっしゃいますが、それは台風の目の穏やかさであり実はその時が治療のチャンスだとお考え下さい。
激烈に痛む時は麻酔が効かず治療できないこともあるためです。

治療法

根管治療


歯の感染した神経を取り除き、歯の内部と根の中に入り込んだ細菌を死滅させる治療(根管治療)を行います。
先ほどお話しした歯の神経の構造上、歯科治療では主要な太い神経部分しか器具が入らないため、枝部分に入り込んが細菌は薬剤により時間と期間をかけて行う必要があります。
先ほど述べたようにじっくり治療に取り組んでも再発のリスクがあるのですから、症状がなくなった、軽減したと安心するのは早計で、そう簡単には細菌感染は治りません。
一般的には毎週の通院で1か月ほどの期間がかかりますが、根気よく通院をお願いいたします。
歯の根の内部の感染が治まると、根の中をゴム質の材料で満たして再感染を予防します。

土台(コア)の治療

ファイバーコア
神経を失くした歯は先ほど述べたように強度不足に陥っており、割れたりヒビが入るリスクを抱えています。
少しでもリスクを減らすために元神経が入っていた歯と根の内部にk土台(コア)を入れて補強します。
一般的には金属製、金属ネジとプラスチック、グラスファイバーが用いられていますが、歯と共にしなり歯が割れにくいグラスファイバーが最も優れています。

被せ物を入れて機能と見た目を改善する

前歯補綴
根管治療が終わった歯に土台を入れた後、被せ物に適した形に歯を整形します。
その状態で仮の歯を入れ、被せ物の製作期間中に歯が移動たりかみ合わせが狂わないようにします。
また仮歯で最終的な被せ物の形や大きさ、噛めるかなどのテストを一定期間行うこともあります。
歯型を取って技工所で被せ物を作り、出来上がってきた被せ物を歯に接着して治療は終了します。

さらに感染が進行した虫歯とその治療


歯の頭部分の歯質が崩壊してなくなり根だけ残っている状態で、C4と呼ばれています。
治療が間に合うか否かの瀬戸際であり、助けられないケースも多々あります。
仮に助けられたとしてもここまでボロボロになった歯は、C3でお話しした再発リスクに加えて被せ物が外れやすい、歯が割れたり折れるなどリスクをC3以上に多く抱えています。
何とか工夫をして延命し、そのリスクが露呈するまで日常生活を支えてくれれば本望だとお考えいただきたいと思います。

見た目の状態

治療前
歯が表面上ほとんど残っておらず、歯ぐきから一部だけ歯が覗いている状態です。
場合によっては歯茎にほとんどが覆われているケースもあります。

症状


歯の頭部分がないため、その場所では噛めない、食べ物がつまりやすい、腐敗臭がする、膿が出るなどの症状が出ることがあります。
激しい痛みが出る場合もあれば、無痛の場合もあり、それらが不定期に交互に発生する場合もあります。
痛みと共に歯茎が腫れる、発熱するなどの症状は歯から入った細菌が根の先まで到達し、感染拡大と増悪を繰り返した結果ですのでかなり重症だとお考え下さい。
その細菌が血流にのって全身にばらまかれることもあるのでご注意ください。

治療法

治療後正面
歯を助けることができなくて抜歯になる場合と、今回はかなり弱った状態であっても無理をして何とか延命できる場合があります。
延命できる場合の治療法は先に述べたC3の神経まで感染が進行した虫歯をほぼ同じですが将来的な経過は劣ります。

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