50代女性「時折痛みと噛むと痛い」歯の根の治療(根管治療)後にセラミックに入れ替えた症例
2023.10.03
治療前
治療中
治療後
治療3年後
年齢と性別 | 50代・女性 |
---|---|
ご相談内容 | 以前に他院でセラミックを被せた歯に最近右下奥歯に痛みがでてきたためお見えになられました。 外見上はきれいなセラミックが入っていますが、時折痛みと噛むと痛い症状がありました。被せたセラミックの噛み合わせに問題がないことから歯の内部(根の中や骨の中)の問題が症状を生んでいる可能性をご説明しました。(治療前写真) |
カウンセリング・診断結果 | レントゲン撮影により、右下奥から3番目の歯(右下5番)の根の先に黒い影がみつかりました。根の中に治療の結果白く写るはずの根充剤が入っていません。詳しい経緯はわかりませんが以前に受けた根管治療が不十分であったため再感染を起こしていました。痛みの原因はこの再感染によるものでした。(治療前レントゲン写真) 一般的には見た目の美しさに目が行きがちですが、いくらきれいなセラミックが入っていてもそれを支える歯自体に問題が生じれば長持ちしません。根の中の治療は地味であまり評価されませんが、全ての治療の基礎になる治療で軽視すべきではないと考えています。 |
行ったご提案・治療内容 | かぶっているセラミックを外し再度根管治療を行い、根の中を無菌化した後に根の中全体を緊密に薬剤で埋め(根管充填)歯の補強を行った後に人工歯で被せ直すことをご提案しました。 新たに被せる人工歯は保険の銀歯、これまでと同様のセラミックが選択できます。他には白いプラスチックの被せものを存在しますが、すり減りなどの強度不足が著しいため噛み合わせを維持できないことからお話の上選択肢からは除外しました。痛みの原因を解消するための根管治療と口を開くと容易に人の目に触れる場所の歯であるためセラミックによる人工歯をご希望されました。 また今回の痛みの原因が以前の根管治療の不足であることから、手前の歯の根管治療もやり直して同じセラミックで治して欲しいとのご希望でした。奥から3番目の歯の被せものと歯の内部に入っていた金属製土台を除去し根の中の細菌が死滅するまで根管治療を行い、再感染防止のために根の中をゴム質材料で封鎖し根の治療を終了しました。続いて根の中にグラスファイバー製土台を入れ、整形後仮の歯をお入れしました。手前の歯も治療後希望になられたので続いて同じ治療を行いました。 この時点で根の先の黒く写っている病巣は縮小傾向にあります。(治療中レントゲン1・2) その後症状の推移を確認して歯型をお取りし、セラミック(カタナ)を噛み合わせ調整後接着し治療全てが終了しました。(治療後の写真) |
治療期間 | 約2か月 |
治療回数 | |
費用目安 | 327,040円(仮歯とグラスファイバー製土台を含めて2本で) |
術後の経過・現在の様子 | 痛みと噛むと痛い症状は根管治療時には消退したまま以降出ておらず、食生活は以前の状態に戻っています。食事で噛んで痛みがない、病気になって初めて普段は当たり前のことのありがたさを知ることは大切なことだと考えています。その思いをこれからのその歯や他の歯に生かすことができると考えるからです。 治療後は病気の再発予防と早期発見のためメンテンナンスと歯科健診にお通い頂けています。治療後3年経過時点でも症状の再発もなくセラミックの美しさも保てています。(治療3年後の写真) |
治療のリスクについて | ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります ・装着に際し、天然歯を削る必要があります |
クリニックより | 根の中は非常に複雑で個人差が大きいため細菌が潜む場所が無数にあるといわれています。一般的な根管治療ではその一部しか治療できないことが多く、歯科分野での治療の成功率が最も低いものの一つになっています。場合によっては治療できないケースがあるほどです。 治療により一時的に症状がなくなっても完全に細菌が死滅しない可能性があるのです。細菌を神経にまで侵入を許してしまえば現時点では完全な治療はないとお考え下さい。そのため当院では再発を可能な限り低くするため、除菌用の複数の薬剤を使うことや治療期間を通常より長く設定しています。最後の写真とレントゲンは治療後3年が経過しています。当初黒く写っていた根の先の病巣はなくなっています。これは歯科医が治したのではありません。歯科医は体が治せるところまでのお手伝いをしたに過ぎず、治したのはご自身の体です。症状が出た時には歯科の病気はかなり進行したステージに入った後です。自分で気づいた時は遅いのです。さらに歯科治療で一見治ったかのように見えますが、機能や審美をある程度回復するにすぎません。歯科治療では元通りには戻すことはできず、治療を重ねると歯の寿命は確実に短くなっていきます。元通りにならないのであれば、ご自分で気づかない内に早期に病気を発見して被害を最小限に抑える、または病気にならない自分になる、その両方が非常に大切だと考えています。 歯を守り豊かな食生活を維持するためには何らかの努力が必要です。日々の歯磨きに加えて当院では6か月ごとの定期歯科検診と3か月ごとのメンテナンスをお勧めしています。 |
詳細は下記をご覧ください。
セラミック(カタナ)など詰め物・被せ物の種類や特徴
根の治療(根管治療)の詳細