50代女性「銀歯が取れたら大きな虫歯があった」除菌治療で神経を取らずに詰め物で回復した症例

2023.10.11

銀歯が取れる数年前

術前

 

治療前(虫歯を染色)

う蝕

 

治療中(大半の虫歯除去・除菌治療・仮歯)

う蝕除去築造Tek

 

治療後

Set

年齢と性別 50代・女性
ご相談内容 左上奥歯(左上6番)の銀歯が取れたとお見えになられました。(治療前写真)
カウンセリング・診断結果 拝見すると内部に虫歯があります。虫歯だけが染まる青い染色液で虫歯の広がりがご覧いただけると思います。虫歯は放置できませんので感染した歯質を全て取り除き感染の拡大を止める必要があります。その虫歯除去中に内部の神経が露出した場合は神経も感染をしていると判断して神経も取り除く必要があります。
数年前にお越しになられた時の写真からすると、この間に銀歯の下で虫歯が進行したと考えられます。
これほど大きな虫歯であれば当時のレントゲンに写ってくるからです。
行ったご提案・治療内容 できるだけ健康な歯質は残したいため、当院では染めては虫歯を削りまた染めることを何度も繰り返していきます。通常は虫歯がなくなり染まらなくなった時点で虫歯除去は終了ですが、今回は一部が非常に深く、これ以上虫歯を削れば歯の神経に到達して神経を取らなくてはならなくなるギリギリになりました。この時点での選択肢は2つです。
・従来の治療法に則って染まらなくなるまで虫歯を削り、神経が露出した際には神経を取る。
・虫歯をこれ以上取らず、虫歯の除菌治療を行って神経を温存する。虫歯とは言っても元はご自分の健康な歯質です。虫歯となったのは細菌感染が起きたからです。ではその細菌を除菌して細菌がいなくなればその虫歯は削らずに済み、さらに残った虫歯を削ることによって神経を取る必要がなくなります。
しかし現時点ですでに神経にまで感染が進行しているかどうかが見た目ではわからないため、すでに神経が感染していた場合には除菌治療した後に痛みが出て神経を取る治療が必要になるケースが少数であっても存在します。
しかし物は考えようで、今虫歯を取ることによって神経を取るか、または神経が助かる確率にかけた結果間に合わなかった時点で神経を取るか、タイミングの問題だとする考え方もできます。どちらを選択されるかは、患者さんのお考えだと思います。大切なのは情報を手にして選択できることだと当院は考えています。この方は神経を取ると歯の寿命が短くなるため、奥歯をすでに1本失っておりこれ以上奥歯を失いたくないとのお考えから除菌治療をお選びになられました。初日に大半の虫歯の除去を行った後、除菌治療、さらにその弱い部分の再感染を防ぐためにその上からプラスチックで覆い、さらにその上から仮歯で覆いました。(治療中写真)
神経近くまで広がった虫歯を削ったため、除菌が効果が出たのか、それとも間に合わなかったのかを短い期間ではあっても確認する必要があります。この方は以前からセラミックでの治療をお受けになられていましたが、今回は上の奥歯という目立たない場所であるため、色調にこだわらずに強度があるジルコニアをお選びになられました。
1か月ほど経過をみて痛みやしみなどの異常がないことを確認した後に歯型をお取りしました。
2週間の製作期間を経て最終的な詰め物をお入れしました。(治療後の写真)
治療期間 約1か月
治療回数
費用目安 108,560円(仮歯とジルコニアと除菌療法)
術後の経過・現在の様子 神経まであと少しのところまで進行した大きな虫歯でしたが、現時点では神経を取らずに済んでいます。このまま推移することを願っていますが、いつももっと早く発見できればと思ってしまします。これを契機に早期に病気を発見するため定期的な歯科検診をお受けになられていらっしゃいます。
治療のリスクについて ・装着に際し、天然歯を削る必要があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・神経が感染していた場合には将来痛みが発生して神経を取る治療が必要になることが稀にあります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です
クリニックより 抗生物質で神経を取らずに温存する治療にはリスクがあり、将来お痛み等の症状が出る可能性はゼロではありません。当院の経験では残念ながら1年にお一人程度の間に合わなかった症例に出会います。しかしその一方でその他の大多数の方は当院で把握している限りでは神経を守ることができているようです。賭けのような治療はしたくはありませんが、神経間近まで進行した虫歯から神経を守るには今のところこの方法しかないのです。