歯の詰め物と差し歯の変色
詰め物や差し歯などの被せ物の色合いが歯とマッチしておらず、審美的なお困りを抱えておられるケースがあります。
歯と不釣り合いな人工物の色調の原因が、作製時からのものと経時的に変色を起こしたものがあります。
人工歯の色調が歯にマッチしていない場合
経時的に変色して歯の色調と不一致を起こした場合
詰め物と差し歯は変色するの?
私たちはすっぱい酸性からアルカリ性、冷たいものから熱いもの、カレーや醤油など色素を含んだもの、塩分などの腐食を起こすものなど色々な食べ物を食べ、一本の歯に最大でご自分の体重程の力を入れて噛み砕き、一回の食事で平均620回、10年で679万回噛んでいます。
さらに歯は唾液という水中に24時間常に置かれている状態です。このようにお口の中は大変過酷で、人工歯に非常に高い耐久性が求められる環境なのです。
保険の詰め物や差し歯で使われている材料にコンポジットレジンや硬質レジンと呼ばれるプラスチックや12%金銀パラジウム合金と呼ばれる銀歯があります。
これらの材料はお口の中で先ほどお話しした過酷な条件下に24時間、365日さらされています。そのことにより時間と共に材料が変色・変質していくことがあります。
日常生活で目にするプラスチックは手頃な材料である反面、変色が起きやすくや強度と耐久性に難があります。また金属によっては錆びたり変色するものがあります。
陶器(セラミック)のお茶碗は長年美しさを維持できますが、子供用のプラスチックのお茶碗は次第に色あせや変色をおこすことでお分かりいただけることでしょう。
詰め物と差し歯の変色の原因
先ほどの常時水中にあり温度、酸性・アルカリ性、色素、腐食など過酷な環境に歯科材料は長期に渡り耐える必要がありますが、すべての材料がこういった過酷な環境下でも劣化しないでいられるわけではありません。
その代表例がコンポジットレジンと12%金銀パラジウム合金です。
コンポジットレジンはプラスチックですので水を吸う性質があります。
プラスチックの容器にカレーをよそったことはあるでしょうか?
洗った後、色や匂いが残るのは水を吸う性質があるためです。
コンポジットレジンも同様に水分が中に入り込み着色・変色していきます。また水分を含むと物性が低下し劣化していきます。
前歯の白い被せ物や奥歯の詰め物が変色した場合は、プラスチック製だと考えられます。
また虫歯治療の際に歯に詰めたプラスチックはそのもの自体の変色だけでなく、歯とプラスチックの境界線に茶色いスジが入ることがあります。
歯との接着が弱くなり境目に色素が入り込むことや、境目から虫歯になって変色することがおこります。
新しく詰め替えることができますが、プラスチックは変色だけでなく噛むことですり減り噛み合わせを維持するには役不足である上に、耐久性が劣るのが欠点です。
銀歯の主成分は銀で銀は酸化(錆び)します。銀食器やシルバーアクセサリーを想像するとお分かりいただけると思います。
またお口の中は口臭の原因物質に代表される硫黄を含むものが多くあります。その硫黄と反応し、硫化という腐食も起きます。
酸化や腐食は銀歯を外した場所の歯が真っ黒に染まる、銀歯が触れている歯ぐきが黒く染まる原因になります。
上の写真は銀の土台と歯を外した時の画像です。土台は黒く硫化しています。被せものの内部も黒く変色しています。
大きな虫歯がなければ再治療することは可能ですが、再治療の際に削り取る必要があるため、歯にダメージを与えてしまうことも欠点です。
同じ歯を何度も治療することは歯に何度も傷を負わせることと同じですので、その時はよくても長い目で見ると歯の寿命を少しずつすり減らしていることにつながると経験上感じています。
詰め物と差し歯の変色を治す方法について
歯科材料にも変色・劣化しない材料があります。それはセラミックとジルコニアです。この二つは科学的に安定していて、腐食が起きません。
型を取って作るため、削る量が少ない小さい虫歯には向きませんが、歯と歯の間にある虫歯の治療や被せものに適しています。
特にセラミックは隣の歯の写真を撮って色をオーダーメイドで作るため、見た目が気になるところに適しています。
現在は歯と同じような自然感を持ち、変色せず、耐久性のあるセラミックで再治療することもできる時代になっています。
開発当初のセラミックは壊れやすい欠点がありましたが、現在は改良されて非常に歯に近くなってきています。
一方ジルコニアは歯の色調とは多少異なる白さですがとても丈夫たなめ、奥歯など力がかかるところに適しています。
またこれらの治療は見栄えだけでなく治療精度が高いため虫歯や歯周病に対して強く、耐久性があります。
そのため同じ歯を何度も治療して歯に負担をかけないメリットもあります。
一度も治療したことのない歯は今も手つかずできれいなままでいる一方、一度治療した歯を何度も再治療してはいらっしゃらないでしょうか。
見栄えは大切ですが、人生は長いものですから歯の寿命も一緒に考えていただければと思います。
ご希望の方は適応症か否かも含めてご相談ください。詰め物や差し歯の種類と特徴はこちらへ
ホワイトニングでは白くならない?
ホワイトニングは専用の薬液を使って歯を白くする治療法です。ホワイトニングは神経の生きている天然の歯が対象で、人工物は白くすることができません。
そのためコンポジットレジンなどのプラスチックが詰めている歯にホワイトニングを行えば、プラスチックは白くならないため、変色したプラスチックがより目立つようになってしまいます。
変色や着色する被せものや差し歯なども同様です。人工物の色を綺麗にするためには詰め直しや被せ直しが必要になります。
詰め物と差し歯の交換の費用について
保険内でプラスチックを詰め直しをするのであれば数千円程度で済みます。
虫歯などでやり直す場合を除いて、変色の見た目だけを目的に歯を削ってまでプラスチックをやり直すことは、歯の寿命の観点からお勧めできません。
保険適用される限定された治療では虫歯になりにくいように隙間・段差なく作ることが難しいことと、虫歯になりにくい材料や、見た目や強度など劣化しないような材料を選択することが困難なのが現状です。
セラミックやジルコニアは治療時間と治療法の制約を受けないため治療精度が高く、強度もあり、すり減り、変色、着色も起きませんが自己負担の治療になります。
長持ちして治療を繰り返さないように、長期間自然で綺麗な歯をご希望の方に適しています。
費用は大きさや、作成する精度、材料の種類によってかわり、また患者さんの歯の状態、噛み合わせによって適しているものが変わります。
治療費の詳細は。詰め物や差し歯の種類と特徴をご覧ください。
治療に入る前にどのような選択肢があるのか、治療ごとの・材料ごとの特徴、メリット・デメリットなど分かりやすく説明させていただきます。