歯がしみる
歯がしみる原因と治療法
食べ物を口に入れる、歯磨きをする度に億劫になる「歯のしみ」、痛みでなくとも不快です。
原因は虫歯だけではありません。その原因と治療法についてお話ししていきたいと思います。
目次
虫歯で歯がしみる原因と治療法
虫歯で歯がしみる原因
虫歯で歯がしみる場合の特徴は、特定の歯だけ冷たい物や熱い物、甘い物がしみるのが比較的長時間続きます。また歯を叩くなどの刺激で響く感覚がある場合もあります。しかし初期の虫歯では歯がしみることはありません。虫歯で歯がしみるのは虫歯が表層のエナメル質を突破し内側の歯質である象牙質に達して歯の内部の神経近くまで進行して神経を刺激したり、歯に穴が開いて断熱効果や刺激遮断の働きのある歯質の厚みが減少したために冷たいものや甘いものをしみると感じやすくなるからです。逆から見れば歯がしみるということは、虫歯がかなり進行してしまった証拠でもあるのです。
さらに細菌の感染がすでに神経にまで到達していて、しみや痛みを感じる場合もあります。このようにご本人が虫歯で歯がしみて虫歯に気づいた時は、手遅れになっていることが往々にしてあることをご理解ください。エナメル質内の虫歯や象牙質のごく一部の虫歯であれば被害は軽く、しみる前に簡単な治療で大切な歯を守ることができます。これが私たちがしみる・痛い症状もないのに定期歯科検診をお勧めする理由です。
虫歯で歯がしみる時の治療法
初期段階の小さい虫歯で神経の感染がないことが明らかな場合は虫歯を削り取って神経を残し、人工物でその穴を埋める虫歯治療となります。しかし虫歯が大きくすでに神経が虫歯の穴から露出している場合など、すでに虫歯で神経が細菌感染を起こしていれば一般的には神経を除去する治療(根管治療)が行われています。その根管治療で神経を取れば歯のしみはなくなりますが、歯がもろくなり歯の寿命は厚生労働省の統計で5~10年短くなっています。
虫歯は細菌感染です。眼で見えない細菌が相手であるため、虫歯による神経の感染が不明でどちらともつかない症例の場合、虫歯の状態や症状などから除菌治療による神経の保存を試みる治療も当院では行っています。
知覚過敏で歯がしみる原因と治療法
知覚過敏で歯がしみる原因
風に当たったり冷たい飲み物や甘いものなど通常はしみない温度や状況でしみを感じたり、歯ブラシの毛先などが歯の表面に当たると一時的な痛みやピリッと感じる症状を知覚過敏といいます。歯自体には基質的な異常がなく、刺激に対する感覚が敏感になっている状態です。知覚過敏の特徴はこうした刺激がなくなると数秒から10秒程度でしみが収まることです。この点と歯を叩くなどの刺激には響く感覚がない点が虫歯によるしみと異なっています。
歯の表面にあるエナメル質や歯茎が、口の中の細菌、温度や酸、歯ブラシのような刺激から歯を守っています。ところが歯の表層のエナメル質の一部が歯の摩耗などによりなくなり内層の知覚がある象牙質が口の中に露出した状況、または歯周病や過度の強い歯磨きなどの刺激で歯茎が下がって歯の根の表面のセメント質が露出した状況になると、知覚過敏と呼ばれる歯がしみる症状が起こります。
後でお話しする歯ぎしりや食いしばりなどでも同様の現象が起こることがあります。
知覚過敏で歯がしみた時の治療法
軽症や初期段階の場合は歯磨き方法の改善や知覚過敏抑制効果のある歯磨き剤や薬剤塗布やコーティングで経過を見ることがありますが、それで効果がない場合や歯がすり減っていてしみがひどい場合はプラスチック樹脂でしみる部分を覆う治療を行います。しみる歯の神経を取ればしみはなくなりますが、歯の寿命を考えればできれば避けたいものです。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖で歯がしみる原因と治療法
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖で歯がしみる原因
歯は噛むために使うため歯の摩耗は大なり小なり誰にでも起こる現象です。人類は6億年以上もの長い年月で今の身体に進化してきました。いくら硬いものが好きでも食事中の歯同士の接触時間はわずか20分ほどで、食事で歯を使う程度でトラブルが起こるようなら種として生存できていません。
しかし一部の人は一日のそれ以外の圧倒的に長い時間上下の歯同士の接触や噛みしめ、食いしばりを無意識で行っています。この長時間の歯同士の接触により歯を異常に摩耗させ、歯に加わる力により歯の付け根の歯質のえぐれが起こります。摩耗やえぐれにより前にお話しした知覚過敏が発症するのが歯にしみがでる理由です。力を入れてゴシゴシと強く横方向の歯みがきすることでも起こりますが、多くは歯軋り・食いしばり・噛みしめ癖です。力を入れずに軽く歯同士が接触しているだけでも同じ現象が起きるのでご注意ください。こうした癖がない一般の方々は何もしていない時は、安静時空隙と言って上下の歯と歯の間に1~2mmの空間があります。この文章を読んでいて上下の歯同士が触れていればこうした癖が無意識とはいえあるとお考え下さい。
無意識の歯同士の接触の詳細や解決法はこちらへ
どうして歯や食べ物が当たらない歯の付け根に歯にえぐれが起こるかと思われるかもしれませんね。歯同士が接触すると歯と歯茎の境目付近に応力がかかり、歯の表面に目では見えない程度の微細なヒビが入ります。この応力が習慣的に長期間続くとヒビ同士がつながって歯質の一部が分離してしまいます。そのためまるで氷山が崩れるように歯が楔を打ち込んだようにえぐれてきます。えぐれが大きくなると爪を歯と歯茎の境目付近に当てて引っかかりを感じることができます。えぐれた分だけ歯質の厚みが薄くなり知覚を感じる内部の歯質(象牙質)が露出した状態ですので、冷たいものや甘いもの、歯ブラシの毛先などの刺激に敏感になりしみや痛みを感じるようになります。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖で歯がしみた時の治療法
軽症の場合は歯磨き方法の改善や知覚過敏抑制効果のある歯磨き剤や薬剤で経過を見ることがありますが、それで効果がない場合や歯がすり減っていてしみがひどい場合はプラスチック樹脂でしみる部分を覆う治療を行います。しかし原因である習慣的な歯同士の接触を止めないと治療効果がない、再発を繰り返すことが多いのが実情です。
夜間寝ている間は意識して歯同士の接触に気を付けることができないため、ナイトガードと呼ばれるマウスピースをお口にはめてお休みいただくことをお勧めいたします。上下の歯と歯の間にマウスピースを入れることで歯同士が直接当たらなくなり、またマウスピースの材質が歯より軟かいため、歯でなくマウスピースが摩耗することで歯の損害を軽減することが目的です。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖の詳細はこちらへ
歯周病で歯がしみる原因と治療法
歯周病で歯がしみる原因
歯周病の初期は歯茎から時折出血がする程度でほとんど症状がありません。しかし歯周病が進行するとあごの骨を溶かし骨の高さが低くなるため、骨にくっついている歯茎が痩せて下がり歯の根の部分が口の中に一部露出するようになります。
口の中の入ってくる冷たい飲み物や甘い食べ物などの刺激を以前は骨や歯茎で覆い遮断できていましたが、この露出によって遮断できなくなって歯がしみる症状が出てきます。
歯周病で歯がしみるということは、すでに歯周病がかなり進行してしまったことを意味します。しみる症状は歯周病の症状の中ではまだましなもので、ぐらついてしっかり噛めない、歯茎が腫れて痛い、噛むと痛いなどを経て最後には歯を失うことがあります。現在成人の歯を失う人の5人に4人が歯周病です。老後の食生活を左右する歯周病をしみるだけと軽視せず、治療によって進行を止めることをお勧めしたします。
歯周病で歯がしみる時の治療法
基本的には歯周病治療を行いながら、症状の経過によっては先ほど述べた「知覚過敏で歯がしみる時の治療法」を併用することになります。
歯周病と治療の詳細はこちらへ
歯と歯茎のトラブル
歯がしみる以外にも体が危険を教えてくれるサインがあります。
そのサインを見逃さなければ被害を小さくしまた治療を最小限に抑える事が出来ます。
今はなんとかごまかせても、今よりさらに悪化する前に治療することが大切です。