50代男性「長年右下奥歯がないところを治したい」インプラントを入れて噛める毎日を取り戻した症例

2024.01.08

治療前

画面奥から2番目の右下第一大臼歯(右下6番)は長期間失くされたままでした。しっかり噛めるように治したいとのご希望でした。

長年歯がない状態を放置されていましたが、骨はあまり痩せておらずインプラント、ブリッジ、入れ歯、どの選択肢も入れられる可能性があります。

治療中

インプラントをご希望されたため、治療の可否、可能である場合の手術方法やインプラントの種類、どこにどの角度でインプラントを入れるのが最適かを判断するためにCT撮影を行いました。この画像は前方から見た骨の断面を見ています。

この画像は側面からみている画像です。CTは通常のレントゲンとは違って色々な角度から局所を観察することができるため、安全で的確な治療には欠くことができない機器です。

この画像は上から局所を見ています。他の画像ではあまり骨の痩せはありませんでしたが、頬側の骨が抜歯により凹んでいるのがわかります。通常のレントゲンでは知りえない情報です。こうした情報により最適な場所にインプラントを入れることが可能になります。

治療後

インプラントを入れた後の前後的な方向からのCT画像です。事前の計画通りの位置に正確に入っています。

側面から見た術後のCT画像です。問題なく骨の中に植わっています。

頬側の骨が凹んでいたため、それを避けて入れることができました。一見骨の中央に入れた方がいいように思えるでしょうが、上の歯と噛むことを考えるとあまり内側に入れることができません。ちょうどいい位置だと思います。

その他

インプラント治療から2年後のお口の中です。治療後と変わらずいい状態を維持されています。

2年後の通常のレントゲンです。骨の痩せもなくレントゲン上の問題はありません。

年代と性別 50代・男性
はじめのご相談内容 億劫で10年間歯医者には行っていなかった。右上の一番奥の歯(右上7番)に痛みが出たとおっしゃって来院されました。
また右下に歯がないところがあり(右下6番)、気にはなっていたが放置していたため、この際しっかりと治したいとのご希望がありました。
具体的には「しっかり噛めるように治したい。入れ歯は不便で嫌だ。異物感が無いように治療したい」とのお考えでした。(治療前画像)
診断結果 拝見すると右上7番の歯は神経に達する大きな虫歯があり細菌が根の中まで侵入していたため、歯を助けるためには根の中の治療(根管治療)をする必要性がありました。お痛みがあることからこの歯から治療をする必要性があると判断しました。

右下6番目の歯がないところは、肉眼的とレントゲン上から骨がしっかりとしているように見受けられます。また歯がない場所の1本手前の右下5番の歯は治療を受けたことがない奇麗な歯であり、歯がない場所の1本奥の右下7番は比較的小さな詰め物がされている程度でありほとんど歯を削っていない状態です。さらに幸いなことに歯を失って10年放置していたにも関わらず右下7番の歯が手前に傾斜しておらずほぼ正常な状態でした。また左上を中心に軽度であるものの歯周病が見受けられました。
行った治療内容 お痛みがあり緊急性があった右上7番目の根の中の治療(根管治療)をまず行い、同時並行で歯周病の治療も行いました。費用を抑えるために保険内の治療をご希望されました。
その後右下6目の歯の無いところの治療法についてご相談いたしまいた。入れ歯、ブリッジ、インプラントの3通りのご治療方法についてそれぞれの特徴やメリット・デメリットのご説明いたしました。ご本人は異物感無く何でも噛めることがご希望だったため入れ歯は選択肢から除外することになりました。
ブリッジのメリットはインプラントに比べて短期間で治療が終わること、材料にもよりますが費用が安く済むことです。デメリットは歯の無いところの前後の歯を削る必要があること、本来歯が3本のところを2本で支えるため支える2本の負担が増えること、物が詰まりやすくなることです。このケースの場合、既に失くした歯の前後の歯がほぼ健康な歯であることから、ブリッジのために歯を削るデメリットは大きくなります。
インプラントのメリットは、単体で歯の噛む力を負担できるのでブリッジに比べて前後の歯に負担がかからないこと、そして前後の歯を削らないで済む事です。デメリットは費用が高額なこと、治療期間が長いこと、メンテナンスが必要なこと、骨との接着がごくまれに感染などでうまくいかないことがあることです。前後の歯が殆ど削られていない健康な歯であり、削ってブリッジにすると虫歯になるリスクが増えることと、歯ぎしりや噛みしめ癖をお持ちであり、また通常より噛む力が強いためブリッジにより前後の歯の負担が増えることからインプラントを選択されました。噛む力が強いため、通常の方よりインプラントに対する負担が大きくなることが予想されます。そのため脱離や破損のリスクが増えますが、歯を削らない事にメリットを感じられたご様子でした。治療計画を作成し治療方法やリスク、おおよその期間と費用についてご説明いたしました。治療方針と計画に同意が得られましたので、最初に右下6番のインプラントの可否と安全に正確に入れるためにCTを撮影して骨の状態を検査しました。
頬側の骨がわずかにへこんでいるもののインプラン治療に支障は無く、十分な骨量が確認できました。CT上で手術する位置や角度、手術手順や器具と材料等のシミュレーションを行い安全に治療が行えるかどうかを確認し、インプラント手術を行いました。(治療中CT画像)術中にも再度CTを撮影し神経や血管などの位置を把握し安全に治療できるように注意を払いました。
術後骨とインプラントが接着するのを4ヵ月待ち、骨と確実に接着しているかどうか検査をして問題ないことを確認した後にかぶせ物を装着しました。先ほどご説明した食いしばりや噛む力が強いことから、インプラントの負担を考えるとナイトガード(マウスピース)を装着したほうが良いのですが、睡眠時に装着することが困難なため断念しました。
このケースのおおよその治療期間 約9か月、23回(歯周病治療も含む)
おおよその費用 約460,000円(右上7番と右下6番)
現在の様子 長年歯がない状態で過ごされていたので最初は違和感がおありだったようです。ですがすぐに慣れ、なんでも噛めるようになったとお喜びいただけました。咀嚼や食生活・日常の問題はみられません。

治療から2年経過しましたがお変わりないようです。(その他画像)
定期的にメンテナンスと定期健診で年4回通院されていい状態を維持されていらっしゃいます。
治療のリスク ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
クリニックより 10年間歯科医院に通わないで過ごされていました。その結果右上7番の歯は神経を失うことになりましたが、来院のきっかけになったことは救いでした。

なぜなら歯の病気は症状なく進むことも多いため、この痛みがなければ10年を超えてさらに通院が遠のき、気づいた時には様々な病気が発生し、手遅れの歯もある事態もあり得たからです。

今回は幸いにして右上の7番以外の歯には異常が見られなかったため、大きな問題にはならずに済みました。以前の反省から今現在は定期健診とメンテナンスに通われているため、病気のリスクもかなり少なくなることでしょう。今後も経過を一緒に追いかけて参りたいと考えています。

インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク