80代男性「ブリッジの歯に穴があいた」虫歯治療後にブリッジではなくインプラントで治療した症例
2024.04.08
治療前
右上4番と6番を支えにしているブリッジの4番が虫歯になり歯に穴が開いています。外見からはかなり進行した虫歯であることが推測されます。
金属は白く写りその内部の虫歯の程度は判断できませんが、外見からブリッジを全く支えておらないため噛む度にもう1本のブリッジの支えである右上6番にてこの原理で強い力がかかり歯が割れるなどの問題が出かねない状態です。早急に対処する必要があります。
ブリッジを外すと右上4番は虫歯でほとんど歯が残っていない状態です。ブリッジを支えていなかったためブリッジが沈み込み隣の歯がない右上5番部の歯茎にブリッジが食い込んで歯茎から出血していました。
治療中
これだけの虫歯であるにも関わらずシミや痛みがないのが幸いです。神経を取らずに済ませられる可能性がわずかではありますが残っています。除菌治療によりダメで元々で神経を残してみました。
右上4番は除菌治療により神経を守ることができそうですが、ほとんど歯が残っていないため再度ブリッジすることが不可能です。そのためインプラントが入れられるか否か、また入れられればどこにどのようなインプラントを用いるのかをCT上でシミュレーションしました。幸いにも骨は十分残っています。
治療予定通りにインプラントが入っています。この後はインプラントが骨とくっつくのを2か月程待って2次手術を行います。そして仮歯で使用感などのチェックをした後、歯型を取ってセラミックの被せものに置き換えて治療が終了します。
治療後
右上5番にインプラントを入れて右上4番5番2本に被せものを装着して治療が終了しました。ブリッジを支えていた右上6番はブリッジを切断した部分を研磨してそのまま使っています。
治療後に正面からみた状態です。金歯の手前の右上5番に入れたインプラントはまるで歯が存在するかのような外見になりました。
年代と性別 | 80代・男性 |
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はじめのご相談内容 | 右上のブリッジの歯(右上4番)に穴があいたとお見えになられました。 |
診断結果 | 拝見すると右上4番と6番を支えにしているブリッジの4番が虫歯になり歯に穴が開いていました。(治療前画像1)虫歯はかなり進行しており、神経近くまで到達している可能性がありました。 ブリッジを壊して外し、右上4番内部の状態を確認する必要があります。仮に虫歯からの細菌感染が神経に到達していれば神経を取る治療(根管治療)が必要になり、歯はもろく弱くなり寿命は短くなってしまします。しかし到達していなければ虫歯除去後に神経を保存できることになります。 すなわち神経の感染の有無が治療法だけでなく歯の寿命を分けることになるとご説明しました。(治療前画像2) |
行った治療内容 | 神経の感染の有無を確認するためにブリッジを壊して外し、右上4番の虫歯の程度を確認することをご提案しました。仮に虫歯が深く進行していても神経の感染が確認できない場合は、抗生物質で虫歯の細菌を除菌する治療(除菌治療)により神経を残してみて、経過が良好であれば神経を取らずに済む治療法もあることもご説明しました。ただしレントゲンや肉眼で神経感染の有無を確実に判断することは不可能であるため、除菌治療が間に合わないリスクがあります。除菌治療後に神経の感染が判明した時点で神経を取る治療が必要になる場合もあることをご説明いたしました。 現状をご理解いただけ、治療方針への賛同と仮に虫歯が深かった場合には除菌治療を受けたいとのお考えにより治療を開始しました。 ブリッジを除去して右上4番を拝見すると予想通りかなり進行した虫歯があり、歯質は頬側を残してほとんど虫歯になっていました。(治療前画像3と治療中画像1)症状と検査から除菌治療により神経を保存できる可能性があると考え除菌治療後にプラスチックを詰めてその上から仮の歯を被せて経過観察をいたしました。 その期間中にすでに失っておられる右上5番のご相談をしました。選択肢としては今まで通りのブリッジ、ないしは入れ歯やインプラントがあります。右上4番の虫歯が大きく深かったということはご自身の歯があまり残っていないため、被せものが外れやすくなります。その状態でブリッジや入れ歯によって5番の分の負担を強いられる4番は将来を考えると不安があります。このご説明をご理解いただけたため、5番の負担を4番にかけないインプラントをご希望されました。 ブリッジの切断後研磨することで再製作しない6番以外の4番5番の治療計画を立てご了解をいただけたので5番のインプラントの可否と最適なポジションを探るためのCT撮影とPC上でシミュレーションを行いご説明いたしました。(治療中画像2) インプラント手術中もCT撮影を行い計画通り治療が進行しているのかを確認しながら慎重に手術を行いました。術後4か月で歯茎の下にもぐっているインプラントに土台をネジ止めするための2次手術を行い、術後20日程で仮の歯をお入れして日常生活上の問題がないかを確認しました。(治療中画像3) 食生活も含めて問題がありませんでしたので、右上4番5番の歯型をお取りしてセラミック(セルコン)を4番はセメント接着、5番はインプラントにネジ止めしまして治療が終了しました。(治療後画像1と2) |
このケースのおおよその治療期間 | 約6か月 |
おおよその費用 | 624,050円(インプラント1本と仮歯を含む2本) |
現在の様子 | 現時点においては右上4番の痛み等の問題もなく神経を残すことができています。5番インプラントも検査上異常はなく、治療後も食生活や日常の問題はみられません。 |
治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります |
クリニックより | 噛む力が非常に強い方のため歯やインプラントに加わる力が強く、他の場所でもトラブルがありました。その観点から今回2本の歯で3本の歯を支えていた右上のブリッジをやめて2本の歯と1本のインプラント合計3本で3本の歯を支える力の分散ができたことは今後を考えると意義のある治療だったと考えています。 また神経のない歯は血行がなくなり乾燥してもろく弱くなりますので、その弱い右上6番への負担を軽減できたこと、右上4番の神経を取らずに済ませられたこともプラスでした。懸念点としては右上4番の歯質がほとんど残っておらず、強い力にどこまで耐えてくれるかでしょう。この点もご説明させていただいており、今後は定期健診とメンテナンス(クリーニング)で経過を拝見して参りたいと考えています。 インプラントの詳細は下記をご覧ください。 ・インプラントとは ・インプラントの種類 ・インプラント治療を受けられない人 ・骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか ・インプラントと天然歯の違い ・骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク |