40代男性「奥歯が痛くて寝られなかった」重度の歯周病を改善して痛みのない日常を取り戻した症例
2024.02.05
治療前
右下奥歯が痛くて寝られなかったとお見えになられた40代男性の方です。
虫歯で根しか残っていない歯もあり、今まであまり歯に関心をお持ちではなかった様子が推察されました。
お痛みの原因は右下奥歯の虫歯、または歯周病が原因だと判断しました。
治療前
後になってご本人がおっしゃるには、面倒だったためおざなりの歯磨きだったそうです。
来院時は歯の表面にプラーク(歯垢)が多量についており、虫歯と歯周病どちらも非常に起こしやすい環境であることをご説明しました。
また左下の歯が根だけ歯茎の下にもぐっていいる状態であるため、左上6番が下に延びだしており、かみ合わせが悪い状態です。こうした歯の寿命は短くなります。
治療前の歯周病検査結果
歯周病検査からはお口全体に重度の歯周病があることがわかりました。
歯周病検査表の赤丸は出血箇所、数字の4以上が進行した歯周病の箇所、歯のぐらつきも多数あり、ほとんどの歯が歯周病に侵されています。
それも重症であることがわかります。
このまま放置すれば早晩多数の歯を失い大きな入れ歯を入れることになるのは時間の問題です。
歯周病治療中
まだ歯周ポケットの深い箇所やぐらつきは残っていますが、歯周病の初期治療で赤い丸(出血箇所)が段々減少してきました。
治療と共にご本人ががんばって歯磨きを始められたことによるいい傾向です。
歯周病は生活のありようによって起こる生活習慣病の一つです。
そのため歯磨き習慣や歯磨き方法などを改善することから始まり、重症の場合は一気に治ることはなく根気とモチベーションの維持が鍵になります。
初回治療後
初回の歯周病治療と虫歯の治療、歯がない場所への入れ歯の装着等の治療が終わった状態です。歯磨きは見違えるほど上手になられ、お口の中は清潔に保たれています。
初回治療後の歯周病検査
まだ完治には遠い状態ですが、かなり改善してきています。
今後のケア次第ではもう一段の改善が期待できます。
定期歯科検診中の歯周病検査
定期検診中に歯周病の後戻りが見られたため、通常の歯周病治療に加えて3DS治療を行いました。3DS治療後には歯周病検査は正常に戻りました。
定期歯科健診とその都度の歯周病治療を重ねるたびにどんどん歯周病は改善してきました。
治療2年後
入れ歯によると思われる歯を抜いた左下6番の前後の歯に軽度の骨の吸収がみられます。
本来は歯がない左下6番にはインプラントを入れて噛む力の分散をするのが理想です。
現在は定期歯科健診とメンテナンスに継続してお通いです。
初回以来歯を失うこともなく、また症状、日常生活や食生活の支障もありません。
レントゲンと歯周病検査でもいい状態を維持できています。
今後もご一緒にこの状態をキープしていきたいと考えています。
年齢と性別 | 40代・男性 |
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ご相談内容 | 10日前から右下奥歯が痛くて寝られなかったとお見えになられました。(治療前写真) |
カウンセリング・診断結果 | 拝見すると虫歯で根だけになった歯や斜めに生えている親知らずが原因の虫歯、お口全体の歯が重度の歯周病に侵されている状態でした。レントゲン写真からは歯周病による軽度の骨の崩壊が見られますがまだ骨はかなり残っています。歯周病検査上では重症ですが、まだ骨が残っているため今なら健康を取り戻すことができる可能性があると判断しました。またお痛みの原因は右下奥歯の虫歯と歯周病が考えられるとご説明しました。 当初の歯周病検査では正常が1-2mmの歯周ポケットが平均して5mm程度で深い場所では10mmあり、歯茎の歯周ポケットからの出血(検査表の赤い丸)がいたることろで見られ、歯のぐらつきも正常な歯が27本中3本しかなく検査値の最大である3が8本もある非常に重症な状態でした。(治療前の歯周病検査票)この状態が続けばそう遠くない内に多数の歯を失い、大きな入れ歯を使わざるを得なくなる可能性が高いことをお話ししました。 |
行ったご提案・治療内容 | ご自分では歯周病であること自体に気付いておられず、さらにそこまで重症である事実に驚かれました。歯周病が糖尿病など他の全身疾患との関連が言われていることにも驚かれ、まだ歯が残っている今しっかり虫歯と歯周病治療を受けたいとご希望されました。 歯周病治療の期間は軽症の場合は1~2か月ほどですが、重症の場合は歯を失うこともありまた治療が非常に長期化するケースがあることをご説明しました。またその期間中よくしたいというモチベーションの維持とご家庭でのケアが治療の成功の鍵になることをご説明しました。虫歯と歯周病の原因はお口の中の汚れによる原因菌の繁殖です。まずその根本原因を解決しながら虫歯と歯周病治療を行う治療方針をご説明しました。方針へのご理解と同意が得られましたので日々の清掃の方法や道具の使い方をご説明し実際にご一緒に行い適切な方法を習得して頂く練習をしました。それと並行して虫歯治療を行いましたが、その前に痛みが軽減したため、お痛みの原因が歯周病であったと判断しました。歯の大切さやお手入れの重要性をご理解いただけたことから来院されるたびにお口の中は段々きれいになってきました。並行して斜めに生えているため手前の歯との間に虫歯を作った右下の親知らず(右下8番)、虫歯で歯の大半が崩壊して根だけしか残っていない右上の親知らず(右上8番)と左下第一大臼歯(左下6番)の3本を抜歯し、親知らずにより虫歯になった右下第二大臼歯(右下7番)の虫歯治療を行いました。 右下7番の虫歯は当初のお痛みの原因の可能性がありましたが、並行して行った歯周病治療で症状が軽減したこともあり、歯の神経を取らず温存する抗生物質を使った除菌治療を行いました。上の前歯など他の虫歯の治療も歯周病治療と並行して行いました。また左下6番の虫歯を放置していたため、かみ合う左上6番が下に伸びだしていたため、噛み合わせのバランスを修正するために左上6番の伸びた分を削り他の歯との調和が取れたかみ合わせに銀歯の被せ物をお入れしました。また失った左下6番には保険の入れ歯をお入れしました。両隣の歯が虫歯で傷んでおらずまだ削られていないため、歯を削るブリッジを避けるご希望があり、入れ歯かインプラントの選択肢の中から入れ歯をお選びになられました。その間に歯周病初期治療後に治療効果を判定するために再度歯周病検査(歯周病治療中の検査表1)、その検査で完治していない場所だけを歯周病中期治療を行いその後同様に歯周病検査(歯周病治療中の検査表2)を行いました。その結果当初よりかなり歯周病が改善してきました。しかし依然としてポケットが深い場所や出血箇所が認められ、完治には至りませんので引き続き経過を見ていくことになりました。この時点で1回目の治療を終えました。その後はメンテナンス(歯と歯茎のクリーニング)や定期的な歯科検診を行い、歯周病のコントロールに努めました。また1か月間専用のマウスピース内と歯周ポケット内に抗生物質を入れる3DSと呼ばれる除菌治療を行いました。(定期歯科検診中の歯周病検査) その間も日々の清掃をさらに充実させるため歯磨きや歯間ブラシなどの使い方を再確認するなど継続してお口の中の細菌数を減らす努力を行いました。また食いしばりや噛みしめ癖に対してご自身でその行為に気付いていく方法や、夜間歯と歯茎を守るためにナイトガード(マウスピース)をお使いいただきました。 |
治療期間 | 1回目11か月、2回目以降約6か月 |
治療回数 | |
費用目安 | 保険の一部負担金+3DS:39,930円 |
術後の経過・現在の様子 | 当初お見えになられてから約3年が経過していますが、段々歯周病はよくなってきました。治療2年後の歯周病検査では多少ぐらつく歯が少数あるものの、歯周ポケットは正常の範囲内に収まり、出血もなく食生活や日常の問題はみられません。 歯周病治療には外科療法もありますが、痛い治療を避け痛みのない3DSなどの治療を行ってきました。期間はかかりましたが、歯周病で失った歯は1本もありません。この結果はここまで熱心にお通いいただいた患者様の努力の賜物です。 |
治療のリスクについて | ・治療が終わった後も、十分なセルフケアが必要です
・正しいブラッシングやメンテナンスを行わなければ歯石の付着や歯周病の再発が起こることがあります ・歯周病は生活のあり方により発症する生活習慣病のため、生活や体調の変化により治療成果や再発に個人差があります |
クリニックより | 当初ご説明した歯の大切さや清掃方法などを実行されたことで見違えるようなお口の中に変化してきました。実際にきれいに磨けるようになってくると痛みや出血など当初の症状はなくなり、さらに口の中がさっぱりして気持ちがいい感覚を体験されたことが歯に関する関心を生む好循環が生まれてきます。
後になって当時のお話を伺うと、今から思うと以前は面倒でおざなりの歯磨きだったとおっしゃっておられました。 |
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