8歳男性「ころんで前歯が折れた」19歳までの経過症例

2024.04.29

治療前

ころんで前歯を打撲した際に右上1番が折れて来院された当時8歳の男性です。

若いため根の先が未完成であり、完成するには神経が生きていなくてはなりません。そのため、歯に破片を接着して他の歯に固定して経過を見ることにしました。他院で処置を受けた後であったため折れた破片を隙間なく接着できませんでした。

神経を取らずに済ませたかったのですが、痛みが出て他院で神経を取った後に来院されました。その後根の先が未完成のままでは歯の寿命に関わるため、歯の成長を促す根の治療を1年間継続しました。

治療中

根の治療中の画像です。歯並びが悪く前の出っ張っていたことが転倒による打撲時に強い外力を受けた一因でした。

だいぶ根の先が成長し完成してきました。

根の治療中のレントゲンです。根の先が未完成であったため、成長して完成するのを根の治療をしながらここまで1年間待ちました。

治療後

矯正治療が終わった段階です。神経がなくなり歯の変色が見られますが、折れた破片は外れることなくくっついています。外見をの改善を急ぎたい気持ちはありましたが、被せ物で改善するには体の成長が止まらなくては再治療が必要になるケースがあります。

根の周囲には異常は見られず、根の先が未完成であったもおのがかなり完成してきています。

その他

最初の受診から11年後に折れた歯にセラミックを被せて治療が終了しました。

11年前に受診された時は8歳と若かったためまだ根の先が未完成でしたが、根の治療(根管治療)を1年間続けた間に根はほぼ完成してくれました。

年代と性別 8歳・男性
はじめのご相談内容 来院の2日前にころんで床に上の前歯をぶつけて歯が折れてしまいました。
翌日他院で処置を受けましたが、その後の治療をご希望になり来院されました。
診断結果 拝見すると右上中切歯(右上1番)が歯茎から上の部分の半分ほどが真横に折れていました。8歳と活動的であることと出っ歯であったことが原因だと思われました。
折れた位置が神経に近い場所であったため、他院で神経を保護する薬剤が塗布されていました。

この時点で神経の感染があるか否かは不明でしたが、特段の症状がなかったため神経が助かることに賭けてみる価値はあると判断しました。レントゲンで根の先が完全に成長・完成していないため、神経が助かれば歯の成熟が期待できるためです。神経が死んだ時点、取り除いた時点で歯の成長は止まってしまします。(治療前レントゲン画像1)
行った治療内容 現時点では神経の感染が確認できない以上、未完成である歯の成長に期待するため、ダメで元々のおつもりで歯の経過を長期間観察することをご提案しました。
しかし将来感染が確認された場合には歯の神経を取り感染の拡大を阻止することになること、ころんで強い外力を受けたため根の一部にヒビ等が入っている可能性、将来歯が内部や外部から吸収する可能性があることをご説明しました。
お母様とご本人は現状のご理解と納得、リスクをご理解いただけたため治療を開始しました。
その期間は折れた歯の破片をお持ちになっていたため、一部加工して歯に接着して外見の改善を図りました。(治療前レントゲン画像2)

受診から1年間は異常はありませんでしたが、1年後に再度ころんで打撲し来院されました。前回接着した部分から剥がれていたため再度接着しました。
今回転んだ時に隣の左上中切歯(左上1番)の先端が欠けていたため、同時にプラスチック(コンポジットレジン)を欠けた部分に接着しました。
それから2週間後に右上1番の歯茎が腫れたそうです。当院へは片道1時間半ほどかかるため近所の歯医者さんで神経を取ったとご連絡がありました。その後の治療を当院で行いました。(治療途中レントゲン画像)
根の先が未完成であるため、通常の根の治療(根管治療)ではなく、少しでも歯を完成させる目的で長期間それに適した薬剤の交換をご提案しました。
ご希望になられたため、1年間毎月薬の交換に遠路お通いになられました。(治療中レントゲンと写真)

根の中の治療が終了後も当時10歳とまだまだ体が成長途中のため、人工的な被り物を歯に被せることを先送りしました。
今作っても将来成長が止まった時点で合わなくなる可能性が高いためです。
その後は年に1回の経過観察としました。(レントゲンと画像)
14歳になった時点で出っ歯ている前歯を矯正治療で改善をされました。
矯正治療が19歳に終わり、保定(矯正で動いた歯が後戻りさせない)期間に入った時点で歯の被せ物の治療をご希望されました。(治療後レントゲンと画像)
歯の内部にグラスファイバー製土台を入れて補強した後、歯型を取ってセラミックの被せ物(セルコン)を歯に接着して11年間の治療が終わりました。(その他レントゲンと画像)
このケースのおおよその治療期間 約11年間
おおよその費用 177,380円(グラスファイバー製土台、仮歯、被せ物)
現在の様子 矯正治療をお受けになられたため歯の出っ張りがなくなり、外見だけでなく外力を受けづらく噛み合わせも改善しました。
治療後も食生活や日常の問題はみられません。
今後は通常の定期健診で拝見し経過を見させていただくことになっています。
治療のリスク ・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 当初は神経が残ることに期待しましたが、残念ながら残すことができませんでした。根の治療(根管治療)期間が1年と長くなりましたが、歯もほぼ成長が完了できたようです。
仮の被せ物をご希望になられなかったため、体の成長途中を考慮して正式の被せ物が11年後になってしましました。
お母様とご本人は20歳前にきれいな歯と口元になられたことをお喜びいただけました。