50代女性「噛みしめ癖で歯がすり減り、歯が欠けて虫歯になった」白いジルコニアを詰めて歯を守った症例

2024.05.06

治療前

今回治療の8年前の左下第一大臼歯(左下6番・画面右から2番目)はこの時点では多少の摩耗はあるものの大きな問題がない状態でした。

治療中

治療直前の状態です。日常的に噛みしめる癖があるため、8年間の間に1本奥の歯も噛みしめ癖に対応するため金合金に置き換わっています。今回は左下6番(画面右から2本目)の表面のエナメル質が摩耗し歯がえぐれてきています。このまま放置すればさらに歯の摩耗が加速し歯の寿命を縮めることが懸念されます。また手前の歯にも虫歯が見られます。

治療後

摩耗した部分は柔らかい歯質(象牙質)で摩耗しやすく虫歯になりやすいため、人工的なエナメル質で覆って歯を維持する必要があります。そのため左下5番・6番にジルコニアを詰めた状態です。

年代と性別 50代・女性
はじめのご相談内容 左下の歯に穴が開いたとお見えになられました。
診断結果 拝見すると左下第一大臼歯(左下6番)の噛み合わせ部分がすり減りとクレーターの様な小さな穴が開いています。8年前の写真ではきれいな歯でした。しかし噛みしめる癖をお持ちの方であるため、8年後には歯がすり減り表面のエナメル質が摩耗してその下の象牙質がお口の中に露出している状態でした。(治療前画像1)
歯質は均一同質ではなく、歯の表面1mm程度はエナメル質という人体で最も硬く丈夫な歯質で細菌の内部への侵入を防止し、すり減にくく咀嚼による摩耗に耐える構造になっています。内部の象牙質は象牙細管という管があり痛みやしみを感じやすく、硬さが劣る材質になっています。余談ですが知覚過敏はエナメル質を失いこの象牙質が露出した場合や、歯茎が下がって根の部分のセメント質が口の中に露出した場合などによく起こります。治療前の写真で噛み合わせの部分が少し黄色みがかっているのがお判りでしょうか。歯の表面のエナメル質が噛みしめ等により摩耗してなくなり内部の黄色みがある象牙質が露出しています。穴が開いたのは表層の耐摩耗性の高いエナメル質とエナメル質が食いしばりにより摩耗してなくなり摩耗しやすい象牙質が表面に混在するため象牙質の方が顕著にすり減り穴が開いたものです。虫歯を防ぐエナメル質がなくなったことが問題であるだけでなく、すり減った分の歯の移動で噛み合わせが狂ってしまっています。さらに今回は手前の歯に黒く写っている虫歯も発見されました。食いしばりなどにより歯の一部が欠けたことが原因のようです。(治療中画像1)
行った治療内容 軟かく摩耗しやすい象牙質が食いしばりにより露出して穴が開いたことに加え、前の歯との境目に食いしばりによると思われる歯の欠けから発生した虫歯ができたため、治療をご希望されました。
食いしばり癖があるため摩耗に耐えることと耐久性の両立の観点からは人工的なエナメル質を作る必要があるため金合金が最適でしたが、下の歯であるため目立たない色合いをご希望されました。そのご希望からすれば、色調が良くても耐久性と耐摩耗性の劣るプラスチック、見た目が悪く硬すぎて他の歯と硬さの調和を崩す銀歯が選択外となり、また通常のセラミックは見た目はいいのですが衝撃に弱いことと歯を削る量が多くなるためこれも選択外になります。その結果金属色ではありませんが色調はセラミックより劣るものの、強度と耐久性、歯を削る量が少ないジルコニアをお勧めしました。
初日は虫歯の除去とすり減った部分を補うために多少の歯を削った後に歯型を取り、最後に仮歯をお入れしました。日常使用で異常が見られませんでしたので、次回の来院時にジルコニアインレーを装着して治療は終了になりました。(治療後画像1)
このケースのおおよその治療期間 約2週間
おおよその費用 92,950円(仮歯を含む)×2本
現在の様子 虫歯の進行が止められたことと、歯に開いた穴が埋まりこれ以上歯が急激にすり減ることを止められたことをお喜びいただけました。治療後は時折歯科健診をお受けになられてこの状態を維持されています。
治療のリスク ・治療中に痛みを伴う場合があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
・治療後は神経が過敏になっているため、痛みが生じる場合があります
クリニックより 一番奥の歯(左下7番)は8年前にはセラミックが被っていましたが(8年前の写真)、食いしばりのためセラミックが欠けたため治療当時には金合金に代わっています。
食いしばりや歯ぎしりなどの癖はご本人の自覚がなく無意識の行動であるため、歯科的治療にコントロールするのが大変困難な行為です。そのため、歯の接触に気を付けることを繰り返すことや、被害を少なくするために耐摩耗性の高い材質に入れ替える、またマウスピースの装着などをお勧めしています。

ジルコニアなど詰め物・被せ物の種類や特徴はこちらをご参照ください。
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