50代男性「上の前歯がぐらつき今にも抜けそうで不安」前歯を抜歯し、インプラントで支える入れ歯を入れた症例

2023.09.06

治療前

治療前上顎治療前上顎義歯治療前正面治療後下顎治療前レントゲン

 

治療後

 

治療後上顎治療後上顎義歯治療後正面治療後下顎5年後レントゲン

 

 

 

年齢と性別 50代・男性
ご相談内容 上の前歯がぐらつき今にも抜けそうで不安だとおっしゃって来院されました。(治療前写真)
カウンセリング・診断結果 下顎はご自分の歯とインプラントがあり全て骨の植わっている丈夫なものばかりですが、上顎は前歯以外歯を失っておられているため、噛む力は噛むと沈み込む柔らかい粘膜の上に乗っている入れ歯が支えることになります。噛む力で入れ歯が沈み込む時に上の前歯を下の前歯で突き上げることになり、それが長期間続けば上の前歯はぐらつきが出てきます。この力を本来担うのは奥歯の働きですので、奥歯をお失くしになられると時間の長短はあってもいずれこうした状況になることが多いのが実情です。

前歯の負担が大きく噛む力に耐えきれなくなった結果でした。それに過去に歯をなくされたのは歯周病単独が原因でなくかみしめ癖があり、過度の力を日常的に歯にかけておられたのでした。前回お見えになられた時点は歯周病が重く噛むと痛かったため噛みしめていなかっただけでした。

行ったご提案・治療内容 7年前の治療の際に懸念しご説明していたことが現実になったのは残念ですが、当時上の前歯を最後まで使い続けたいとのご希望でしたのでご本人の中ではご納得がおありのようです。上の前歯を抜歯し総入れ歯を新たに作ることをご提案しました。
状況をご理解いただき治療方針にご納得が得られたので抜歯と保険適用の上顎総入れ歯をお入れしました。その後総入れ歯を真っ二つに割って急患来院されることが複数回起こったことから、一般の人よりかみしめ癖が強い上にそれも相当強い力を入れておられることが推察できました。
この場合金属パーツを一部使って入れ歯自体の強度を上げる方法と、入れ歯の下にインプラントを入れて噛んでも入れ歯が沈まないようにして破損を回避する方法があります。さらに今回は強大な力を無意識に日常的にかける癖があるため、インプラントなしでは入れ歯の下の骨の痩せが著しくなり、短期で入れ歯が合わなくなったり将来的に骨が極端に瘦せてしまうと難症例となって入れ歯でお困りになられるであろうことが予想されることもお話ししました。患者さんは後者の方針をご希望になられたので、上顎に4本のインプラントを入れ歯の下に敷きこむ形でお入れしました。そして上顎部分には薄い金属を使って入れ歯が割れるのを防ぎました。治療後の写真は上顎に4本のインプラントが入り、そのインプラントに覆いかぶさる形で総入れ歯が入った状態です。インプラントは入れ歯が過度に沈み込むのを防止する目的と、磁力により入れ歯と多少の接着力を作用させて入れ歯の安定をよくする目的があります。インプラントの本数を多くすれば入れ歯がない固定式の人工歯も可能ですが、費用がかかるためこの形にご相談の上決まりました。(治療後写真)
治療期間 約2年間
治療回数
費用目安 インプラント208,340円×4本、上顎総義歯345,600円
術後の経過・現在の様子 現在は歯周病のコントロールも良好で日常生活と食生活上の問題はみられません。しかし現状のレントゲン写真からは右上の前方のインプラントには多少の骨の吸収が見られます。食いしばりの副作用だと思われます。定期検診とメンテナンスをお受けになられているので経過観察中です。
治療のリスクについて ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります。
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があり、高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります。
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
クリニックより 前回の治療(注)から7年間順調に推移していましたが、当初懸念していた前歯の喪失が現実の事となりました。ご本人のご希望に沿ったとはいえ、残念な気持ちになりました。その背景には想像を超える食いしばり等がありますが、歯を失っても続くこの癖の怖さを思い知らされます。

今回の治療によりその後5年間に歯やインプラントに異常はなく、また入れ歯自体の破損はその後起こっていませんが、尋常でない食いしばりで今度は入れ歯の人工歯が何度も壊れてきました。結局は弱いどこかが壊れる構図は変わっていませんが、修理対応がしやすく費用がかさばらない入れ歯の人工歯修理を時折行うことでご本人もご納得されています。

(注)前回の治療はこちらをご覧ください。
「40代男性「口全体に歯周病があり噛むと痛みがあって毎回の食事がつらい。しっかり噛めるようになりたい」歯周病治療とインプラントと入れ歯を併用し食生活を改善した症例」

食いしばり癖などの詳細は下記をご覧ください。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖について
歯同志の接触で痛みなどの症状がでる、またその対処法とは

入れ歯の詳細は下記をご覧ください。
義歯の選び方
入れ歯
セラミック(カタナ)など詰め物・被せ物の種類や特徴はこちらをご参照ください。
インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク