30代女性「奥歯が冷たいものでしみる」神経を取らない除菌治療後にセラミックを詰めた症例

2024.07.29

治療前

「奥歯が冷たいものでしみる」とお見えになられた時の状態です。右下7番に虫歯で開いた穴が確認できます。

レントゲンでは白く写っている詰め物の下に黒く写る虫歯が確認できます。この虫歯の大きさから、神経近くまで虫歯が進行していることがわかります。

治療後

虫歯をすべて削り取れば神経が露出するリスクが高く、そうなれば神経を取る必要があります。神経を取ると歯の寿命が短くなるため神経を温存する目的で、除菌治療を行いその上からセラミックを詰めた状態です。

その他

除菌治療で神経を取らずセラミックを詰めた治療から10年が経過していますが、神経を温存できています。

レントゲンでも歯の異常は見られず、神経を取らなかったことで歯の寿命を長くすることができました。

年代と性別 30代・女性
はじめのご相談内容 半年前から右下奥歯が冷たいものがしみて痛い。検診もして欲しいとお見えになられました。
診断結果 拝見すると歯周病検査では大きな問題はありませんでしたが、画像では右下7番に虫歯で欠けた部分があり、またレントゲン写真では右下6・7番の手前側に黒く写っている虫歯が確認できました。
行った治療内容 右下7番は冷たいものがしみ、軽い痛みがあることから虫歯が深く神経近くまで進行している可能性が高く、すべての虫歯を取り除く一般的な虫歯治療を行うと神経が露出して神経を取る根管治療が必要になる懸念がありました。
そうなると歯は血液や水分の補給が絶たれ、乾燥してもろく割れやすくなります。これが神経を取り除くと歯の寿命が5~10年短くなる理由です。また複雑な根の中の一部にしか器具が到達しないため、しつこく残った細菌が後になって繁殖して再治療が必要になるケースもあります。
このようなトラブルを防ぐには神経を取らないで済ませるしかありませんが、虫歯を残すわけにもいきません。その両方のいいとこどりをするのが、神経近くの虫歯はあえて残し、その部分の細菌を抗生物質で除菌する治療です。
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こうしたご説明をしたところ、除菌治療で神経を残すことをご希望になられ、弱った歯を少しでも長持ちさせたいことと、金属の詰め物を避けたいご希望により虫歯治療後にはセラミックの詰め物をお入れすることになりました。
治療初日に虫歯除去と除菌治療後に仮の歯をお入れしました。2日目に手前の右下6番の虫歯治療を行い仮の歯をお入れしました。他の歯の虫歯治療を行っている期間、経過観察を行いましたが異常が見られなかったため、右下6・7番の歯型をお取りし、その次のご予約でセラミックの詰め物(e-Maxインレイ)を歯に接着をして治療が終了しました。(治療後の画像)
このケースのおおよその治療期間 約2か月(経過観察期間も含む)、4回
おおよその費用 214,980円(除菌治療・仮歯2本を含む)
現在の様子 治療後しみや痛みがなくなり、治療した痕跡が分からないほど自然な状態になりました。
最後の画像は治療後10年が経過していますが神経は温存できています。また食生活や日常の問題もみられません。
治療のリスク ・神経の細菌感染は肉眼で判定できないため、治療時に神経に細菌感染が起こっている場合には、治療後に痛みが出て神経を取る治療が必要になる場合があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 全ての虫歯において除菌治療が適用されるわけではありません。明らかに神経が虫歯により感染を起こしている場合は神経を取る根管治療が必要になります。
また除菌治療後しばらくたってから歯の痛みが出て神経を取る治療になるケースも稀ではあっても存在します。肉眼では確認できなかったとしても治療時にすでに神経に感染が及んでいたケースです。こうしたリスクがあっても神経を残して歯の寿命を優先するか否かだと考えています。
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