入れ歯が気になる、食べ物がつまる

入れ歯はご自分の歯の代わりの人工物なので「違和感があり、存在が気になるのは仕方がない」と言われることが多いようです。確かに失くされた歯と同じものではありませんから違和感ゼロは困難ですが、入れ歯設計により極力少なくすることは可能です。
入れ歯のどの部分が原因で「入れ歯が気になる、入れ歯に違和感を感じる」のかは個人によって異なるため実際の対応は個別になりますが、ここでは一般的な原因についてご紹介いたします。
入れ歯の存在感が大きいと感じるのは、入れ歯が大きい、邪魔に感じる、入れ歯によく食べ物がつまる点が多いようです。これらについてお話しを進めますが、「入れ歯で喋りにくい」、「入れ歯の見た目が悪い」場合はページ末の入れ歯関連ページをご覧ください。

目次

入れ歯が邪魔に感じる

入れ歯を入れて異物感や邪魔に感じる場合は、舌が動かしづらい、口の中が狭く感じる、入れ歯が分厚く感じる、圧迫感がある、歯茎と入れ歯の境目が気になるなどが多いようです。その原因は入れ歯によって口の中の舌を動かせるスペースが狭くなっていること、頬や舌の動きに入れ歯が合っていない可能性があります。歯を失う度にかみ合わせが低くなる傾向にあるため、このスペースは段々狭くなることが多いからです。
また逆に適正なかみ合わせより高い総入れ歯の場合は、物をほうばった様な異物感や唇が閉じにくく噛みづらくなります。

部分入れ歯の一部が気になる

部分入れ歯は口の中で動かないようにさせるために残った歯に針金(金具)などを引っ掛ける構造です。この針金が邪魔に感じることがあります。また左右の入れ歯をつなげている部分に舌が触れて異物感を感じることもあります。
このような場合には入れ歯の一部を気になる部分からずらして設置する、材質を変更して厚みを薄くするなど入れ歯の設計を変更して軽減できる場合があります。また外見上気になる場合は、入れ歯の歯に引っ掛ける針金(金具)を目立たなくすることもできます。詳細は「入れ歯の見た目が悪い」をご覧ください。

入れ歯の大きさはどのように決まるか

基本的には失った歯の本数と場所、あごの骨の痩せ方によって入れ歯の大きさはほとんど決まってしまいます。しかし大き過ぎる入れ歯は異物感があり、小さな入れ歯は異物感は少ないものの安定性が悪い上に噛む力を負担する能力が劣り、痛みや食べカスが詰まりやすい傾向にあります。しかしあごの骨のふくらみが十分に残っているケースは入れ歯の安定がよく、食いしばりなどの悪い癖がなければ、上の入れ歯の後縁を短くしたり入れ歯の上顎部分の入れ歯を小ささくして異物感を少なくすることもできます。
また入れ歯の安定を重視し入れ歯そのものの大きさを変えずに一部に金属を用いて入れ歯の厚みを薄くすることで異物感を少なくすることも症例によりできます。
食べる・話すなどの機能回復、噛む力を十分負担できる入れ歯の大きさ、異和感などの個人的な感覚の丁度いいバランスをどこに設定するか、一人一人異なる環境とご希望に照らし合わせながら試行錯誤することが本来の入れ歯製作には必要です。

総入れ歯を安定させる方法

総入れ歯の安定は、あごや頬の粘膜に吸盤のように吸い付くメカニズムです。そのため入れ歯の淵から空気が入れば吸盤と同じくパカッと簡単に外れてしまいます。部分入れ歯と一見同じように見えるかもしれませんが、空気が入らないように入れ歯の淵の形や厚みを微妙に調整して吸盤効果が得られるかどうかが生命線なのです。また吸盤効果が高ければ入れ歯の下に食べ物が入り込むことが非常に少なくなります。
しかし口の中の粘膜は噛むものによって形が変わり、どう喋るかによっても形が変わる変幻自在なもので、形があって形がないものです。変幻自在に様々な形に変わる粘膜の歯型(正確には粘膜の型取り)を取ってもその時だけの形にしかなりません。別な時には違う形に変化するため型取りが難しいのです。従って仮の入れ歯を使いながら日々の粘膜の形の最大公約数を期間と手間をかけて仮の入れ歯に写し取っていく地道な治療が必要になります。

総入れ歯の大きさ

人は大きい入れ歯には即座に異物感を感じる一方で、小さな入れ歯には感じません。一般的に簡易的な保険治療で小さな総入れ歯が多いのは、この最大公約数を求める型取り工程を省略して入れ歯を小さくしておけば不満を訴える方が少なくなるからです。しかし小さな入れ歯は小さな吸盤(吸盤の役割が不十分)になって外れやすい上に安定が悪くなります。またあごの土手と接触している面積が狭く噛む力が狭い面積に加わるため噛むと痛い入れ歯になりがちです。雪の上を面積の広いかんじきでなく、面積の狭い竹馬で歩くようなもので雪に食い込んでしまうからです。
これがなかなか満足した総入れ歯に出会えない理由の一つです。
小さい吸盤より大きい吸盤の方が吸い付く力が強いため、入れ歯も大きく広い入れ歯の方が吸い付きが強く噛む力で入れ歯が揺すられても安定して外れにくくなります。重力に逆らっているにもかかわらず、下あごの総入れ歯より上あごの総入れ歯の方が吸着し安定がいいのは入れ歯の面積が広く大きな吸盤になるからです。
部分入れ歯のように小さ過ぎる入れ歯は吸盤効果が得られずすぐに外れてきます。この大き過ぎず小さ過ぎないちょうどいい具合を探し吸盤のようにピッタリ吸い付いて外れにくい入れ歯を作り上げるには、前に「総入れ歯を安定させる方法」でお話ししたお互いの忍耐が必要になります。

入れ歯の下に食べ物が入る

部分入れ歯にも言えることですが特に総入れ歯の下に食べ物が入り込み、うっとうしく感じることがあります。これは噛む度に入れ歯が動くことと、食べ物を噛んだ後再度噛むために口を開くと入れ歯が歯茎から剥がされるため、その瞬間に入れ歯と粘膜の間に食べ物が入り込むことで起こります。入れ歯は構造上、粘膜とくっついていないため避けられないことで、この現象は大なり小なり起こってしまいます。歯に針金等を引っ掛けて入れ歯を安定させる部分入れ歯はこの点で総入れ歯より有利ですが、歯と入れ歯の境目に詰まりやすい問題もあります。この解消には歯茎との適合精度を上げる、食べたり喋る時に動く頬などとの形に入れ歯の淵を適合させる方法があります。
また前に「総入れ歯を安定させる方法」でお話しした小さすぎる入れ歯は頬の粘膜やあごの粘膜と入れ歯の間に空間があるため、その空間に食べ物が残ることと、残った食べ物が入れ歯が動いた時に入れ歯の下に潜り込むことになります。
粘膜の動きとマッチさせてこの空間を可能な限り少なくすることや先ほど述べた吸盤効果を上げることで噛んだ時の入れ歯の浮き上がりが少なくなり、入れ歯の下に入る食べ物の量を最小限に抑えることは可能です。

受け入れられる入れ歯にするには

適度な大きさがあり、複雑に変化する粘膜の動きを邪魔をせず、かつ粘膜と入れ歯の間の空間を最小限にする入れ歯は異物感が少なく、入れ歯が気にならなくなる必須条件です。
また小さな入れ歯は大きさが小さいので人工の歯も内側に配置されることが多く、これがよく噛めない原因の一つになります。逆に大きすぎる入れ歯は口や頬、舌などが動くたびに当たって入れ歯がズレやすくなります。

この入れ歯のズレを最小限に抑え吸盤効果を最大限得るためには、小さすぎず大きすぎず、口や頬、舌などの動きを繰り返し入れ歯の形に転写しながら、土手の形を模索し、どこで噛むのがベストか人工の歯の位置を試行錯誤しながら決めていく根気がお互いに必要です。
そして歯を何年もかけて段々と失ってきた過程であごの位置も本来の位置とズレてしまっていることが往々にしてあるため、そのままのあごの位置では入れ歯が安定しなかったり、力が入らずよく噛めない入れ歯にしかなりません。そういう入れ歯は老けて見える高さの低い口元が引っ込んだ入れ歯です。しかし長い年月であごのズレに身体が適応してしまっているため急激な回復には身体の抵抗や異和感がつきまといます。この修正にも時間が必要です。
このように一度だけの簡単な型取りで短時間に作る入れ歯では手に入らないものがあることをご理解いただけたでしょうか。手足となるような入れ歯を手に入れるには患者さまにもこれにじっくりと付き合って頂かなければなりません。これからの人生のパートナーである入れ歯に、時間と労力をあげていいただければ幸いです。

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