歯科麻酔とは(詳細、効果時間、食事、痛みなど)

歯科麻酔は何時間効いているのか、麻酔後にどれだけ経てば食事をしていいのか、麻酔の痛みを軽減できないかなどのご質問をいただくことがあります。

歯科麻酔とは

歯科で使われる麻酔には局所麻酔、静脈内鎮静法(血管内)、吸入鎮静法(笑気ガス)があります。
歯科(歯医者)で使われる大半の麻酔は局所麻酔で、治療をする部分に麻酔薬を注射して治療時の痛みをなくす方法です。
局所麻酔には浸潤麻酔、伝達麻酔、表面麻酔があります。

歯科麻酔の効果時間

時計
痛みを伴う歯科治療には虫歯治療、歯周治療、抜歯やインプラント治療などの外科治療などがありますが、短いものでも30分、長いものでは1時間以上の治療時間が必要です。
その時間内は無痛状態である必要がありますが、人によって代謝が違うためそれ以上の麻酔の効果時間が必要になります。
治療内容や予想治療時間、その方の代謝などによって麻酔量や麻酔する場所が変るため、一概に何時間で麻酔が切れるとは断言できません。
一般的な浸潤麻酔の効果時間の目安は2~3時間、伝達麻酔は4~6時間とされていますので参考にされてください。
表面麻酔は無痛効果が少ない分だけ早く効果はなくなり10~20分ほどです。

歯科麻酔時の痛み

麻酔注射時の痛みは2つあります。注射針を歯茎に刺す時の痛みと、麻酔薬を歯茎内に入れる時です。
また注射針を刺す場所によっても痛みは変わります。
当院での麻酔時の痛みに対する対処法をご紹介します。

1.注射針を効果を損なわない範囲でできるだけ痛みを感じにくい場所に刺す

前歯
極細の針を使い痛みの少ない場所を選んでいます。

2.麻酔薬をできるだけ低速で注入速度を一定に保つ

電動注射器
手では注入速度にばらつきが出るため電動の注射器を用いて低速で速度を一定にしています。

3.低温保存されている麻酔薬を使わない

体温と麻酔薬の温度差が大きいと痛みを感じやすいため、品質維持のため冷蔵保管されている麻酔薬を常温に戻してから使用するようにしています。

4.注射針を刺す場所に表面麻酔などで感覚を多少鈍くしておく(痛み軽減効果は低い)

この中で1から3が痛みの軽減に有効で当院では主に行っています。

麻酔が効きにくい場合とは

しみる
時折麻酔効果が弱いケースに遭遇します。その場合は治療の日を改めたり投薬により炎症状態が治まるのを待つ、精神的に落ち着くのを待つ、睡眠不足や体調不良が改善してから治療を行うなどの方法があります。
麻酔が効きづらい、効きにくい原因をご紹介します。
・その部分の骨が厚く麻酔薬が浸透しづらい(伝達麻酔の併用により対処)
・痛み・膿などの炎症状態があり組織が酸性になっている場合
・メンタル面(不安、緊張、痛みなどの興奮状態)で麻酔効果が発生するレベルが上昇している
・飲酒やカフェイン摂取
・睡眠不足や体調不良

歯科麻酔後のご注意と食事

食べる女性
麻酔が効いた状態はしびれで感覚がないため、間違って頬や唇を噛んでしまう、また頬と舌でうまく歯の上に食べ物を運びづらいためうまく噛めない、飲食の食べこぼしなどが起きます。
そのため間違って噛んでしまった頬や唇に後になって傷や口内炎になってつらい思いをすることがあります。
麻酔の効果時間でお話しした時間が一つの目安ですが、麻酔によるしびれ感覚がなくなれば基本的に食事をされて結構です。

歯科麻酔の安全性

一般的に歯科で行われている麻酔は少量の麻酔薬を治療部分付近に限局して用いる局所麻酔であるため、全身的な悪影響がでる心配はほぼないとされています。
健康な成人では一般的な局所麻酔カートリッジ14本まで可能ですが、通常の治療では1本程度(多くて2本)で行えます。
産科でも必要に応じて局所麻酔を使っていますが、妊婦さんや授乳中の方はご希望があれば麻酔をしない治療の受診も可能です。
しかしその場合できる処置に限りがあることと、痛みを我慢して下腹部に力を入れるなど別の問題も起こる可能性が懸念されます。

麻酔薬も薬の一つであるため気分が悪くなる、めまい、眠気、けいれん、蕁麻疹などの副作用も報告されています。
麻酔後にドキドキすることが稀に起こりますが、麻酔薬に含まれるエピネフリン(アドレナリン)の副作用が考えられます。
これらの副作用には患者さんの不安や緊張などのメンタル部分、寝不足、体調不良なども関与していると考えられています。
またまれに(0.0054%)アナフィラキシーショックの報告もあります。
文末に麻酔薬の成分を記載しましたのでご興味がおありの方はご覧ください。

最後に

痛み
元々歯科治療には痛みを伴うことがあり、さらに歯に分布している三叉神経は痛みに敏感な神経です。
そのため歯の痛みは「鬼も泣く」と評されるほど我慢ならないものです。
その治療の痛みを軽減する目的で用いる麻酔が痛いのは皮肉な話ですが、
先ほど述べた不安や恐怖などのメンタル面が加わればわずかな事でも痛みとして認識されてしまします。
治療前にご遠慮なくお話ししてください。
可能な限り痛みに配慮した治療を心がけておりますのでご安心ください。

麻酔薬の成分

麻酔薬にはリドカイン、プロピトカイン、メピバカインなどが配合されておりこれらの成分により麻酔効果が得られます。
また血流によって麻酔がその場所から運び出されてしまうと麻酔効果時間が短くなるため、多くはエピネフリン(アドレナリン)も配合されています。
エピネフリン(アドレナリン)の血管収縮作用により麻酔の効果時間を長くし、多量の麻酔薬を使わないですむためです。
しかしエピネフリン(アドレナリン)には血圧、心拍数、血糖値を一時的に上昇させる作用もあり、高血圧や心臓疾患の方は治療前に歯科医にお伝えください。この場合でも通常は安静にしていれば収まります。
麻酔でドキドキすることがあるのはこの成分による血圧上昇といわれています。
麻酔効果時間が短くなりますが、エピネフリン(アドレナリン)を含まない麻酔薬もあります