入れ歯・ブリッジ・インプラントどれがいいか

歯を失ったら取り外し式の入れ歯、歯に接着して動かないブリッジ、歯と同じように骨に埋め込み動かないインプラント、どれがいいのかよくご質問をいただきます。
しかしこれらの治療法は目的ではなく手段です。どれがいいのかではなく、どれが今とこれからの食生活にとってご自分に相応しいのかだと思います。それぞれに特徴があるため、どのような食生活と日常をお送りになられたいのか、それを実現するにはどの選択肢がいいのか、という視点でお考えになられることをご提案しています。それぞれの特徴については「義歯の選び方」をご覧ください。
ここではご自分に最も相応しいものを判断されるために、入れ歯・ブリッジ・インプラントの垣根を超えた複合的なお話しをさせていただきます。

目次

入れ歯とブリッジの違い

歯を失くされた後の機能回復方法の一つにブリッジがあります。ブリッジとは図のように失くされた歯の両側の歯を削り失くされた部分も含めて連続した人工の歯をセメントで接着するものです。入れ歯との違いをご紹介いたします。
〇失くした歯の場所
歯を失くされた場所の前後に歯がないと作ることができません。一方で入れ歯はどの様な症例でも可能です。
〇構造的な制限
ブリッジは噛む力を失った歯の分までブリッジを支える歯で負担する構造であるため、ブリッジは失った歯の本数が多い場合や一番後ろの歯がない場合など、構造的や噛む力を支える許容範囲によりブリッジが適用出来なくなる制限があります。一方で入れ歯にはこうした制限はなくどのような症例でも可能です。
〇丈夫な歯の有無
ブリッジは上記の理由により支えとなる失った歯の両隣の歯には負担が増します。そのためその歯がしっかりして丈夫な歯であることがブリッジの前提条件となります。一方で入れ歯はそれ以外の歯の力や歯茎の支えを借りることができる場合があり、その点ではブリッジより有利です。
〇清掃性
ブリッジはセメントで接着するので動かずよく噛める反面、取り外しができないため掃除がしづらい傾向にあります。しかし歯と同じように歯間ブラシなどで丁寧にお掃除すれば問題にはなりません。一方入れ歯は取り外しが出来るため、清掃は比較的容易です。ただ、お口の中とは別に清掃する必要があります。
〇歯を削る量
ブリッジは支えとなる歯をかなり削る必要があります。一方で入れ歯は沈み込みを防止するための爪の受けだけのごく少量で済みます。しかしブリッジを支える歯に現在人工の歯が入っている場合は既に削ってあるため大きな差はなくなります。
〇異物感
ブリッジは歯と同じほどの大きさであるため口の中の異物感が少ない反面、入れ歯は人工の歯以外にも歯に引っ掛ける針金(金具)やピンク色の歯茎部分があるため、異物感を感じやすい傾向にあります。ただし人それぞれではありますが、慣れて気にならなくなることもあります。

このようにブリッジと入れ歯には違いがありますが、どちらがいいという話でなく、それぞれにメリット・デメリットを勘案しながら今のご不満内容、回復されたい問題の程度などを伺い、お口全体の視点や噛み癖などを考慮してどちらがご希望を実現しやすいかをご提案させていただきます。
残っている歯の本数や状態によっては、ご希望とできることの乖離が生じることがあります。その場合は残っている歯の治療を行い、歯の実力を底上げすることでご希望の回復程度に極力近づけていく努力をして参ります。

入れ歯とインプラントの違い

〇噛める能力
入れ歯は基本的には噛む力を歯茎で負担する構造であるのに対して、インプラントは失くした歯の代わりに骨の中に植わったインプラントが負担します。そのため骨とくっついてビクとも動かないインプラントは硬い物も平気で噛み砕ける能力がありますが、入れ歯は歯茎という軟かい組織の上に乗せているため噛む力で沈み込み、また動くため最大でも天然の歯の4割程度しか噛むことができません。現実にはこの上限に達していないことが圧倒的に多いため、噛む能力に関しては健康であった天然の歯と同等に噛めるインプラントに軍配があがります。一方で噛むことにこだわりのない場合は判断要素にはならないでしょう。
またこの構造の違いにより、歯茎の痛みや入れ歯が外れやすいなど入れ歯特有の問題が発生しない点もインプラントに有利です。しかし入れ歯も時間をかけてしっかりと作り上げればこうした問題はなくなります。
〇噛み合わせの維持
人間も生物の一つとして老化を避けることは残念ながらできません。歯も口の機能も衰えていきますが、顕著な変化は歯を失うことによる噛み合わせの変化(狂い)です。生体として本来適していた噛み合わせが変化することは、他の歯の負担過重やあごの関節への負担となり失う歯が加速度的に増え食生活の劣化を招く、負の連鎖が起こります。
この連鎖を止め、老化にあがらう方法は本来の噛み合わせを維持することです。そのためには噛む強い力に耐えうる強度が必要で、骨の中にしっかりと植わった歯やインプラントが必要です。この点では入れ歯は噛むと沈み込むため、残念ながら維持するには不十分だと言わざるを得ません。食べられることと維持できることは違うのです。
〇異物感
インプラントは失くした歯とほぼ同じ大きさの人工歯だけが口の中に入りますが、入れ歯はその人工歯以外にも入れ歯を安定させるため他の歯に引っ掛ける針金(金具)やピンク色の歯茎部分が存在します。また症例によっては前歯の内側や上顎の内側に入れ歯の部品が必要になることもあります。こうした人工の歯以外の部分により異物感や口の中が狭く感じる事や、発音に慣れが必要な場合があります。
〇治療期間
症例にもよりますが入れ歯の製作期間は約1か月なのに対して、インプラントは条件が良くても数か月、場合によっては半年以上の期間がかかります。困っている今に即対応できるは入れ歯です。
〇手術の必要性
インプラントには手術が必要ですが、入れ歯は外科的な治療は必要ありません。インプラント手術をお受けになり翌日痛みなどでお困りの方はほとんどいらっしゃいませんが、それでも手術に抵抗がおありの方は入れ歯がいいでしょう。
〇簡便性
入れ歯は外せるため日頃のお掃除が簡単です。一方でインプラントはご自分の歯と同じようにお口の中を毎日清掃する必要があります。また入れ歯は修理が容易でもあります。

こうして見ると入れ歯よりインプラントが優れているように見えるかもしれませんが、私達はそうは考えておりません。今何を不満とされているのか、今後のどんな食生活や日常をご希望されているのかで選択されればいいでしょう。どなたにでもいいものはなく取捨選択だと思います。私たちはそのゴールにまで並走するよき水先案内人でいたいと考えています。

ブリッジとインプラントの違い

ブリッジとインプラントには入れ歯のような人工歯以外の部分がありません。異物感では優劣がつかないでしょうし、ブリッジを支える歯がしっかりとしていれば噛む能力にも大差はありません。この点だけ見れば手術が不要で、治療期間が短いブリッジが優れているように見えることでしょう。ただしご注意していただきたいことをご紹介いたします。
〇歯を削る必要性
ブリッジは失くした歯の両隣の歯を削ってつなげる構造です。今の問題ではありませんが、歯は削れば弱くなります。しかし虫歯などで現在人工の歯が既に入っている場合は、歯を削る量は少なくなり大きなデメリットにはなりません。
一方でインプラントは他の歯を削る必要がないためこの点ではメリットです。
〇残った歯への負担
ブリッジは支えとなる両隣の歯が失くした歯の分まで噛む力を負担するため、長年の負担の蓄積により歯にはマイナスに働きます。そして仮にその歯が、神経がない歯であれば割れて抜歯になるリスクが増えます。
この残った歯に余分な噛む力を負担させるデメリットがない点がインプラントの最大の利点だと私は考えています。ブリッジとインプラント、どちらも人工的な物で条件さえ揃えば手に入るものですがご自分の歯は二度と手に入らない、この一点だけでも非常に価値のある事だと思います。

通常のブリッジはご自身の歯同士だけで作るものですが、インプラント同士のブリッジも可能です。しかしご自身の歯とインプラントを支えにしたブリッジは、それぞれの微妙な動きが違うため学会でも禁忌とされています。

失った歯の本数によって変わる治療法

上顎か下顎の一つの顎の失った歯の本数について対処法をご紹介いたします。

歯を1~2本失った場合

失った場所や歯や骨の状態など症例にもよりますが、一般的には入れ歯・ブリッジ・インプラントどれでも本数的には可能です。それぞれの特徴がご希望される食生活と日常に合致している選択肢をお選びになられるといいでしょう。

歯を3本失った場合

失った場所やお口の状態で変わるため実際には拝見してご相談させていただきますが、ここでは一般的な目安をお話しいたします。
〇飛び石のように1本失った場所の両隣に歯がある場合
失った場所が主に奥歯の場合は、ご自身の歯の奥歯と前歯の植わっている方向が違うため、ブリッジでの対応は困難なケースが大半だと思われます。インプラントか入れ歯が適応症です。
失った場所が主に前歯の場合は、歯の植わっている方向がほぼ並行であればブリッジでの対応も症例により可能な場合があります。しかしブリッジが大きくなり精度的な問題等から積極的にはお勧めいたしません。可能であればインプラントによる対処が支える歯への負担軽減、隣の歯を削らなくて済む点、機能的将来的な面からいいと思います。インプラント以外では入れ歯がいいでしょう。
〇歯を連続3本失った場合
歯と歯の間の距離が長くなるため支える歯に負担がかかり過ぎることから、基本的にはブリッジは困難です。そのため2~3本のインプラントか入れ歯の選択になります。

歯を4本以上失った場合

ご自身の歯を支えにするブリッジは困難となり、基本的には入れ歯が適応症です。しかしインプラントを支えにしたブリッジは症例によっては可能になることもあります。
部分入れ歯や総入れ歯の外れやすさや噛みやすさなどの機能性をもっと向上させたい、また入れ歯の大きさなどの快適性をさらにお求めになられる場合は後でお話しする入れ歯とインプラントの併用も条件が許せば可能です。

インプラントと入れ歯を併用するメリット

〇噛める動かない満足度の高い入れ歯になる

入れ歯が痛い、外れやすい理由の一つがあごの骨の痩せです。この状態で痛まない、外れにくい入れ歯にするために、一部分インプラントを入れて入れ歯の安定と噛める能力を助けてもらう方法です。ものをかめる能力が飛躍的に上がり満足度の高い入れ歯になります。

〇費用が抑えられる

歯がない場所全てをインプラントに置き換えると、インプラントの本数が多くなるため費用が大きくなります。メインを入れ歯として、入れ歯の使用感を向上させる目的で部分的にインプラントを併用すればインプラントの本数を減らすことができ費用を抑えることができます。

インプラントに磁石を装着するマグネットタイプ、インプラントに入れ歯との接合部品を装着するタイプがあります。接合部品にはインプラントメーカーにより異なりますがボールアバットメントやロケーター等色々な種類があります。ご希望や症例によって適したタイプをご紹介させていただきます。

インプラントを用いたブリッジのメリット

失くしたご自身の歯の代用としてインプラントを用いれば、失くした本数分のインプラントが必要になります。理想的ではありますが、費用がかさむ欠点があります。症例によっては飛び石のように中間を省いたインプラントでブリッジを作製することができます。省いた分だけインプラントの本数が減らせるため、その分の費用を抑えることができます。
噛み合う歯の本数や位置、噛む力、失くされた歯の本数や位置などによって治療の可否や設計が異なりますのでご相談させていただきます。

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