歯がグラグラする
食事や歯磨きの際に歯のグラつきに気づき、慌てて来院されることがあります。力を入れてその歯で噛めない、元通りに戻るのだろうか、歯を失うのでは?など色々な不満と不安を抱えていらっしゃいます。しかし経緯を伺うとグラつくかなり前から異和感はあったものの残念ながら放置された方が多いようです。
グラつきにはいくつかの原因があり、その原因によって対処法は変わってきますのでご紹介いたします。
目次
歯周病で歯がグラつく
歯がグラつく最大の原因が歯周病です。歯は骨とは直接くっついておらず、間に歯根膜という組織があります。歯根膜のクッション作用で正常では0.2mm程度の揺れがありますが、この揺れは小さいため自覚することはありません。しかし歯周病菌による感染が広く深く進行していくと歯を支えている組織の炎症によって歯の揺れ幅が大きくなります。さらに歯周病の進行によって歯を支える骨が溶けてくると揺れ幅がもっと増えてグラつきを感じるようになります。したがってグラつきを感じた時はかなり歯周病は進行してしまっているとお考え下さい。
一度溶けてなくなった骨の回復はかなり困難なため、早く治療をお受けになりこれ以上の進行を止めることが大切です。歯を上から押して上下にグラつく場合は歯周病末期のため、他の歯への悪影響やこれ以上の骨の喪失を防ぐために残念ながら抜歯しか方法はなくなります。
歯周病の詳細はこちらをご覧ください。
歯ぎしり・食いしばりなど強い外力で歯がグラつく
歯ぎしりや食いしばり、一部の特定の歯でいつも楊枝やパイプなどをくわえている、歯並びが悪い、歯の噛み合わせの不調和がある、歯をぶつけたなどが原因で歯がグラつくことがあります。過剰な強い力がかかった場合だけでなく、弱い力でも慢性的な力がかかる場合でも起きます。特に歯周病を併発している場合には顕著になります。
噛み合わせの不調和は一見歯並びがよく見えても起こることがあるため、下記の項目をご自分でチェックされてみるのもいいでしょう。
・歯の噛み合わせ部分(特に前歯や糸切歯の先端)が欠けている、ギザギザしている、凹んでいるなど元々の状態から削れたりすり減っている
・下あごの小臼歯の内側や上顎の真ん中にこぶ状のふくらみがある
・歯と歯茎の境目にえぐれや凹みがあり、冷たいものや歯ブラシが当たるとしみる
・歯茎の痩せがある
・歯のぐらつきがある
このような状態は噛み合わせの不調和だけでなく、歯ぎしりや食いしばりでも起こります。起床時に顎にだるさを感じる場合は、夜間の歯ぎしり等を疑っていいでしょう。歯ぎしりや食いしばりは最大でご自分の体重以上の力が歯にかかり、それが続くものですから歯が悲鳴を上げるのは当然のことなのです。詳しくは別のページに譲りますが、神様が人間を作ったとするならば、歯は本来食物を噛み栄養補給するためにあります。食べるのにはそんな過剰な強い力は必要ないため、噛みしめや食いしばりで異常に強い力を歯に加えている状態は、人間を作った時の想定外だということになります。
このような悪い習慣がなく、歯をぶつけたなど一時的な過剰に強くない力によるグラつきは安静にしておく、または受診して他の歯と一時的に固定するなどして回復することもあります。こうした外力によるグラつきへの回復力は大人に比べて子供は高い傾向にあります。
歯ぎしり・食いしばりの詳細はこちらをご覧ください。
歯の根が割れた・折れて歯がグラつく
歯の根が折れる・割れることは大きく進行した虫歯や過去に歯の神経を取った歯に多く、歯をぶつけた場合にも起こることがあります。このような歯で硬い物を噛んだ、歯ぎしりや食いしばり習慣があるなどがきっかけになることが多いようです。歯の表面が一部小さく欠けた場合には、外力による一時的なグラつきは出ても、歯の根が折れる・割れることは多くありません。しばらく経ってもグラつきが止まらない場合は根の折れ・割れの疑いがあります。
しかしグラつきを感じた時は即座に受診されることをお勧めいたします。根の折れ・割れから感染が起こると感染が一気に骨の中で広がり、骨を大きく失ってしまいます。その結果インプラント治療が受けられなくなってしまったケースを多数経験しています。こうなってしまえばその後の食生活や残った歯への悪影響が免れなくなってしまいます。
根の折れ・割れが起こると、基本的には抜歯の適応になります。折れ・割れ部分を接着できないかとよく聞かれますが、一度歯を抜いて折れ・割れ部分を接着しても噛む力に対して強度的に弱いことと、一度抜いた歯がうまく生体とくっつかなかった場合にさらに大きな骨の喪失を招くリスクがあります。今なら抜歯後にインプラントによる回復が期待できる可能性を捨ててまでして、リスクを取るかどうかという考え方になるでしょう。
被せ物などが外れかかって歯がグラつく
被せ物や神経のない歯の内部に入れる土台は歯とセメントで接着しています。何らかの原因でこの接着力がなくなると、被せ物が外れかかってグラついてきます。歯の根のグラつきはなく、また被せ物の内部でご自身の歯質が割れることもなく被せ物だけのグラつきであれば、再度セメントで接着できる場合があります。
ただし接着だけに問題が合った場合はいいのですが、一度接着が外れたという事実から残っている歯質の量や歯の形態などに問題があるケースが多いのです。被せ物周囲の虫歯が原因で外れた場合や、外れにくい修正が可能であれば被せ物の再製作をお勧めいたします。被せ物よりご自身の歯の方が大切だと考えるためです。
根尖性歯周炎で歯がグラつく
歯の根の周囲に炎症が起こり、歯が浮いたようなグラつきを感じることがあります。虫歯から歯の内部の神経部分に感染が進行し、さらに感染が根の先の骨の中まで進んだ状態です。根の周囲が炎症状態であるため、根の表面を覆っている歯根膜が炎症を起こし歯のグラつきを感じるのです。根尖性歯周炎では他に歯の痛みや歯茎の腫れ、噛むと痛いなどの症状が一部でも起こってきます。
感染と炎症を止めて歯を守るために根管治療が必要です。重症では歯を失うこともありますので、できるだけ早期に受診ください。
根管治療の詳細はこちらをご覧ください。
最後に
ここまで歯のグラつきに関してご紹介して参りましたが、原因が歯周病、根尖性歯周炎、その他の原因であれ、炎症を伴っている場合は要注意です。自然に治らない可能性が高く、炎症の拡大によりさらなる被害を被る可能性があるためです。できるだけ早く受診され、二度と手に入らないかけがえのないご自身の歯をお守りください。