銀歯が臭い原因

銀歯を入れた歯が臭う、銀歯が取れた歯が臭うにはそれなりの原因があります。基本的には銀歯に限らず、お口の中で生じる臭いの原因のほとんどは細菌の繁殖によるものです。細菌が代謝する過程で生じる物質が臭いの正体です。すなわち臭うことはお口の中が細菌が繁殖しやすい環境になっているのです。体調やその時々のお口の環境の変化によって細菌代謝物質の量が増えたり質が変わることで臭いが増減します。

お口の中は常に唾液で濡れていて水分が豊富、食事による栄養が豊富、温度が37度と細菌にとってとても繁殖しやすい環境が3拍子揃っています。そのため臭いを少なくしたり発生しにくくするためには、細菌数を減少させるかお口の中を繁殖しにくい環境に変化させる事が大切になります。
臭いの原因別に対処法をご紹介してみましょう。

目次

銀歯自体に原因がある場合

1.銀歯と歯の間に隙間や段差がある

銀歯の入った歯にデンタルフロスや糸ようじを入れた後に臭いや変な味がした、銀歯の歯を舌で触るとザラつきを感じたことはありませんか?この臭いやザラつきの原因の一つが銀歯と歯の境目の隙間や段差です。
銀歯の作製精度が甘く銀歯と歯の間にミクロン単位の隙間や段差がある場合、それが原因で臭う事があります。隙間や段差は歯ブラシが届きにくく磨くことが困難です。そのため段差や隙間に残った食べかす等を栄養源にして細菌が繁殖して臭いが発生します。
また銀歯の金属自体の硬さが歯より硬いため、銀歯を歯にくっつけているセメントが崩壊して隙間や段差を作りやすいのです。できれば歯と同じ位の硬さの材料を使うのが理想です。そして近年のセメントは唾液に溶けづらく改良されてきていますが、古いセメントは唾液に溶けるため隙間や段差を生みやすくなります。歯科医院で定期的に銀歯と歯の間に隙間や段差がないかをチェックされるといいでしょう。

対処法はこの原因をなくすことです。被せものや詰め物を精度がよく、さらに歯と似た硬さの物に置き換えることで細菌の繁殖しやすい環境をなくすことが出来ます。精度が高く作製されたジルコニアやセラミックを選択されれば、プラークが付着しづらい点においても有利です。
段差や隙間がありその間で細菌が繁殖しているということは、臭いだけにとどまらず虫歯になる可能性が非常に高い場所ですから、出来るだけ早めに治療されることをお勧めいたします。プラークは臭いだけでなく、虫歯や歯周病の直接原因になるからです。

2.銀歯が取れかかっている

銀歯が取れかかっている状態は、歯と銀歯がくっついていないため1.の銀歯と歯の間に隙間や段差がある状態と同じだとお考え下さい。取れかかっているだけで虫歯が出来ていなければ一度外して付け直すことが出来ますが、取れたり取れかかるには原因があって起きるため、それを解決しないとまた同じことが起きます。そして銀歯が取れてかみ合わせが狂う、虫歯になるリスクをはらんだ物を基本的にはそのまま付け直すことは避けた方がいいでしょう。
仮に付け直して、また同じことが起き、自分の知らない間に虫歯になってしまうかもしれません。詰め物は替えが効きますが、ご自身の歯は失うなど被害を受けてしまえば元には戻らないからです。なぜ取れるのか原因を精査し、それを改善した状態で治すことが大切だと思います。

3.銀歯の下に虫歯がある

上記の二つが元々の原因ですが、その状態が放置されれば歯と銀歯の境目がしっかりと磨くことができない環境が続きます。そのことが二次的原因となって銀歯の縁や下に虫歯が発生します。虫歯は歯に穴が開いている状態ですので、そこに食べかすが溜まり細菌の繁殖が起き、臭いの発生源となります。
さらに虫歯は放っておくとどんどん大きくなるため、臭いだけでは済まなくなります。虫歯が進行すれば、歯髄炎、根尖性歯周炎と病状が進んでいき、歯の寿命を損なうだけでなく、歯が脆くなり歯を失うリスクも大きくなります。この負の連鎖を止めるために、臭いで異変に気づけたのであれば、その段階で出来るだけ早めに治療をすることをお勧めします。 虫歯治療の詳細はこちらへ。

銀歯が入っている歯自体に原因がある場合

1.歯周病がある

歯周病は歯茎と歯茎の下にある骨の病気です。プラークと呼ばれる細菌の塊が炎症、化膿を起こして生じます。細菌の繁殖が病気の原因ですから、細菌が繁殖しやすい環境がお口の中にあるため、臭いがします。口臭の中でも病的な口臭に分類されます。歯周病自体慢性的に生じる症状をあまり伴わない病気であるため、ご自身では気付かず周囲の人から口臭を指摘されて口臭の改善のため来院されることが多々あります。病状の進行程度により臭いの強弱があり、重度ではその人が近くに来ただけでも臭うレベルになりますが、日常常に臭いにさらされているご本人は臭いに慣れてしまってさほど感じていない場合があります。
対処法は原因になっている歯周病の治療です。プラーク、歯石の除去、適切な歯ブラシ清掃の獲得、生活の改善などが基本です。また一本だけ歯周病になるケースは少なく、お口の中全体の環境が悪いため、複数の歯が歯周病になっている可能性があります。

2.根尖性歯周炎がある

銀歯が入っている歯が進行した虫歯になっている、もしくは過去に根の治療を受けたが再感染を起こしているなど、根尖性歯周炎になると臭いの原因になることがあります。歯の根の先で化膿が生じ、膿が溜まります。その溜まった膿が骨と歯茎を突き破ってお口の中に出てきた場合に悪臭がします。放置しておくと感染が拡大し化膿により骨がどんどん無くなっていきます。最後には歯を支える骨がなくなり歯を失うことになります。
対処法は被せ物、土台、虫歯等を全て除去して、根の治療(根管治療)を行います。

3.プラークコントロールが不十分

先ほどお口の中は細菌が繁殖しやすい環境が揃っていることをご紹介いたしました。そのため虫歯や歯周病が発生しやすいのです。そして臭いの発生源にもなります。病気や臭いの元はプラークを呼ばれる細菌の塊ですから、予防と治療のために歯磨き等が重要になってきます。しかしこの清掃が不十分であれば、歯ブラシが当たっていない歯の表面にプラーク(細菌の塊)が繁殖します。
プラークは1gでおおよそ一億個もの細菌がいます。これは糞便と同じレベルの細菌数です。また、プラークが形成されて時間が経過すると、菌種が変化していき、空気が無い状況で繁殖する嫌気性菌の割合が増えていきます。嫌気性菌は臭いの元となる物質を生み出すため、口臭の原因となります。どうしても自己流磨きになりがちですので、ご自分に適した磨き方や道具を歯医者さんに相談し見直されると良いでしょう。一度身に着けて習慣化すれば一生の宝となります。

臭わない日々のために

臭いにはいくつかの原因があり、その対処法があることがご理解いただけたでしょうか。お口の中に生じる変化や症状は病気や病気の原因があるサインです。しみるや痛いなどもそうですし、もちろん臭いもそうです。生活に支障が無いから、歯医者に行くのが億劫だからと放置していると、大きな病気になる可能性があります。言葉を発することができない体の小さな警報を是非とも見逃さないでください。

もっと早く来院してくれれば被害も少なく歯の寿命を延ばせたと思う場面に日常臨床でよく出会います。また「こんなに悪くなっていたなんて、もっと早く治療すればよかった」と患者さんがおっしゃることも多々あります。
今は些細な変化や小さな症状でしょうが、体が異常を教えてくれています。そのサインを見逃す、放置することは得には決してなりません。病気になりたい人はいないでしょうし、痛い思いも苦しい思いもしたい人はどこにもいらっしゃらないでしょう。
体の声に素直に応えてあげる事が大切だと思います。何といってもこの体で今後の人生を一緒に歩むのですから。