口臭の原因とメカニズム

臭いを匂いでマスキングすることが元来欧米の香水の役割だったともいわれているように、欧米人はワキガなど体臭が強い人が日本人より多いのです。
そのため欧米人は臭いには比較的寛容ですが、きれい好きの日本人は味覚だけでなく匂いにも敏感であるといわれており、相まって臭いにも敏感である統計もでています。
他人の口臭グラフ
口臭には他人は臭気を感じずとも自分は感じる自臭症と他人が臭気を感じる他臭症があります。
自臭症はメンタル要素を含むため、専門外来を受診されるといいでしょう。
他臭症には後で述べる生理的口臭、病的口臭、外因的口臭があります。
臭いの原因の約90%は口の中に原因があると言われていますが、歯科的な原因とは別に全身的な病気の中には特有の口臭を発するものがあります。
アレルギー素因、耳鼻科系疾患、糖尿病、肝機能障害、腎不全、慢性気管支炎、癌などです。
また飲酒習慣や肥満が関係するという報告もあります。その因果関係はまだ明らかにされていませんが、これらの過ぎたる部分は寿命と健康を蝕むだけでなくお口の臭いの面においてもどうやらマイナスになるようです。

他臭症の多くの原因は特定しやすく歯科的な対応も可能です。
口臭の原因を知り、ご自分の口臭のタイプを知ることでその対策が見えてきます。

口臭の正体はガス

口臭イラスト
口臭とは本人や周りの人が不快に感じる呼気(吐いた息)の臭いです。
口臭の原因はいくつかあり多くは口の中からですが、ニンニクや焼き肉、ビールなどを食べた後のブレスケア商品が出回っていることでお分かりのように、歯科以外でも口臭は消化器系や呼吸器系などが原因で起きることがあります。
歯科領域で起こる口臭の原因の8割が舌の表面からの臭いです。
その他には歯茎から出血と膿を出す歯周病や虫歯も口臭の原因になります。
膿の臭い以外は有機物を分解する細菌が発生するガスが口臭です。
代表的なガス(揮発性硫黄化合物)は次の3つです。
・メチルメルカプタン(玉ねぎが腐ったような生臭い臭い)
・硫化水素(卵が腐ったような臭い)
・ジメチルサルファイド(キャベツが腐ったような生ごみの臭い)
どのガスも腐ったような臭いと表現されるように不快なガス臭ですが、特にメチルメルカプタンが口臭の強さに関係しているといわれています。

どうして口臭がするの?

虫歯と細菌
どうして口臭ガスが口の中で発生するでしょうか。
それは食べかすや唾液、血液、剥がれた口の中の粘膜などに含まれている有機質(タンパク質)が口の中に生息する細菌によって分解されて発生するからです。
口の中が不潔であればあるほどこうした細菌の餌が豊富なため、口臭は強くなる傾向にあります。
この点からまずはお口の中(歯と歯茎、舌)を清潔に保つことが口臭防止に大切です。
しかし実際には餌を全くゼロにすることも、細菌をゼロにすることもできないため、他の要因も併せて考えていく必要があります。

口臭の種類によって対処法が変わってきます

自分の口臭グラフ
口臭にも4つの種類があります。
種類によって臭いの原因が異なるため対処法が変ってきますのでご自分の種類をまず知ることから始められるといいでしょう。
生理的口臭、病的口臭、外因的口臭、心因的口臭の4つです。

生理的口臭

誰にでも起こりうる口臭です。お口の中は500種類以上の菌がいて、その菌が出す代謝物により程度の差はありますが臭いが発生します。
特に起床時や空腹時、緊張した時などに抗菌作用のある唾液の量が減ると、細菌が増殖し臭い物質が出て口臭をより感じるようになります。
口呼吸や口をぱっくりと開けて寝ているのでなければ自然なことですからまったく気にする必要はありませんのでご安心ください。
食事をして唾液が分泌されたり、歯を磨くことでも臭いは減少します。
また女性の生理・妊娠時のホルモンバランスの変化によっても発生することがあります。
生理的口臭の特徴は上記発生時期以外ではあまり感じないこと、すなわち口臭が起こるのは一日の中で時々であることです。
体調やストレス、生活習慣によって口臭発生が時々起こるのも特徴です。

外因的口臭

ニンニク
お口の中に入れた食べ物、飲み物、し好品による口臭です。
例えばニンニク、ネギを食べた後や飲酒や喫煙後の口臭などです。
飲食などと関連していますので一時的な口臭です。

病的口臭

口の中や体の病気などで発生する口臭です。
口の中が原因であることが多いのですが、呼吸器、消化器、耳鼻咽喉領域、糖尿病などでも起こります。
口の中の病気は、歯周病、虫歯、プラーク(歯垢)、舌苔(舌に付着する白い細菌の塊)などです。
お口の中の病気に関連して起こる口臭でもあるため、歯磨き等では改善できず病気の治療が必要です。
口臭原因となっている病気を治療することで改善ができます。

虫歯と歯周病イラスト
虫歯は歯質が破壊されて歯に穴が空きます。歯周病は歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の間に深い溝ができます。
これらの深い溝や歯の穴の空間はどれだけ頑張って歯ブラシ等をしても綺麗にすることができないため、腐敗が起こり臭いが発生しやすくなります。

そのままにしておけば歯周病や虫歯がさらに進行してさらに臭いが悪化する悪循環です。悪化した臭いは強烈です。
また歯周病では歯茎と歯の間の溝から重症化すれば独特の臭う膿が出てきます。これも口臭原因となります。
どちらも初期の内はご自分ではその存在に気づけない病気ですので、症状がなくとも検診をお受けになられて治療をされることをお勧めいたします。
加齢による口臭と歯周病

また詰め物や被せ物の周囲が臭うケースもあります。
被せ物などに問題がある場合、その周囲に問題がある場合など、原因によって対処法は変わってきます。
銀歯が臭い原因

心因的口臭

自臭症に属し、実際には客観的に(他人からは)口臭は認められなくても、自分は臭っていると思い込む主観的な口臭です。
心の捉え方ですので口臭対策を行っても改善しません。
次の「本当に臭っているの?」で解決するかもしれません。

本当に臭っているの?

口臭
人と話していて何らかの相手のしぐさで自分に口臭があると思い込むケースや、先ほど述べた生理的口臭や外因的口臭でご自身の臭いを感じ、その臭いがいつもあると思い込んでしまったケースもあります。

意外に思われるでしょうが、自分の臭いを感じるということは実は普段は臭っていいないことの証拠なのです。
電車の中で周りの人間には強烈な匂いであってもご本人はすましておられる女性の強烈な香水、ご本人はその匂いに慣れっこになってそこまで強烈だと思っておられないようです。
またトイレの悪臭にもしばらくすると慣れて臭いをそう感じにくくなってきますね。

これでお分かりいただけるでしょうか。人は日常的な臭いには鈍感になり感じにくくなるものなのです。
臭いを感じるということは普段は臭っていないからこそ感じられるのです。
本当にいつも臭っていると実は本人は口臭に気づかないことが多いのです。
生理的口臭や外因的口臭は誰にでもあるもので不安になる必要は全くありません。

唾液が減ると臭いやすい

口臭がする人としない人がいる理由がもう一つあります。そのキーワードは乾燥と唾液です。
口臭を発生させる細菌を退治する抗菌力を持つのが唾液です。
唾液の分泌が少ない人は抗菌作用も少なく、口臭が発生しやすくなります。
また口で息をする人(口呼吸)は空気の出入りが大変多いため、唾液が蒸発して抗菌力が発揮できません。
口が乾燥していると感じたら要注意です。

よくしゃべる人に比較的口臭が少ないのはしゃべるたびに唾液が出るためで、反対に無口でいつも口を閉じている人は唾液分泌が少ない上に空気の出入りによる換気がなくガスが濃縮するため口臭が多い傾向にあります。緊張した時に唾液分泌が減少して口臭を感じたり、食後は口臭が気にならないのも唾液がキーポイントです。

しかし起床時に口臭を感じることは誰にでも起こりうることです。寝ている間は唾液の分泌が少ないために口臭を発生する細菌の抑制ができないためです。
口をぱっくりと開けて寝ているのでなければ自然なことですからまったく気にする必要はありませんのでご安心ください。
寝る前のお口のケアは虫歯や歯周病予防だけでなく口臭予防にもなります。

口臭原因の80%を占めるものとは

口臭と舌
口臭の原因が有機物を餌とする細菌のガスですので、お口の中を清潔にすることで細菌の餌を絶ち細菌の力を弱くすることが非常に有効です。
その細菌が最も多く生息しているのが舌の表面です。口臭の80%が舌から発生すると言われています。
どうして舌からの口臭発生がそんなに多いのか、舌の清掃の仕方などは下記の記事をご覧ください。

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