50代女性「右下の被せ物が何度も壊れる」インプラントで残った歯の負担を軽減し歯の寿命を伸ばした症例

2023.06.02

治療前

治療前画像

治療後

治療後画像

年齢と性別 50代・女性
ご相談内容 「他院で2年前に作った右下のセラミックブリッジや仮歯が何度も壊れ、その後の治療方針や治療の進め方に説明がなく不安になったため、他の歯科医院の意見も聞きたい」とセカンドオピニオンでご来院いただきました。
カウンセリング・診断結果 拝見すると、右下の歯3本(犬歯/3番、第2小臼歯/5番、第2大臼歯/7番)を土台とした5本分の橋渡しの被せ物「ブリッジ」の仮歯が入っていました。
白く強度がある「セラミックブリッジ」が壊れるのは、ブリッジ自体の問題ではなく、噛み合う上の歯が5本(犬歯、第1小臼歯/4番、第2小臼歯、第1大臼歯/6番、第2大臼歯)であるのに対して、下の歯はご自身の歯が3本しか残っていなく、噛む力を十分に支えきれない状態に原因があると判断しました。
部分的な視点ではなく、お口全体の視点で、噛み合わせと噛む力の分配をしないと同じ結果になるか、残った歯の寿命を短くしてしまう恐れがありました。
また右下だけでなく、上下と左右の噛み合わせのバランスが崩れており、奥歯を中心とした噛み合わせを変える必要がありました。右下の歯以外にもレントゲン写真を拝見すると、以前治療をした右上2本(犬歯、第2大臼歯/)と左下5本(犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯)の歯は、根の先端に膿が溜まっていたり、被せ物がすり減っていたりと再治療の必要がありました。
なかでも、左上の歯(第2小臼歯)は以前治療した被せ物の内側から虫歯が進行していたため、残すことは難しく抜歯が必要と判断しました。患者様は、「入れ歯は避けたいが、またブリッジが壊れるのも避けたい。不安なく食生活を送りたい」とご希望でした。
行ったご提案・治療内容 治療に入る前に治療計画を数プラン立て、それぞれのメリット・デメリット、注意点などをご説明しました。

右下に関して噛み合わせの問題を解消して長く使えるブリッジにするためには、支える歯の本数を下あごに増やすことで噛む力を分散させるのが根本的な解決策になります。
そのため、右下の歯がない部分に1~2本「インプラント」を埋入することをご提案しました。

左下の奥歯5本分を治療に加えると、時間と費用はかかりますが、上の歯と調和させながら右側とのバランスをとり、仮歯を使いながら患者さんと歯科医師双方が納得する噛み合わせを新たに作る治療をお勧めしました。

患者様は見た目と装着感から入れ歯の選択肢は最初からなく、ご自分の歯と同じように噛めて異物感がなく見た目もきれいな「セラミックブリッジ」と、それを長持ちさせるために「インプラント」を併用することをご希望されました。
ご相談の上、今回は費用面から右下は噛む力を分散する面で有利な奥歯にインプラントを1本入れることになりました。

また、左上の歯を抜いた後には、前後の歯を削って装着するブリッジではなく、歯を削らず噛む力が分散でき歯の負担を減らすため、こちらもインプラントの埋入をご希望されました。

手術をする前に、インプラントは体にとっては異物で感染には弱いため、術前には歯周病治療が一段落していることが絶対条件で、術前だけでなく術後も口の中のきれいに保つ「プラークコントロール」がしっかりできていることが必要とご説明し、ご了承いただきました。

2本のインプラント埋入手術は、事前にCTを見て噛み合わせや異物感がないか、外見の最も有利な位置と角度を決め、手術中にもCT撮影を行い計画通りに治療が進んでいるか、安全面での問題はないか確認しながら行いました。

インプラントと顎の骨が結合したことを確認し、歯ぐきを一部切り寄ってこないようにする「ヒーリングキャップ」をつける「2次手術」を挟み、術後3ヶ月で仮歯を装着し、咀嚼や外見、発音などの使用感のテストを行いました。
その後問題がなかったため正式な被せ物「セラミック人工歯」を装着しました。

右下奥歯にインプラントを1本入れることで、一番奥の歯は独立した歯に、そして手前2本の歯で支える3本分のブリッジと、以前の5本より小さいブリッジにすることで歯の負担とブリッジの壊れにくさを実現しました。
部分的な治療では、他の歯の噛み合わせに合わせなくてはなりませんが、左側の被せ物をやり替えたことで、左右のバランスがとれた噛み合わせにすることができました。

治療期間 すべての治療を含めて約2年
治療回数
費用目安 インプラント2本、人工の被せ物12本:1,701,250円
術後の経過・現在の様子 右下と左上にインプラントがきれいに入り、その他も新しい被せ物が入ったため、物をしっかり噛めるようになりました。
患者様からは「また壊れることや噛むことへの不安がなくなり、自由に何でも気にせず食事ができるようになって嬉しい」と大変ご満足いただけました。現在、インプラントを末永く機能させるために、6ヶ月ごとの定期検診と3ヶ月ごとのメンテナンスにご通院いただいています。治療後4年が経過していますが、壊れたり食生活の問題もなく、噛み合わせも正常に機能しています。
治療のリスクについて ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります
・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があります
・高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
・土台となる歯に負担がかかるため、将来的に歯が揺れたり、歯の根が割れたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、被せ物が破損する可能性があります
クリニックより セラミックの美しさなど表面的な部分だけに目が行きがちですが、それを支える歯の存在を大切にしていただきたいと思っています。
インプラントは代用歯ではありますが、噛むことだけでなく噛む力を分散する能力があるため他の歯を長持ちさせることに貢献します。
このありがたさを長く維持するために、検診とメンテナンスなくして成立しないと考えています。

治療前

治療前パノラマ
治療前上
治療前下

治療中

右上前歯根充後
右下インプラント埋入前位置確認
右下インプラント埋入後
左上インプラント埋入前位置確認
左上インプラント埋入後

治療後

治療後パノラマ
治療後上
治療後下

現在

現在パノラマ
現在正面
現在上
現在下

インプラントの詳細は下記をご覧ください。
インプラントとは
インプラントの種類
インプラント治療を受けられない人
骨が少なくてもインプラントを受ける方法はあるのか
インプラントと天然歯の違い
骨が痩せてしまった場合の将来的なリスク