60代女性「食いしばりや歯ぎしりで歯が摩耗」歯を削る量を最小限に抑えつつ摩耗に適した金合金の詰め物で治療した症例

2023.08.16

治療前

治療前

 

治療後

治療後

 

治療8年後

治療後

 

 

年齢と性別 60代・女性
ご相談内容 噛みしめや食いしばり癖があり、起床時にあご周囲の筋肉に疲労感があるため歯ぎしりもしているかもしれないと訴えておられました。
カウンセリング・診断結果 お口を拝見すると、奥歯特に(左上7番)の歯を守る働きのあるエナメル質が摩耗によりなくなり、弱い歯質である象牙質が表面に露出している状態でした。
治療前の写真の白っぽい周りの歯質と比べて中央部が黄色みがかって見える部分が露出してしまった象牙質です。硬いエナメル質を失って内部の軟かい象牙質のままではすり減りが加速してしまいます。奥歯は噛むことが主な仕事ですからそれでは困るのです。エナメル質と同等の材料で軟かく弱い象牙質を覆ってあげる必要があります。
行ったご提案・治療内容 食いしばりや歯ぎしりによる弊害をよく目にします。その主な症状は歯が痛い、しみる、あごが痛い、あごを動かすと音がする、歯の異常なすり減りとそれに付随する歯の移動や噛み合わせの変化(狂い)、虫歯や歯周病にかかりやすくなるなどです。ふと気づくと上下の歯を接触させているとのことでした。無意識に脳があごに命令して行う行為のため、歯科的に食いしばりを中止することは難しく、行為を行っていることに気づいたら歯同士の接触を解除する、また気づいたらやめる、この繰り返しで習慣化していくしか方法はありません。
しかし就寝時は気づくことができないことと、日中より強い力で食いしばる傾向にあるため、マウスピースを装着してお休みなられることをお勧めしました。また歯の寿命面からは摩耗に抵抗する必要があります。歯のすり減った部分をすり減らないような硬い材質に置き換えると一見いいように思われるでしょうが、それでは他の歯との硬さの調和がとれず口全体の変化にその歯が追随していかなくなります。軟かすぎるのでは現状と変わりません。歯と同程度の硬さとすり減りによるお口全体の調和が必要です。さらにその人工歯は虫歯や歯周病にかかりにくく、長期間の咀嚼に耐える耐久性が必要です。今回のケースではこうした材質の硬さ、強度と耐久性、精密加工が可能で虫歯等にかかりにくくできる特徴がある金合金をお勧めしました。上の奥歯で人目につかない場所であることもありました。治療初日に金合金の詰め物に合わせて歯を整形し型取りと仮歯をお入れし、次の来院日に金合金の詰め物をお入れして治療は終了しました。
治療期間
治療回数 2回
費用目安 102,960円(仮歯を含む)
術後の経過・現在の様子 治療後の不快な症状や使用感の問題はみられませんでした。治療後7年が経過していますが異常な歯のすり減りは見られず、その当時の状態を維持されています。定期歯科健診とメンテナンスで今も経過を観察させていただいています。
治療のリスクについて ・治療中や治療後に痛みを伴う場合があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
クリニックより 今回は虫歯はなく過度の摩耗を防ぐための詰め物ですので歯を削る量を最小限に抑えることができ、薄くても丈夫な金合金をお勧めしました。適度な硬さがある上に、歯と調和して摩耗するためお口全体の噛み合わせを維持できるメリットがあります。近年セラミックやジルコニアなど白い詰め物が喜ばれる傾向にありますが、このような噛みしめや食いしばり、歯ぎしりなどの過度の噛む力に追随できるのは金合金を置いて他にはないと考えています。日常的な歯同士の接触や食いしばりや歯ぎしりなどの癖は歯を極度に摩耗させます。摩耗から歯を守るために歯同士が接触していれば離すことを繰り返し、耐摩耗性の高い材質に入れ替えることやマウスピースの装着が望まれます。
治療から8年が経過していますが、歯の著しい摩耗を止められています。

治療の詳細は下記をご覧ください。
無意識の噛みしめや食いしばり・歯ぎしりと対応
金合金(PGA)など詰め物・被せ物の種類や特徴