80代女性「入れ歯が合わないのでしっかりとした入れ歯に作り直したい」耐久性がある入れ歯の長期症例

2023.10.07

治療前1

治療前1U治療前L

治療後1

治療後1UPD治療後1F

治療前2
治療前2U治療前2L
治療前2F

治療後2

治療後2U治療後2F

 

 

年齢と性別 80代・女性
ご相談内容 現在使っている保険の入れ歯が合わないのでしっかりとした入れ歯に作り直したいとのご希望がありました。(治療前1写真)
カウンセリング・診断結果 拝見すると上顎は前歯しか残っていないのに対して、下顎はほぼご自身の歯が残っている状態でした。入れ歯が合わないと感じておられる原因を探りますと、入れ歯の安定が悪く動くため外れやすく入れ歯の下に食べ物が入り、噛むと入れ歯がさらに動いてあごの歯茎に当たって痛みが出ている可能性が高いと判断しました。
しかし下顎は骨の中に植わってびくともしないご自身の歯が、あごの粘膜という軟かく沈み込む(動く)部分の乗せた入れ歯と噛むたびに当たるのですから、上の入れ歯が不安定になることはある程度は仕方ない状態です。さらに上の残っている歯が前歯だけのため、形態的に安定した維持装置(歯に引っ掛けて入れ歯を安定させる役割のある針金等)を作ることが困難であることもマイナスに働きます。
これらを簡単に言うと、難しい症例なのです。入れ歯は症例により非常に簡単で経過もいいケースとそれとは真逆の誰がどうしても非常に難しいケースまで非常に多岐にわたります。
行ったご提案・治療内容 お困りの根本原因である入れ歯の安定を向上させるには、入れ歯とインプラントを併用する方法がありますが、ご高齢で外科治療をお望みではありませんでした。
現状で多少の安定を得るには精度の良い入れ歯を作製することと、可能な範囲で入れ歯を大きくして噛む力を分散することで安定を得て、また痛みを可能な限り減少させる、そして噛み合わせに注意を払いながら入れ歯の人工歯の摩耗を少なくするため一部金属を用いる治療を設計しました。入れ歯の噛み合わせ部分がプラスチックの場合は、経時的に擦り減り噛み合わせが変わり不具合が出たり、入れ歯が長持ちしないためです。メリット・デメリット、費用や予想される治療期間などと共に治療計画のご説明をしたところ、ご希望になられたので治療に着手しました。最初に残った歯の歯周病治療などの基本的な治療を行い、改善が見られたので上顎の入れ歯の歯型をお取りし、噛み合わせの記録、完成前の入れ歯を実際にお口に合わせるテストを経て完成した入れ歯をお入れしました。(治療後1写真)その後順調な経過をたどっておられましたが、入れ歯治療から9年後に上の前歯(右上1番、左上1・2番)にぐらつきが出て残念ながら歯を失うことになりました。人は良く噛める場所で無意識に噛む傾向があるため、この方の場合残っている前歯でよく噛まれていたのが原因でした。
最初にインプラントを併用した入れ歯をご提案したのはこの事態を懸念していたからでした。前歯を守る働きのある奥歯を失っておられるからです。
入れ歯自体には問題がないため、その後失った前歯を現状の入れ歯に継ぎ足す修理を行い現在に至っています。(治療後2の写真)
治療期間 治療1は約1ヶ月、治療2は約2ヵ月
治療回数
費用目安 治療1は558,600円
治療2は保険の一部負担金
術後の経過・現在の様子 今までは何度も入れ歯を作り替えてこられたそうですが、入れ歯をお入れして15年以上が経過した今もまだまだ現役で機能してくれています。
毎日の食生活を陰で支え続けているご様子に私たちも喜んでいます。
今後とも検診とメンテナンスで維持して参りたいと考えています。
治療のリスクについて ・着脱式のため、食後の清掃が必要です・最初のうちは異物感があり、慣れるまで時間がかかる場合があります
・当初は入れ歯の裏側の粘膜に傷ができる場合があります
クリニックより 最初に入れ歯をお入れしてから15年が経過しています。途中に歯を失って修理を余儀なくされましたが、現在も入れ歯は現役で噛むことに貢献できています。これはひとえに患者様のお手入れと管理によるものが大きく、また金属を使った丈夫な入れ歯のためたわみや変形が少ないためあごの骨が痩せることを最小限に抑えられていることも理由の一つです。
今後も経過を患者様と一緒に追いかけて参りたいと考えています。

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